Webに重ねてコメント表示、気づきを共有――コモンズ・マーカー

どんなWebページにもコメントを付けて、ユーザーの間で共有できる国産ソーシャルアノテーションサービスが登場。Webページに重なる形でコメントが表示され、コメントが指し示す、ページ内の文言への自動スクロールも可能だ。

» 2008年07月04日 11時44分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 コメント投稿機能を持たないWebページにコメントしておきたいときに、どうしているだろうか。引用して自分のブログに書く? はてなブックマークやdel.icio.usのようなソーシャルブックマークに登録する。どちらにしても、そのページに寄せられたコメントを見るには、ページを移動しなくてはならない。

 7月4日に一般公開した「コモンズ・マーカー」は、どんなWebページにもコメントできるようにする、ソーシャル・アノテーション(吹き出し)サービスだ。マーカーペンで色を付けるように、ページ内のテキストにマークを付けて、その部分へのコメントを書き込める。

Biz.IDの記事にコメントを付けてみた。Webページに重ね合わさるようにコメントが付き、マークした文字には色が付く。文字をクリックすれば、コメントがその横に移動してくる。コメントをクリックすれば、文字の部分へ画面がスクロールする。これらはブラウザの拡張機能や常駐アプリケーションではなく、JavaScriptで動いている

 コメント投稿&閲覧用のブックマークレットが用意され、好きなWebページでブックマークレットを実行する。コメントしたい文言を選択するとコメント投稿ウインドウが開く。その後は、コメントとタグを記入して「マークする」を押すだけでいい。

 ユーザーがコメントした内容はWebページに重ねて表示され、ほかのユーザーがコメントした内容も同時に閲覧できる。画面をスクロールすると、コメントの一覧も一緒にスクロールしてくる。また、コメント欄の「<」マークをクリックすると、そのコメントが付けられたページ内の文言がスクロールして現れるようになっている。

Web上の朱入れ編集ツールを作りたい……が発端

 ページを移動することなく、そのページに重なるようにコメントを付けられる機能は「アノテーション」と呼ばれ、複数のユーザーが1つのページにさまざまなコメントを付けるコモンズ・マーカーのようなサービスを「ソーシャル・アノテーション」と言う。海外では「Diigo」などが有名だが、国産のサービスはまだ珍しい。

 コモンズ・マーカーを開発したコモンズ・メディアの星暁雄氏は、「(Diigoのような)高機能なアノテーションツールとは違うもの。シンプルな道具にして、たくさんの人たちが知的活動に使えるようにしたい」と話す。

 星氏はもともと大手IT系出版社で編集長を務めていた。編集者の業務につきものの原稿への朱入れ。これをWeb上で直接行いたいというのが、コモンズ・マーカーの発端だったという。「元編集者がWebサービスを作ったっていいじゃないか。コモンズ・マーカーの原点は、Web上での朱入れと、本来の意味でのサクサクWebログ(ブログ)だ」

 仕組み上、コモンズ・マーカーではコメントの記入を促すようになっている。面白いと思ったページをソーシャルブックマークに保存するのとは違い、「脊髄反射ではないコメントがたまるといいと思っている」と星氏。Webの引用とそれに対する自分のコメント――ブログの語義的な行為が簡単に行える。その意味では、コモンズ・マーカーのユーザーページは“ミニブログ”ともいえる。

JavaScriptでユーザーインタフェースを作成

 コモンズ・マーカーの仕組みは、ブックマークレットでJavaScriptをロードして、元となるWebページに重ねる形でユーザーインタフェースを表示するというものだ。そのため、コメントを重ね合わせているにも関わらず、URL自体は元のWebページのままだ。

 どこを引用したかはシンプルに文字列を見ている。そのため画像に対するコメントは現状できないし、また内容が動的に変化するWebページの場合、コメントした元の引用文がなくなってしまう場合もある。しかしシンプルな仕組みが故に、企業内のイントラネットなどでも、技術的にはそのまま利用可能だ。

 「イントラネットでの利用は歓迎だ。詳細は未定だが、イントラネット版の準備を進めている」(星氏)。現状は、コメントした内容はユーザー全員に公開となっており、グループなど閲覧権限の細かな設定は行えない。イントラネット内で使うには、こうした権限の設定や、システム自体の切り分けが必要になる。

 APIも公開したいと星氏。投稿や読み出しのAPIが整備されれば、元となるWebページ自体に手を入れることなく、“ソーシャル化”が容易に実現する。

 「すでに存在しているWebを、もっとソーシャルにしたい」。星氏は想いをこう話した。

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