長年繁盛していたラーメン屋。ところが、ここ2カ月前からバッタリと客足が落ちています。今まで通りの味とメニューで、周辺に新しいラーメン屋ができたわけではありません。さて、客足が落ちた原因は何でしょうか。
六本木名物の夜桜ラーメンは、長年商売繁盛でした。しかしここ2カ月前からバッタリと客足が落ちています。味を変えたわけではなく、今まで通りの味とメニューを守り通しています。桜庭店長は周辺を調べたのですが、新しいラーメン屋ができたわけではありません。
さて、客足が落ちた原因を想像してください。(複数回答可)
競争相手は同業他社だけではありません。そば屋、牛丼屋、ファミレスなどの飲食店も、深夜にお腹を満たすという目的は達成できます。また深夜営業の飲み屋が減るなどの外部環境が変わると、顧客の行動様式が変わります。
(1)の深夜営業の飲み屋が減ったことによる影響はあるかもしれません。周辺の飲み屋を調べれば分かるでしょう。(2)の不景気ではバッタリと客足が落ちるほどの変化にはならないでしょう。(3)のそば屋ができた、(4)の悪いウワサの可能性はあるでしょう。正答例は(1)(3)(4)です。
同業他社だけを競合と見ていたのでは、長期間にわたる競争優位を確立することはできません。戦略研究の第一人者として世界的に著名なハーバード大学教授のM.E.ポーターは、競争要因を5つに整理しました。
1つめは「新規参入の脅威」です。異業種参入、ベンチャー企業の参入、外資系の参入などへの対抗策が必要です。2つめは、「代替製品・代替サービスの脅威」です。ブラウン管テレビから薄型テレビなど、代替製品・代替サービスはさまざまな業界に起きています。
3つめは「買手(顧客)の交渉力」です。供給者が増加し、モノ余りの市場となると、買い手が力を持つようになります。例えば量販店は、メーカーに対して大量仕入の代償として、仕入価格の値下げを要求してきます。4つめは「供給者の支配力」です。強力なブランド力、特許などによる寡占供給力などを身につけることで、供給者の支配力を高めることができます。そして5つめは、日ごろから注視している「既存競合どうしの敵対関係」です。
岡山市生まれ、大学教授、経営コンサルタント。1982年東京工業大学経営工学科大学院修士課程終了。富士写真フイルムを経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業のコンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授。専門分野は、MOT(技術経営)、プロジェクトマネジメント、経営戦略、戦略的思考、論理思考、図解思考。
主な著書に、『経営戦略のトリセツ』『よくわかるプロジェクトマネジメント』『図解する思考法』(日本実業出版社)、『戦略構想力が身につく入門テキスト』『論理的な考え方が面白いほど身につく本』『論理的な文章の書き方が面白いほど身につく本』(中経出版)、『戦略思考トレーニング』『論理的な考え方が身につく本』『論理的な話し方が身につく本』(PHP研究所)、『スピード仕事術』『戦略経営に生かす兵法入門』(東洋経済新報社)、『脳を鍛えるやさしいパズル』(成美出版)など、約60冊。
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