先送りで仕事の効率を上げるには?【解決編】シゴトハック研究所

ついついやってしまう先送りではなく、意識して行う先送りなら仕事の効率も上げられます。先送りすることによるメリットを意識して、活用するにはどうしたらいいでしょう。

» 2008年05月30日 14時13分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

今回の課題:先送りで仕事の効率を上げるには?

コツ:先送りで“利ざや”を稼ぐ


 前回は、仕事のスピードアップをする方法についてご紹介しましたが、今回取り上げる先送り対策もまた、これまでの連載の中でたびたび登場するテーマです。

記事名 内容
「先送り繰り返し症候群」根絶法 毎日「昨日よりもほんのわずかでも仕事が進んだ状態」を作る
どうしても先送りせざるを得ない時のうまい先送りの方法は? 先送りを許した上で“敵”の裏をかく

 そもそも先送りとは何でしょうか。いうまでもなく、今やるべき仕事を未来に延期することです。つまり、後回しです。いうなれば、時間の後払いをしていることになります。

 金銭の取引には、都度払い(現金払い)と後払いの2種類がありますが、時間の使い方についても都度払い(その場ですぐにやる)と後払い(先送り)があるわけです。

 お金の場合は、金額によってはカード払いや分割払いなどの「後払い」を選択することで手元に現金を残しておく(=急な出費に備える)ことができます。同様に、時間についても必要に応じて「後払い」を選択することで、時間をうまく使うことができるのです。金額にかかわらず何でもかんでも現金払いをするのは現実的ではありませんが、このことは時間についても当てはまります。すべての作業を「時間の都度払い」で、すなわちすぐにその場で取りかかっていたのでは、効率は上がらないでしょう。

 ではどうすればいいでしょうか。

時間の使い方に意図的に濃淡をつけて“利ざや”を稼ぐ

 お金について、カード払いなどの「後払い」を選ぶのは、未来の収入の先取りといえます。同様に、時間の「後払い」もまた未来の時間の先取りというということになります。

 とはいえ、お金の場合は金利というコストが発生するのに対して、時間の場合は後に回すことによって「寝かす」ことができ、一気に使う時よりも有利になります。例えば、時間の使い方について次の2つの方法を比較してみましょう。

  1. 報告書を書くのに1時間ぶっ通しで取り組む
  2. 1日20分ずつ3日間、報告書を少しずつ書き進める

 まとめて1時間使うのでも、1日20分ずつ3日に分けて使うのでも、トータルすれば同じ1時間です。でも、一気に使わずに毎日少しずつ使うことで、次のようなメリットが得られます。

  • 1時間かかる仕事よりも20分で離れられる仕事の方がとっつきやすい
  • 時間を空けることによって新たな視点や発想が得られる(ことがある)

 「今日中に報告書を仕上げないといけないんだよな〜」と思いつつ、それを終えるには1時間かかるということが分かっている場合、次のような誘惑に屈しやすくなります。

  • 昼ごはんを食べたばかりで頭がぼーっとしているので、もう少し時間がたってからにしよう
  • とりあえず先にメールチェックしておこう
  • 今日はもう夜遅いので明日の朝、スッキリした頭で取りかかろう

 つまり、1時間という山を前にしてひるんでしまうのです。そこで、この山を20分ごとに3つの小さな山に分けることによって“迫力”を減らすわけです。

 1時間かかる仕事と20分で終わる仕事の2つが目の前にあれば、20分で終わる仕事の方が断然とっつきやすいでしょう。これは、時間の分割払いをすることによって心理的な負担を下げていることになります。

 さらに、1回ごとに日を改めていますから、それによって「寝かす」効果が得られます。時間を経てあらためて向き合ってみることで「もう少しこうした方がいい」、あるいは「書いている時には気づかなかったミスに気づいた」といった、その仕事のクオリティーを引き上げるためのヒントが浮かび上がってきます。

 何もないところから1時間で一気に最後まで仕上げるやり方では、上記のようなことに気づく機会を逸してしまいますから、トータルでは同じ1時間にもかかわらず出てくる成果の価値には差が出てしまうのです。

“逆ざや”に気をつける

 とはいえ、どんな仕事でもこのように分割して少しずつ取り組めばいいというわけではありません。以下、注意すべきポイントを2つご紹介します。

  1. 安心しすぎない(未来の自分に引き継いでいるだけでやることには変わりがない)
  2. 寝かせすぎない(思い出す時間が余計にかかってしまう)

 仕事を分割することによって、1回あたりの負荷が下がりますが、これはいうまでもなく「やらなくてもよくなった」わけではなく、困難を部分的に先送りしているだけですから、安心しすぎないことです。常に「今日はきっちり20分だけ取り組んだが、明日の20分とその次の日の20分で本当に最後まで仕上げられるだろうか?」という問題意識を持つことで、油断を防ぐことができます。

 また、分割した仕事を割り振る際に頻度が低すぎる(寝かせすぎる)と、「前回どこまでやっただろうか?」ということを思い出すのに余計な時間がかかってしまい、逆効果です。例えば、上記のように1時間の仕事を20分ずつに分ける場合、毎日20分ずつではなく毎週20分ずつでは、おそらく前回の20分でやった内容を思い出すのは容易ではないでしょう。

 いずれも、本来なら得られるはずの“利ざや”を失うばかりか、余計な時間を取られるという“逆ざや”状態を招いてしまいます。

 なお、「中長期的な課題に取り組み続けるには?」という記事でご紹介したメールソフトBecky!を使った方法はここでも活用できるはずです。合わせて活用してみてください。

筆者:大橋悦夫

1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。


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