いつも飲み会を断る職場仲間、どう付き合う?「アドラー心理学」的処世術(1/3 ページ)

あなたの周りには、飲みに誘うと毎回断り、ランチにはたまに付き合う仕事仲間はいますか? 彼らは職場での人間関係を拒否しているのでしょうか? その真意が分かれば接し方も見えてきます。

» 2008年08月06日 12時59分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 これまで、幸せをもたらす人間関係逆境を生かす方法、心の葛藤のメカニズムについて、アドラー心理学の視点から見てきました。最終回となる今回は、「対人関係論」「現象学」について解説していきます。

編集部注:「アドラー心理学」とは?

「個人心理学(Individual Psychology)」の通称。ユダヤ系オーストリア人の心理学者アルフレッド・アドラー(1870〜1937)と、その後継者たちによる心理学の「思想」「理論」「技法」を指す。


アドラー心理学の全体図

 アドラー心理学の理論には、「対人関係論」という考え方もあります。ある人の症状には、その症状を向ける相手がいるという考え方です。

 「対人関係論」の反対が「精神内界論」です。「精神内界論」では、症状はその人の中で完結していると考えますが、対人関係論では、症状は向ける相手役がいると考えます。

怒り狂ってる最中でも、上司からの電話はにこやかに対応できるのはなぜ?

 例えば子供が何か悪いことをすると、怒り狂って自分で怒りを抑えられないという人がいます。腹が立って腹が立って、この怒りは自分では止められない。でも、怒っている時に電話がかかってきて、その相手が自分の会社の上司やお世話になっている人だったとすると、にこやかに応対できるものです。

 本当に自分で抑えられないほど怒っているんだったら、その相手にも同じように怒っていなくてはおかしいですね。でも、電話の相手には普通に応対できて、電話を切って、また子供を見ると怒り出す。これは、自分の内側で怒っているのではなくて、その子供に対して怒りを出しているということ。つまり、相手役がいるということです。

ランチだけたまに付き合う同僚、会社の人間関係を拒否している?

 こんな話もあります。

 ある村から10キロくらい離れている山に仙人が住んでいました。その仙人は「私は1人で暮らしている。食べ物は全部自分で採ってきて、村には行かないし、村人にも会わない。1人で暮らしているから、もちろん話をする相手なんていない」と思っています。

 ある時、その村が洪水で流れてしまいました。山奥にいる仙人にはなんの被害もなかったのですが、村は流れてしまったので、元の場所から40キロくらい離れた場所に新しく村を作りました。一方、仙人は被害を受けなかったのだから、そのまま同じ場所で暮らせばいいのですが、彼もまた、新しい村から10キロくらい離れたところに移動しました。

 これはつまり、村人とは会ってもいないし話してもいないけれど、自分にとってちょうどいい距離がある、ということを示す話です。本当に1人の人はいなくて、たぶんちょうどいい距離があるだけなのです。

 よく社内で、「あいつ、本当にウチのチームにいて楽しいのかな。飲みに誘ってもこないし、ランチを誘ったらたまに来るくらいで」と思われている人がいますね。でも、実は本人にとってはそれくらいがちょうどいい距離なんですね。これより近づいてしまうと、いい関係が崩れる場合があります。

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