大量に単語カードを作る作業は結構な手間だし、単語を大量に収集していくのも大変。そういう方には、辞書とサイコロを用いてランダムな3語をその場でピックアップする方法を紹介しよう。
辞書とサイコロ5つ(100円ショップで買えば200円くらい)を用意する。5個いっぺんに振る。目をつぶって一列にならべる。左から「5」「1」「2」「2」「6」ならば、辞書の521ページ、右上から数えて26番目の言葉をピックアップする。特殊すぎる単語に当たった場合はその次の単語を採用する。辞書がなければ、新聞や雑誌を用いて3単語を拾ってもいい。
なお、普通の四角いサイコロは1〜6しか出ない。そのため「7」「8」「9」「0」を含むページや単語はピックアップされないが数回程度の発想作業ならば、その偏りは問題にならない。もちろん、サイコロの運用を工夫するか10面体サイコロを用意すれば「7」「8」「9」「0」を含む数を出せるが、精度の高い乱数を発生させるには、この方法を100回以上繰り返す場合だけである。だが、100回もやる人はページをめくるのが面倒なのだ。サイコロよりもまずは単語カード作ってしまったほうが効率的だろう。
カプラーに柄頭(つかがしら)の飾りか……。じゃあ、コンセントのプラグ部分にホースヘッドのような芸術的な要素を入れてみる。それから「駅伝」か……。じゃあ、駅伝のようにつなぐ、という視点で中継する何かをつけるかな。
プラグが特殊な形だと受けるコンセント側にもホースヘッドのようなものをうまく受け止めるような形状対応が必要だから、専用の中継ソケットを作ろう。家庭でもオフィスでもコンセントは割とそっけない。いつも目に見えるコンセントにしゃれた遊びを加えたい人や、コンセントの口が怖い顔になっていて幼児が手を触れないようにする、という商品アイデアもあるかな。
これは、短時間ではできない方法であり、「今すぐ素振りする」というこの連載のコンセプトから外れる。しかし参考として載せておきたいことがある。
大きな技術部門を抱えた企業の場合は、他社の特許取得動向を知財部などがサーベイしている。しかしベンチャー企業などでは、必要な時に調べたり、専門家に調査依頼をするだけだったりする。企業のベテランの知財担当者に聞くと、他社の特許をざーっと見続けていくと、アイデアが浮かんでくる、という。既存の優れた事例を見ていくだけでもかなりの刺激を得られ、発想が広がる、という意味では共通点が多い。
特許を簡易的に調べるのは、意外に簡単だ。ネットとPCを用意して、前回紹介した特許電子図書館の初心者向け簡易検索(特許・実用新案)から、検索できる。自分のライバルとなる技術群を片っ端から見ていって、面白い開発コンセプトを発想してほしい。
以上、各種のインプットによる発想促進の方法を紹介した。インプットメソッドについては各種オンラインサービスを使う方法を中心に紹介した。一方、多くの先達や古典が言及しているように、バーチャル空間だけでなく、美術館や大きなおもちゃ屋さん、町中の人間観察に出かけることも良質なインプットの大量獲得には重要である。
人は知らず知らずのうちに、オフィスや机に束縛されがちだが「だめだ! ナンモ思いつかない!」という時は、ポケットにメモだけねじ込んで現場に飛び出そう。予想を超えるインプットがあるはずだ――。
次回からは、アイデア出しの「テーマを再定義する」ことで大胆に発想の転換を促す方法を紹介する。
事業のアイデア創造支援や技術開発をサポートする事業化コーディネーター。仙台のベンチャー企業デュナミスが事務局を務める創造性育成ツール開発プロジェクトでは、プロジェクトリーダーを務めた。このプロジェクトで誕生した新商品が「ブレスター」である。みやぎものづくり大賞(2007)で優秀賞を受賞。社会人院生として、東北大の博士課程にも在籍、新事業創造マネジメントや創造工学を研究。Webサイトは「石井力重の活動報告」。
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