「もはや“電子化した紙”ではない」Acrobat 9が目指す、PDFの可能性(1/2 ページ)

アドビシステムズは、約1年半ぶりにAcrobatの新バージョンを発表した。これまでは、ファイルの最終フォーマットとして利用されることが多かったPDFファイル。Acrobat 9の発表で、アドビが新たに目指す方向性とは――。

» 2008年06月03日 12時00分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 アドビ システムズは6月3日、Acrobatシリーズの最新版「Acrobat 9」を発表した。複数の画像やビデオファイルを、表紙やヘッダを付けて1ファイルにまとめる「PDFポートフォリオ」機能を搭載し、ドキュメントの閲覧性が向上。また、Flashビデオをネイティブサポートし、視覚効果が高まった。以前からあった「共有レビュー機能」に加え、PDFフォームによるデータ収集やリアルタイムコラボレーションなど、チームでの共同作業にも適しているという。


 Biz.IDでは、米Adobe Systemsの山本晶子氏(シニアプロダクトマーケティングマネージャー)、アドビ システムズの米澤香氏(ビジネスソリューション部部長)、小圷義之氏(マーケティング部フィールドマーケティングマネージャー)、鈴木依子氏(マーケティング部フィールドマーケティングスペシャリスト)に話を聞いた。

 これまでは、ファイルの最終フォーマットとして使われることが多かったPDFファイル。Acrobat9の発表で、アドビが新たに目指す方向性とは――。

左から、鈴木氏、小圷(こあくつ)氏、山本氏、米澤氏

「メールに5つも6つもファイルが添付されていたら、何から読めばいいのか」

Biz.ID Acrobat 9では、ポートフォリオ機能やリアルタイムコラボレーションなどの機能が追加されました。これらの新機能が盛り込まれた背景について教えてください。

山本 今回9を作るに当たって、ビジネスユーザーが抱えている問題というのをいろいろな形でリサーチしました。その中で見えてきたことは、「いかに相手に読んでもらえるドキュメントを作るか」という点に、みなさん苦心しているということでした。

 ビジネス文書の電子化が一般的になって、ほとんど情報がはんらんしているような状態です。データはたくさん持っているのに、その見せ方が分からないんですね。手持ちのデータを整理して、「分かりやすく相手に見せたい」「自分の色を付けて見せたい」というユーザーからのニーズが多かったことが、今回の新機能につながりました。例えば、いくら重要だからといって、メールに5つも6つもファイルが添付されていたら何から見ればいいのか分かりませんよね。(今回の新機能である)ポートフォリオで見せ方を工夫すれば、そのあたりの問題はクリアできますから。

Biz.ID 新機能のポートフォリオは、タイトルの作りこみやヘッダといった「追記情報」が重要な要素になるのでしょうか? これまでのAcrobatにも、複数ファイルを1つにまとめるパッケージ機能はありましたが。

山本晶子シニアプロダクトマーケティングマネージャー

山本 そうですね。あるものを利用してちょっと手を加えただけで、自分のキャラクターが出せたり、会社のブランドが出せたり、魅力的なものになります。FLVのネイティブサポートも、そういった「色を付けた見せ方」の1つです。あくまでもターゲットは一般ビジネスユーザーですし、シンプルに付加価値を提供できることが重要であって、クリエイティブプロだけが使えればいいというものではありません。

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