“音の情報漏洩”を防ぐヤマハ・サウンドマスキングISOT 2008

情報漏えいの元として、意外に忘れられがちな“音漏れ”。隣のスペースの会話をつい聞いてしまった――ということが起きないよう、マスク音を流すシステムの改良が続いている。

» 2008年07月09日 13時52分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 「会話も個人情報保護法で守られています」。ちょっとセンセーショナルな表現で、音声情報の流出について喚起を促していたのはヤマハだ。同社はISOT 2008併設のオフィスセキュリティEXPOにて、“音の情報漏えい”を防ぐためのシステム「ヤマハサウンドマスキングシステム」の研究を紹介している。

 企業は書類や映像、PCデータについては情報漏えいの対策をしてきたが、音声情報は無意識のうちに流出しやすい。オープンスペースの会議室などで、隣の会話が聞こえてしまった……という状況が続いている。

 ヤマハが研究中のサウンドマスキングとは、スピーカーからノイズとなる音を流すことで隣から漏れてくる会話を聞こえなくする仕組みだ。これまでのシステムでは空調音のようなホワイトノイズを流したり、音楽を流すなどの個人レベルでの対策が主流だった。しかし、隣の会話を聞こえなくするにはマスクする音の音量を上げなくてはならないのが問題。ヤマハでは人間の声に似たノイズ音を合成する技術により、音量を下げても同じ効果を出せるという。

 「空調音のようなノイズ音を使うのに比べて、音量を12デシベル下げても同様の効果が得られる」

 一般的に人の話し声が60デシベル、部屋の壁を越えると30デシベル程度に減少するという。従来は、漏れてくる音よりも大きなマスク音を必要としたが、ヤマハのシステムでは「漏れてくる音と同じ音量で大丈夫」だという。

 このマスク音は、使われる環境に応じて作成したほうが効果が高い。「医療施設なら、そこの医者の声を録音して作れば、より小さい音で効果が出る」。ただし、その場の音に合わせてマスク音を動的に作ることは想定しておらず、事前に生成する形を取る。

 医療施設などだけでなく企業のオフィスなどでの需要もありそうだ。通常、会議室間では天井裏を伝わって音が漏れる場合が多い。「オフィスの天井裏に仕切りを作る工事を行うと100万円以上の大がかりなものにある」とヤマハ。ヤマハのシステムも同社の音源DSPなどを使うシステム的には複雑なものだが、「仕切りの工事に比べれば安く提供できる」と話す。

 なおヘッドホン業界では、周囲のノイズに対して逆位相の音を流すことでノイズを打ち消す、ノイズキャンセリングヘッドホンが流行だ。部屋の場合はこうした仕組みは難しいのだろうか? 「ヘッドホンのように、耳というポイントが決まっているなら可能だが、部屋全体で(逆位相音によるノイズキャンセルは)難しい」(ヤマハ)

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