必要以上に考えすぎ、誰かに心配してほしい、過去に負った深い傷に反応してしまう――これまでうつのさまざまなパターンを見てきましたが、今回で最後です。自分に自信が持てなくて落ち込みが止まらない。仕事、家庭、自分――課題が一気に押し寄せるとパニックに陥ってしまう。どうしたらそんな自分を卒業できるでしょうか?
なぜうつや不安な状態に陥るのか――。この「なぜ」を把握することが、つらい状態から抜け出す早道になるかもしれません。「なぜ」のパターンは5つに分かれます。
これまで「心配しすぎ・考えすぎ」「かまってほしいという無意識の目的」、そして「深い傷を負った過去への条件反射」についてお話ししてきた「うつ」を解く話も、これで最後です。残る2パターンを見ていきましょう。
まず4つ目が「混乱して精神症状が出る」パターンです。
自分のコントロールを越えるような出来事や課題が立て続けに起こると混乱しますね。家族との関係、仕事に関して、自分の将来に関して、経済的なものに関してなど、次元やレベルの違うさまざまな課題が一気に来た時に、そもそも自分がどうしたいのか、自分に何ができるのかが分からなくなると、不安やうつになることがあります。
例えば、A事業部で研究していて、B事業部に異動されそうになった時、外部のC会社から引き抜きの話がきたとします。こんな時、どう考えるでしょうか。
「Bの仕事はあまり得意じゃないし好きじゃないし、他社から呼ばれるのはうれしいけれど給料は3分の1になるし、女房からは『娘は私学に行かせるからお金がかかる』って言われているし、BがダメならD事業部でもいいと言われて、Dはそんなに嫌ではないけれど、他社からのオファーには興味があるし、上司からは『頼むよ』って言われてるけど、部下は『○○さんは、こっちの方が向いていると思いますよ』と言うし。……ん? だんだんどうしたらいいのか分からなくなってきた……」
と、なる場合があります。こういう時はどうしたらいいでしょう。
まず要素を整理してみましょう。自分の仕事、家族の期待、上司の期待、部下の期待、他社からの期待――というように、1度項目ごとに分類して整理しただけで、意外と混乱状態が収まることがあります。
混乱によるうつや不安には、今、目の前にあることを書き出してみてください。前述の例でいえば、B事業部に異動する、C社から誘われている、自分のやりたい仕事、自分の嫌いな仕事、子供が私立に行く、妻からの期待、親のことなど、一通り1項目ずつ、メモ程度でいいので紙に書き出してみます。そして、それを分類します。
これは人からの期待、これは自分のやりたいこと、これは家計に関して――というように、書き出して整理すると、自分の状態を客観的に見ることができるようになります。
こういう状況でもこれ絶対やりたいとか、この仕事はそれほど嫌いではないので、今の状況だったら経済的に安定した道を選ぼうとか、この子がこの年齢になるまではがんばろう、といったことが見えてくるはずです。
この方法は、実はスケジュール管理と同じですね。
スケジュールの場合は、立て込んでいる案件をリストアップし、重要度の高い順に並べて、それをスケジュールの中に埋め込んでいきますね。すると、ものすごく忙しいと思っていたけれど、実はどうでもいい予定がいっぱいあったとか、これとこれさえキチンと押さえておけば、後は力を抜いてもできる、などということが分かります。
そして、そう思った瞬間、気持ちがラクになるんです。この場合も、整理すること、優先順位を組むこと、具体的にスケジュールに落とし込むことが大事です。
また、この症状はほかの症状に比べると一時的なものです。ですから、何カ月か放っておいたら、いつの間にかラクになっていることもあります。
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