「オーストラリアでは成人式に何を渡すか知っているか? それは鍵なんだ」。留学先の主人が成人式を迎えた筆者にそう告げた。「昔は21歳にならないと鍵を持てなかった。その意味が分かるか」――。
1967年にオーストラリアに留学した時、筆者は20歳だった。オーストラリアで21歳になった時、銀行員だった下宿先の家族が、盛大に成人式をしてくれた。筆者のために豪華な夕食を作って、強めのオーストラリアのビールを飲んだ。日本では両親が祝ってくれたから、筆者は2回成人式を受けたことになる。
その時に、主人のトムが筆者に話してくれたのは鍵だった。
トム タケオ、オーストラリアでは成人式に何を渡すか知っているか? それは鍵なんだ。家の玄関の鍵を渡すのさ。もちろん、最近では、家の鍵は誰も持っているが、昔は21歳にならないと鍵を持てなかった。その意味が分かるか。
タケオ いいえ。分かりません。
トム それは鍵を持てば、いつ帰宅するかも自由、つまり自己責任だということ。自分に責任を持つことさ。
確かに小さな子供に鍵を持たせるのは問題があるが、両親が仕事をしているのも普通になった現代社会では、鍵をかなり小さな子供にも持たせなければならない。そこで色々と危険が出てくる。
我が家の3人の息子たちには鍵を渡していたが、その鍵を家に置き忘れて、学校に出かけることが問題だった。
学校が終わり、家に帰ってきて初めて鍵がないことに気が付くようで、そういうときに限って、彼らのお腹の具合が悪い。急いで帰ってきた息子たちは、玄関の前で鍵がないことに気付く。そうなると、足をからませ、身を悶えさせながら、友人の家に“緊急避難”することになる。
何度か、このような緊急事態があったので、筆者は合鍵を作り、マンションの近くにナンバー錠で括りつけた。そして、家族共通の暗証番号を設定したのである。
ちなみに、アイデアマラソン研究所と樋口家では、
を持っている。この2番を適用したごついナンバー錠で、鍵を括りつけておいた。そして、息子たちの緊急対応に使ったわけだ。年に2回ほどは使われていたようである。
最近では、ふたの付いたナンバー錠の中に玄関の鍵を入れている。これはすでに、社会に出た息子たちがいつ家に帰ってきても、家に入れる仕組みだ。
その次に避けるトラブルが、キーホルダーを落とすことだ。キーホルダーを落とす理由は、ほかのものをポケットから取り出す時に、ポトリと落してしまうことだと推測している。酒が加わり姿勢が崩れると、ますます落ちる率が高くなる。これは出張の飛行機や新幹線、通勤電車の中でも同じである。筆者は30年間、キーホルダーをズボンのベルト通しに括りつけることにしてきた。
括るのには以前からキーホルダーに付けたナスカンを使う。鍵を持ち出す時には、必ずキーホルダーの端のナスカンをズボンのベルト通しに引っかけるのだ。現在ではコニ・ビオラのナスカン「No.31 NG-11」を使っている。
このキーホルダーは、ナスカンでぶら下げているおかげで、ズボンのポケットに入ってはいるものの、ポケットの底には着かず浮いている状態になる。つまり、ポケットの底を貫くことも防げるのだ。もちろん世界中を旅しても、一度も失くすことはなかった。
朝、家を出発する時間になると、鍵をどこに置いたか分からなくなる。これは鍵を一定の場所に置くことである程度解決するのだが、ちょっとしたことで、妙なところに置いたり、鍵の上に置いた本で隠れてしまったりして、出発時間になって「鍵はどこだ、鍵はどこだ」と探しまわる経験を誰しもがしたはずだ。
ユナイテッド航空の機内誌に載っていた、失せもの発見装置「Locator Model S1667」を入手した(米Sharper Image Design製、※同社のサイトは閉鎖しており、もしかしたら今後の入手は難しいかもしれない)。Locator Model S1667は本体と端末がセットになっており、端末をキーホルダーに付けておけば、見失ったときに本体のボタンを押すことで、その端末がピーピーと音を鳴らして教えてくれる。
端末にはアクティブ無線タグが仕込まれており、本体から発信する電波を受信すると音を鳴らす仕組みである。端末にボタン電池が必要である点と端末のサイズが大きいことから、はっきり言ってあまり使えない。
しかし、すでにパッシブ(電源不要)の無線タグを使用する時代に来ていることから、家の中のキーホルダー以外のものであっても、本1冊、書類1枚に至るまで発見が可能になる時代はそこまで来ている。まあ、その頃には非接触ICカードの普及などで、キーレス社会になっているかもしれないが……。
鍵が増えるとなくしやすい。なら鍵を減らせばいいのでは?
1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら。アイデアマラソン研究所はこちら。
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