第3回 負けるが勝ち、あえて白旗を振れ目的を達成する説得法(1/2 ページ)

 前回は具体的な説得法を解説しました。その通りに相手を説得したつもりでも、「無理です」と断られる場合があります。なぜでしょう?

» 2008年07月03日 12時30分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 自分のやりたいことを認めてもらうため、相手のニーズを満たした上で説得したとします。ところが「それは無理」と言われる場合もあります。

やりたいことを言い合え――相手の「それは無理です」をなくす

 大抵の人が、「自分のやりたいことを伝えること」と「やりたいことをやらせてもらうこと」を一緒だと思っています。同様に「やってもらいたいことを伝えること」と、「やってもらいたいことをやらせること」は一緒だと思っています。

 一緒だと思うから、口にしない。「言ったら、相手に悪いから」とか「上司にこれを言っても、やらせてくれないかもしれない。そしたらショックだから(言わない)」と思うんですね。でも、もちろん一緒ではありません。

 やらせてくれるかどうかは別にして、「こうしたいんです」と、お互いに要望をテーブルの上に出すことはいいことなのです。そういう環境を、会社の中に築きたいですね。部下も、上司も、会社も、「こういうことをやりたい」と、みんながやりたいと思うことを、率直にテーブルに出せるようにしたいですね。

 聞いたからやらせてあげられるとも、言ったからできるとも限らないという前提の上で意見を出し合って、「この部分はみんなの考えが一致しているから、認めていいんじゃない?」という共有ゾーンを見つけてやっていけば、誰も我慢することなく、やりたいことができるわけです。

 ところが、「こんなことを言うと、上司の意見に反するから言わないでおこう」とか、「これを言うと、部下はやりたくないと言うかもしれないから言わないでおこう」といって、我慢している人が多いようです。

 でも考えてみてください。相手がお客さんだったら言えますね。

 お客さんが「これをこの金額でやってほしい」というのに対し、「全部やるとすると、大体これくらいの金額になります。Aは高額で、Bは比較的安いですよ」と、条件を一通り提示します。その上で「じゃあ、この金額でこれだけお願いしたい」「分かりました、これとこれにしましょう」というような交渉になります。

 相手がお客さんだったら、テーブルの上に全部提示して交渉する。それと同じことなのに、上司と部下の間、会社の中では、なかなかできません。

 会社の風土の問題である場合もあるでしょうが、人や部署によってモチベーションがバラバラであることが、思いを伝えにくくしていることもあるようです。経理と営業のケースを見てみましょう。

 経理の人のモチベーションは、営業の人にはよく分からない。営業の人は「自分たちが外でどれだけ頑張ってるんだ。経理のヤツらは計算しているだけじゃないか」と思いながら、「これ、なんとかしてくれない?」と難しい注文をする。経理としては「それは無理です」となりますね。

 このように、相手のモチベーションが分からないのに交渉しようとしても、すれ違うだけです。相手のモチベーションを上げるには、相手のためのコミュニケーションが必要なのです。

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