名刺の裏、見てますか? 「話を聞いてもらっても売れない」から脱却する名刺交換

「話を聞いてもらっても売れない」――。そんな人は、名刺交換の機会を見直してみてはいかがだろうか。

» 2008年10月10日 23時50分 公開
[鷹木創,ITmedia]
吉見範一さん。身振り手振りが楽しいセミナーだった。テキストでは伝わらない部分もあるので、興味のある方はぜひ参加してみてほしい

 「ひと言目に何と言っていいのか分からない」――。何かと営業活動が必要なビジネスパーソンだが、いざ営業しようとなっても初対面の人に対しては何を言っていいのか分からない、という人も多いのではないだろうか。

 初めての飛び込み先でも相手の話を引き出す方法を、連載「奇跡の無名人たち」の主人公・吉田和人のモデルにもなった営業コンサルタントの吉見範一(よしみ・のりかず)さんのセミナーで聞いた。

 ビジネスのお付き合い、必ず最初にあるのが名刺交換。この名刺交換の機会を大事にせよ――というのが吉見さんのアドバイスだ。


  1. あなたに関心があります
  2. 腕はダラーンと下げる
  3. 名刺は素早く渡さない
  4. 受け取った名刺は見続けない
  5. 名刺の裏を確認してますか?
  6. 相手のことだけを聞く

あなたに関心があります

 「直接話ができれば売れる確率が上がりやすいBtoCと異なり、BtoBでは話だけは聞いてもらえることが多い」という。つまり、話を聞いてもらったとしても実際には売れないケースが多いのである。

 普通、話を聞いてもらっても売れない場合、「説明の時間が足りなかった」「説明の仕方が悪かった」などと説明することに原因を求めがち。特に営業の慣れていない新人や他部署から異動してきた人はそう思って、いかに説明するかを考えるが、吉見さんは「それは違う」という。

 BtoBでのポイントは、営業マンが相手の担当者に対して「あなたに関心があります」と伝えること。というのも、営業を受ける側は営業マンが何人も来ている。値段やサービスもだいたい似ているケースが多い。そんな時に、自社製品の説明だけして「買ってくれ」と伝えても購入に結びつくのはまれだ。そこで、「あなたに関心がある」という態度を示して、担当者のニーズを聞き出すことこそが大事なのである。

 そこで相手と接触する最初の機会である名刺交換の重要性が問われる。

腕はダラーンと下げる

 まず担当者と会う部屋の前で、心理状態を整えよう。こちらが緊張していては向こうの担当者も緊張してしまう。「緊張はうつる」のだ。何はともあれリラックスすること。腕はダラーンと体の脇に沿って伸ばす。肩をグッとあげて、ダラりと伸ばしてみよう。ちょっとだらしない感じもするが、「落ち着いたやつだな」と思われるという。

 無表情な顔も怖い。ニコっとするべし。歯を見せて笑う必要はないが、口角をあげ、目じりをさげるだけでいい。特に男性は担当者に警戒心を抱かせてはだめだ。「リラックスしているな、と思わせることが大事」なのである。

右ぐらいダラーンとしていい。特に男性は要注意だ

名刺は素早く渡さない

 続いては渡す時だ。よくありがちなのは素早く渡してしまうこと。名刺交換は儀式のようなもので、なるべく手短に済ませたいと思っている人は多い。しかし渡すときに慌てると「落ち着きがない」と思われてしまう。

 そこで3段階で考える。まず、名刺入れの上に重ねるように自分の名刺をセットする。この際、自分が読めるように持つ。いざ渡す場面では、ゆっくりと90度回転させ、間を持ちながらさらに90度回転させて、相手に渡す。

 よくあるのは先方も同時に名刺を出すシーン。しかし、あまり悩んでもしようがない。「先に出してもいいし、後から取ってもいい。両手で取ってもいいし、片手で取ってもいい」という。

 ただ、取った後がポイントだ。片手で受け取ってもいいが、受け取った場所で1回動きを止めてそこから両手に持ち直して、引き寄せる。何だか表彰状のもらい方のようだが、「いきなり引き寄せると寂しい感じがする。ゆっくり引き寄せて相手のことを受け止めますよというサインを送る」というわけだ。

受け取った名刺は見続けない

 実は名刺の受け取り方そのものよりも、相手が自分の名刺をどのように見ているかの方が重要だ。相手の名前を確認するぐらいはした方がいいが、できればすぐに相手の視線を見よう。

 「相手が何を見ているか確認する。その時に笑顔で見ていること。もしかしたらその瞬間にこちらを見るかもしれない。その時笑顔なら、あなたの話を聞きますよ、という信号を送れる」

 視線の先を見ていれば、相手の行動も予測できるはずだ。逆に、こちらがもらった名刺だけを見ていたら、相手が何に興味を持っているのか分からない。分からなければ話を続けることも難しくなるのである。

 ちなみに相手の名前が読みにくい場合はチャンスだ。「どんなやつなんだろう、何を売り込みに来ているのか?」という気持ちの相手に、「お名前、なんとお読みするのですか?」「この読み方でいいんですか?」と話しかけるだけで、「あなたに関心がある」と伝えられるのだという。

名刺の裏を確認してますか?

 実は、吉見さんもできていなかったことがある。それは名刺の裏側を確認することだ。

 全国の支店一覧や宣伝文句、企業理念などが書いてあるケースが多く、もらう側はとしてはあまり興味を抱かないことが多い。「たいてい、ふーんで終わってしまう」。だが、書いてる側は一生懸命エネルギーを注いで書いている。「これ何ですか? と裏側に触れてくれた人には話したくなるはず」

相手のことだけを聞く

 名刺交換後、いきなり売り込みの話をしてしまうと相手がなえてしまう。営業先の担当者や企業の長所を探して、ほめることも重要だ。例えば、「社員教育が行き届いてますね。応対がよかったです」などと、あなたの会社に興味があるということを伝えること。「会社のことでも服装のことでも何でもいい。売り込む前に1つでも2つでも聞きだすことで、相手が安心する」

 ただし相手が美人の場合、男性は注意。「本当に美人の場合は、美人といってはいけない。美人は美人だということを知っている。いろんな男から言い寄られているからだ」。そこで、洋服やセンスをほめる。特に洋服を選んだ行動をほめるといい。「その服よく似合ってますね。どこで買ったんですか」などだ。

 どうしてもほめるところが見つからない場合は「やさしそうな方でよかった、緊張が解けました」などという。ほめるというより、あなたがいてくれてよかったと「存在を認める」コメントが必要だという。

自分のしゃべってる時間と相手がしゃべってる時間を意識するよう、“トーク時計”をイメージするといい

 「人間は、一方的に売り込まれたくない。向こうの話よりも、こっちの状況を分かってくれと思うもの。売り込まれるより、不満を言いたいのだ」と吉見さん。ということは、「あなたに必要なものなら、売りますし、不要なものなら売りません。だからあなたの悩みを聞かせてください」という態度が理解されれば、「こっちの状況を分かってくれるんだ、じゃあ売ってくれ」となる――かもしれない。そのきっかけに、名刺交換が効く、というわけである。

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