最長6年まで育児や介護休業ができるようにしたり、年功重視型か成果重視型か、評価基準を選べる人事システムを作ったりと、ワークライフ・バランス支援に力を入れはじめたサイボウズ。その目的とは?
従業員の平均年齢、約31歳。若さあふれるソフトベンダー、サイボウズは2007年8月、設立10周年を迎えた。同社がWebグループウェアをはじめ、企業向けソフトを手掛けているのは、Biz.IDの読者なら既知だろう。サイボウズでは近年、「人間尊重」をスローガンに掲げ、従業員が生涯を通じてイキイキと働ける環境整備に力を入れているという。こうした福利厚生に取り組む目的はなんだろうか。
サイボウズでの従業員評価基準は、数年前までは、IT業界などの多くのベンチャー企業のように成果重視型だった。実力がある人たちが努力し、切磋琢磨し合ってきたのだ。サイボウズが短期間で国内グループウェアのリーディングカンパニーへと成長した背景には、こういった社風の影響があるのかもしれない。
しかし、成果重視の職場環境では、家庭の事情などで仕事をセーブしたい人は辞めるしか道はない。勢いに乗るサイボウズにとっても、こうした理由で有能な従業員を失うのは大きな損失だった。
また、会社の使命は単純に売り上げを伸ばすことだけではない。「従業員が自分の能力を生かしながら、安心して働ける環境整備に努力することは、企業の良心の表れであり責任だ」という思いも経営陣にあった。安心して働ける職場作りが、従業員の満足度や定着率アップ、そして業績アップへとつながっていくのは周知の通りだ。
同社カスタマー本部マーケティングコミュニケーション部、企画宣伝/広報ディレクターの村松康孝(むらまつ・やすたか)さんは、「そこで当社でも、何をすればいいだろうと、以前から模索していました。そして2006年から本格的にいろいろな試みを行っています。その1つが育児や介護に関する『ワークライフ・バランス支援』です」
ワークライフ・バランス支援制度ができてからは、妊娠や出産、育児休業を経て仕事に復帰する予定の女性が増え、育児休業を取得した男性もいるなど、好評を得ているという。一方、介護はというと、今のところ従業員の中には、差し迫った事情を抱える人は見当たらないようだ。
というのも、サイボウズの従業員の平均年齢は約31歳。毎年20%の従業員が入れ替わるといわれる業界の中で、社員定着率が高いことでも知られているサイボウズでは、急速に平均年齢が上昇することは考えにくい。また2003年からは、新卒の採用も意欲的に行っている。
そんな事情もあり、従業員の平均年齢と介護世代といわれる50歳代には大きな開きがある。「介護に関しては、だからこそ今から取り組みを始め、時間をかけて実用的な制度へと熟成させていこうと考えています」(村松さん)
多くの従業員たちは、まだ介護を自分に訪れる問題としてリアルには捉えていない。その中で、会社が制度化に力を入れることは、介護の情報収集に役立ち、自分のライフプランを考えるきっかけにもなるだろう。