「こいつ、今日も牛丼食べてるな」――“ディストピアなオフィス”を考えるBiz.ID Weekly Top10

1枚で入退室や利用したオフィス機器が分かったり、社内のどこに移動して誰と話したかを記録したり――首からさげたたった1枚のカードで、色々なことができる世の中になったようだ。だが、そうした便利さの果てにあるのはもしかして……。

» 2008年07月15日 13時19分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 先週のBiz.IDアクセスランキングトップは、ブラウザから利用できるマインドマップツール6つを紹介した記事。マインドマップネタは、Biz.IDの記事の中でも毎回注目度が高い。高機能な市販ソフトも多いが、「マインドマップってよく聞くけど、結局使ってみたことはないなあ」という人は、まずは無料サービスから試してみるのもよいかもしれない。

 3位には裏返らないカードホルダー「ナピタ」の記事がランクイン。「カードホルダーなんてカードが入ればそれでいいじゃん。どれも同じだよ」と思っている人にはピンとこないかもしれないが、最近のカードホルダーや、その中に入れるIDカードは、かなり特徴的なものが増えてきているようだ。ナピタと同じく多機能なライオン事務器のネックストラップや、入退室やオフィス機器の利用管理を1枚で実現するカードなどなど。

 最近の記事の中で特に筆者が気になったのは、「社内の誰と誰の仲がいいか」を視覚化するカード「ビジネス顕微鏡」。こいつはスゴイと読みながら興奮したのだが、よくよく考えてみたらなんだかちょっとこわいような気もする。

 上司に「あいつはいつもA子さんとばっかり話してるな……あの2人は同じ部署でも同じプロジェクトチームでもないのに……怪しい」とか思われたり、「私が席に近付くとこいつはすぐに姿を消すな……けしからん!」などとバレてしまったりするわけだ。さらに、このビジネス顕微鏡は「細かな動きを観察することで、その人が相談しているのか、それとも相談を受けているのかといったことも分かる」という。

 実装されるかどうかはまったくの別問題として、技術的には音声を拾ったり小型Webカメラを付けたりすることも可能なのではないだろうか。移動場所をトレースできる範囲をオフィス外にまで広げて、「勤務中は常に電源(?)をオンにしておくように」なんてお達しが出たりして。そうするとこういうことが起こる。

 「さてさて今日のこいつの仕事は……企画書作成か。午後の会議までに間に合うのかねえ。あっ、またタイプミスした。進歩しないなあ。ん? 席を立ったぞ。なんだよもう昼飯か。A子さんの席に向かって――うん、今日もフラれたな。ふらふら一人でビルを出て……おいおいまた牛丼屋かよ! 好きだなこいつ。なんだ、今日は味噌汁とタマゴも付けるのか」

 ――書いていてなんだか妙に楽しそうだと思えてしまったが、それはもちろん管理する側の話。記事中にも話が出てきたが、管理のしやすさとプライバシーの問題はどうしてもトレードオフの関係になってしまう――のかもしれない。SF好きな平社員である筆者は、いわゆる「ディストピア」な世の中でだけは働きたくないなあ……などとぼんやり考えるばかりであった。

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