スキマ時間活用には“タイマー”なのだ シゴトハッカーズ

新装オープンの新連載「シゴトハッカーズ」。これまでの「シゴトハック研究所」の研究成果を元に、仕事の生産性をアップするための“ツール”や“グッズ”を紹介していきます。

» 2008年07月10日 21時40分 公開
[大橋悦夫、佐々木正悟,ITmedia]
    マンガ:ふじたきりん(過去のマンガ)

Biz.ID 今回のテーマは「スキマ時間の有効利用」です。早速ですが、いいツールはありますか?

大橋悦夫 タイマーを使うのがいいと思います。例えば、いま12時でオフィスにいて、14時から日比谷で打ち合わせがあるとします。日比谷までの移動時間はドアツードアで48分。すると、13:12には出発しないといけません。そうしたら、タイマーで72分をセットして、仕事を開始します。こうすることで、残り時間と残り作業とを見比べながら、無駄なく時間を使えます。大きすぎる仕事は後回しにするか、取りかかりの部分だけにしておく、という判断ができるわけです。

佐々木正悟 人間の時間感覚はアテにならないんです。何かをしている時間と、例えば待ち時間などでは、時間感覚が変化してしまう。1つのことに集中できれば、2つのことを同時に意識するより、時間を活用できるのです。例えば、カップラーメンを待つ3分と、メールを書く3分って、たぶん違う長さだと意識されていると思うんです。だから、カップラーメンを待つ3分で、メールが1本書けると考えつかないのではないかと。

Biz.ID なるほど、カップラーメンを待つのは長い3分ですが、メール1本書く3分はあっという間。

佐々木 だから、「3分しかないよ!」と言われて、メールを書き出す人はまずいない

大橋 僕の場合は、宅配ピザを頼んだときにも同じようなことを実感しています。宅配ピザはたいてい「30分以内にお届けします」をうたい文句にしていますから、30分で終わるかどうかの作業を用意しておいて、注文します。それと同時に25分(30分ではないのがミソ)をセットして、作業に取りかかります(残り時間を確認するため)。その間はその作業に没頭できます。おなかが空いているときなら、効果がアップするでしょう。

Biz.ID けっこうタイマーを頻繁に見ながら、残り時間を確認するんでしょうか? あと40秒だ! とか思いながら

大橋 最初は10〜20分おきですが、だんだん頻度が上がっていきます。終盤は3〜5分おきになりますね。ちなみに、愛用しているタイマーは、残り10分と残り5分のタイミングで予鈴が鳴るようになっています。

Biz.ID なるほど、じゃあ予鈴は大事ですね。

大橋 大事です。逆に、仮眠を取る場合は予鈴の鳴らないタイマーを使うようにしています。

Biz.ID 佐々木さんはどういう観点でタイマー選びをしているんですか?

佐々木 ボタンの押しやすさですね。あと音が鮮明であること。あとは軽いことかな。持ち運びのために。

Biz.ID デスクワーク以外でも使うんですか?

佐々木 プレゼンで使います。だから、誤作動を防止するロックがあることも大事でした。電車内で鳴ったら恥ずかしいですからね

Biz.ID PCソフトやWebツールよりも、アナログのタイマーのほうがいいんでしょうか?

佐々木 即席で使うことと、持ち運びを考えると、そうですね。

大橋 すぐにセットできるのでいいですね。これは人によるとは思いますが、 PCのタイマーはローンチャーなどに入れていても、どうももっさり感が否めない。計算も電卓をたたいたほうが早いのに似ています(Google電卓は使いません)。

佐々木 それから、タイマーを休憩中に使うといいましたが、休憩中に、考え事、掃除をするんです。そこへPCは持ち込めない。

大橋 あー、それは僕もやります。PCを離れてウロウロするときにタイマーを携えていきます。一方、Webタイマーのいいところは、カフェなどでアナログタイマーを使えない場所でも使えること。

佐々木 Webタイマーは、PC作業画面と同じところでカウントが取れることですかね。

ディスプレイのすぐ脇に置くことで、視線を少しずらすだけでタイマーの数字が目に入ってくる

タイマー活用術(佐々木正悟)

 ここまでの話から明らかになった、タイマーのメリットは3つ挙げられます。

  • 時間のことを頭から完全に追い出して作業に没頭できる
  • リソースを「どれだけ使ったか」ではなく「どれだけ残っているか」で計ることができる
  • ゴールを明確にすることで、取りかかりやすくなる

 1番目の「時間のことを頭から追い出せる」というメリットは、目覚まし時計をセットする人は誰もが知っているメリットです。「今から何時までは一切を忘れて寝て良いよ」というわけです。

 見逃せないのは2番目のメリットです。時間という資源(リソース)を、今どれだけ使っているかではなく、これからどれくらい使えるかという視点に変えます。そうすれば、仮に少々無駄な時間の使い方をしても、過去をくよくよ思い悩むのではなく、即座に「これから少し急ごう!」とポジティブな気持ちに切り替えられるでしょう。

 3番目も大事です。仮に作業を完遂できずとも、これから「少なくとも5分は取りかかろう!」と思うことで、簡単に作業に入れます。5分始めてみれば気持ちも変わって、作業がはかどっているかもしれません。そうすれば、さらに仕事を続けようという気持ちになれるから、不思議です。

 筆者自身は以上のメリットを生かして、英文を読むときは必ずタイマーを使います。

 英語の論文や英書を読む際には、まず第1のメリットが大きくものをいいます。英語を読むのは、日本語よりもずっと時間がかかるので、膨大に時間を使って、ほとんどムダだったということになるのが、残念なのです。それを恐れて、英文を回避しがちになります。この回避癖は、時間を切ることで、解消されるわけです。

 第2のメリットは、英文を読むペースメーカーとして活躍します。最初はしばらくだらだら読んでいても、「残り何分しかない」ということが分かれば、精神的にピッチを上げることができます。全体を同じペースで読む必要はないのですし、ある程度読み進めれば内容が理解しやすくなりますから、このようなやり方で後半にペースを上げることは合理的でしょう。

 英文を読むという意味では、第3のメリットは第1のメリットと、よく似ています。たくさんの英文を読むには時間がかかるので、ついついやらずに済ませようと思いがちですが、「とりあえず5分だけ」なら読む気にもなります。仮に5分しか読まずとも、全く読まないのとは違います。これを10日続ければ、1時間近く読んだことになるのです。

 以上は、英文を読む以外のことについても、同じことがいえるはずです。仕事を進めるに当たって、「没頭すること」「使える時間を配分すること」「区切りの時間だけでも取りかかること」はいずれも有効なシゴトハックです。タイマーを使うことでこれらが同時に実現するのですから、ぜひ試してみてください。

 →タイマーレビュー:タイマー選びの3つのポイント【チュートリアル編】

筆者:大橋悦夫

大橋
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1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタルハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』、近著に『成功ハックス』がある。

筆者:佐々木正悟

佐々木
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心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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