自信をもって進むには? 狂言師に聞いた客観視する方法「早起きは三文の得」実行委員が行く(1/2 ページ)

「ハーハッハッ」が「笑い」の表現。じゃあ「へーへッへッ」は何の表現?――といってもこれ、なぞなぞでなく狂言の話だ。現在29歳。狂言の道を進む茂山逸平さんが道に迷った時取った行動は、「今の仕事を続けるべき?」と悩むビジネスパーソンの道しるべにもなりそうだ。

» 2008年09月30日 08時30分 公開
[豊島美幸,ITmedia]

 ハーッハッハッ……。独特の節回しをした笑い声が、天井の吹き抜けいっぱいに響きわたる。すると、足早に歩く出勤途中のビジネスパーソンたちが思わず足を止め、驚いた顔で声の主を見た。

 9月29日、朝8時。朝EXPOのイベント会場の1つ、丸の内オアゾのエントランスでのことだ。朝EXPOとは、早朝時間の充実を図ろうと、朝EXPO in Marunouchi実行委員会が春と秋の年2回、東京・丸の内界隈で1週間にわたって開催しているイベントのこと。春のリポートを覚えている読者もいるだろう。


(左)「大笑い」と「小笑い」を披露する茂山さん。(右)赤い和傘の真下でトークショーは行われた

 「能楽堂と違って音がはね返ってこないから、発声の音量加減が分かりませんねえ」。声の主は、萌黄(もえぎ)色の紋付袴姿で笑った直後、そう感想をもらした。朗々たる声を披露したのは、茂山逸平(しげやまいっぺい)さん。欧州でも名の知れた若き狂言師である。オアゾでは「大きな笑いで元気に」と副題を付けた、彼のトークショーが開催されていたのだ。

日本の芸は引き算、西洋の芸は足し算

 狂言では、同じ節回しでも「ハ」で始まれば笑いを、「へ」で始まれば泣きを表すと決まっている。茂山さんによると、狂言とは、究極まで余計な要素をそぎ落とし、最後に残ったものをデフォルメした、いわば引き算の芸だからだ。狂言の舞台セットも同じである。大掛かりな道具は一切ない。「見る人には背景の共通認識があるはずなので、その想像力に委ねる」のだ。

 能楽はもちろん、落語に至っては「究極の(引き算の)芸やと思う」と評する茂山さん。こうした日本の芸において引き算が通用するのは、日本人は日本人としての共通意識があるからだ、と考えている。

 「日本人は、自分がええと思ったことは他人もええと思てるはず。逆にアカン思たらアカンと思てるはず、という感覚があるんですよ。自分も他人も一緒っていう。ところが西洋にはそれがない。『私はいいと思ってるけどあなたがそう思っているとは限らない』という前提から入るんで、すべて説明してくるんです。演劇でも、時にうっとおしいくらい説明を足してくる。だから西洋の芸は足し算の芸ですね」

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ