第3回 同行
「すみません。道に迷ったみたいで、ちょっと教えてほしいのですが」
これは、個人宅訪問のときのちょっとしたテクニックです。主人公・吉田和人のモデルになった吉見範一(よしみ・のりかず)氏が本当に道に迷ったときに売れたので、その後病みつきになって何回もやったのだそうです。そのうち上達しすぎてウソがばれてしまい、それからはやっていないとのこと。だから、「きっかけをうまく作るべし」ぐらいに留めて参考にしてください。ウソは必ずばれますよ。
第3回 同行
「ええ」。手に持ったクリアファイルから地図を見せた。地図には赤いしるしがついている。その横には、「マイラインは×××」と大きく書かれた、パンフレットの表紙を切り取ったものが入っている。タレントの写真がよく目立つ。
「この赤いしるしは何?」
地図で目を引き、さらにタレントの写真に注意をひきつける。細かい技ですが、かなり有効です。要は、お客様との話題づくりとお客様から質問をしてもらえるツールが大事ということです。
第3回 同行
「あら。営業さん?」
「そうなんです。いつもお世話になってます。こちらにも営業って、たくさん来ます?」
私は最初、「営業さん?」のセリフのあとを「ご説明に回っているだけです」と書いて、吉見氏にダメ出しをもらいました。説明ではなく営業に回っているという指摘でした。先ほども書きましたが、細かいことでも“ウソ”は必ずばれるからです。
ウソをつかずに相手を引きこんでいくテクニックは、本文の続きを読んでみてください。うまく相手の同意や共感を引き出していることが分かるはずです。
第3回 同行
「簡単だよ。まず、いきなり売り込まないこと。売り込んだら絶対にダメ」
「なるほど」
「それから、求められるまでは、絶対に商品の説明をしない。そのための小道具なんだよ」
個人宅でも企業でも、名刺交換もそこそこにいきなり商品説明をする人がいます。それではうるさがられるだけ。いきなり「お得です」というのも愚の骨頂。必ず変な商品じゃないのかと疑われます。一度疑われると修復はとても難しいのです。
とにかく売り込むことを優先しない。お客様との信頼関係(それは共感によって得られます)をまず構築し、その後お客様から質問してもらえるようにしましょう。引用部分の後に起こったマザーの失敗も参考になりますよ。
第3回 同行
「あはは。探偵とまではいかないけど、営業に大切なのは人間観察だと思うよ」
和人がボールペンという小道具を使って、気難しそうなお客様と信頼関係を築いた例を書きました。使えるものは何でも使っていいのです。では何を使えるのか、そこに気づくには、お客様を観察するゆとりが必要です。相手に興味を持つことが営業の基本。吉見氏も口を酸っぱくして言います。最初に交換する名刺はそうした手段に使える情報の宝庫です。いろいろと考えてみましょう。
第3回 同行
営業にとって大事なのは、運よく大きな契約を取ってくることではなく、小さな成果を積み重ねることというのが和人の持論である
営業に限らず、すべてのビジネスに通じる心構えです。大きな案件を取ってきた人、ビジネスで成功している友達などを見ていると焦りの気持ちが生まれます。しかし、彼らも小さな成果を積み重ねて自信をつけ、ノウハウを身につけてきたのです。まず小さな目標を立てて、着実に実績を上げて行きましょう。
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