書類の一部をモザイク状に暗号化。印刷された“紙”を読み込めば、紙から内容を復号できる。そんな技術を富士通が参考出展している。
企業の情報漏洩の40%は紙の書類からだと言われる。その“紙”を暗号化する技術を、富士通がCEATECで参考出展している。
文書の一部を部分暗号化して印刷すると、暗号化された部分にモザイクがかかった形で紙に印刷できる。この紙をスキャナで読み取れば、印刷された内容から復号化が行える。
「これまでも画像の一部をモザイク状に暗号化する技術はあったが、それを印刷して、印刷された紙から復号化できるのは初めて」だと富士通の説明員。
情報の配布や回覧などは、まだまだ紙で行われることが多い。また機密の情報であっても印刷して持ち歩くことが、情報漏洩につながる。印刷された内容の一部分――例えば個人情報の部分だけを暗号化しておき、普段の利用は紙ベースだが、普段必要のない情報は暗号化しておくといった使い方が考えられるという。
1枚の紙の中で複数の部分を暗号化し、その領域によって閲覧できる権限を変えることも可能。○○さんの履歴書、名前は誰でも見られるが、趣味・特技は同じチームの人だけが、学歴・職歴は部長だけが見ることができる――1枚の紙に対してこんなことができるようになる。
すべてを電子データで扱えば機密は守られるが、印刷して持ち歩きたい、配布したいという実際のニーズに沿った形で現実的な暗号化ソリューションとしていくという。
技術的な特徴は、一部が汚れても復号可能だという点だ。デジタル情報として暗号化しているというよりも、「細かなブロックに区切って位置を変えている」(説明員)というアナログ的なアルゴリズムのため、汚れなどがあっても「複号後のデータが少し汚れる」だけで済むという。ちなみに、暗号化の強度は「AESレベル」。
今後の開発の目標は2つある。1つは暗号化した紙をFAXで送受信できるようにするというもの。暗号を維持するには現在300dpiの解像度が必要だが、FAXは100×200dpi程度。低解像度でも使えるよう調整が必要だという。
2つ目は、ケータイのカメラなどを使ったより簡易な復号化手段だ。現状は、紙をスキャナで読み取ってPCの専用ソフトで取り込み、ネットワーク上の権限データベースにアクセスして復号を行っている。これを例えばデジタルカメラで撮影したデータから復号できれば利用は容易になる。究極的には、「ケータイのカメラで暗号化された紙を写すと、暗号が復号されて見られれば最高」だ。ゆがみ、解像度のほか、CPU処理性能などもネックになっているという。
この技術は今年度中に製品化の予定だ。
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