あなたは大丈夫? コミュニケーションの落とし穴“愛され”新人を育むビジネスマナー(2/2 ページ)

» 2008年05月07日 13時31分 公開
[SOS総務]
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言葉遣いの「イエローカード」

 ふだん何気なく口にしている言葉でも、ビジネス上ではNGとなる危険性もある。あなたの言葉遣いは大丈夫だろうか? 改めて見直してみよう。

イエローカード1 「……したいと思います」

 「がんばります」と「がんばりたいと思います」とでは、本人の決意や意思の伝わり方に大きな違いがある。なぜなら、「〜したい」は、本人の願望の表現であり、「がんばることを/したい」という、腰が引けた決意に聞こえるからだ。「ほんとうにやる気があるのか?」と言われても仕方がない。

 願望には逃げ道がある。「〜したかったけれど、ダメだった」と、いとも簡単に逃げることができるし、責任感も感じられない。一方、決意には責任が伴う。信頼とは、自分の責任感が相手に伝わって初めて得られるものだ。「〜したい」といった方が耳にソフトではあるが、実社会では、もって回った表現は避け、自分の決意や意思はストレートに出そう。


イエローカード2 「……のほう」

 資料のほう、私が用意しておきます」などという「〜のほう」は、いわれた相手を何となく不安にさせる。「〜のほう」とは、大ざっぱな方角を指し示す言葉で、「そのもの」を指すわけではないからだ。これはそもそも焦点をあいまいにする言い回しで、レストランなどで勘定をするとき、店員が勘定書きを出して「お勘定のほう、こうなります」というときの、請求の露骨さを避ける場合に便利な表現といえる。要するに、もったいぶった表現で、ことの本質をオブラートにくるんでしまうわけだ。しかし、ビジネスであいまいな表現は避けたい。「資料のほう」でも意図は伝わるだろうが、「資料は私が用意しておきます」と明確にいったほうが、はるかに理解しやすく、信頼がおける。


イエローカード3 「……じゃないですか」

今では老若男女を問わずよく使われ、市民権を得た表現だが、ビジネスの場では「?」と言わざるを得ない。妙に押し付けがましく、しかも馴れ馴れしく感じられるからだ。

 理由は、言い回しが問い掛けであるせいだろう。問い掛けは、相手に、肯定・否定・中立の立場なり、返事を保証するもののはず。しかし、「〜じゃないですか」には、相手に肯定しか許さないといった不思議な圧迫感がある。言外に「違いますか?」という慇懃無礼な追い討ちがにおうからだ。たとえ自分にはそんな意識がないにせよ、問題は受け取る側がどう捉えるかにある。ビジネスには持ち込まない方が無難だろう。


イエローカード4 「……なんですけど」

 「あのう〜」とセットで使われることが多い。「あのう、そろそろ(仕事を)終わりにしたいんですけど」など。しかし、これでは「終わりにしたい」という願望を相手に伝えたことになっていない。だから返事のしようがない。

 「けど」は、「私はそう思うけど……」のように、自分の考えをあいまいにして相手の反応をうかがう言葉。または、そのあとに「〜けど、だめですか?」と続く逆接表現だ。冒頭の「終わりにしたいんですけど」には、「終わるか終わらないかあなたが決めてください」さらには「最後までいわなくても分かって」という責任逃れと甘えが感じられる。「今日はもう帰ってもよろしいでしょうか」とストレートにいった方が、よっぽど気持ちがいい。


イエローカード5 「ワタシ的には……」

 自分の考えを強引に客観化し、主体と責任をあいまいにする言葉といえる。「〜的」とは、ある状態を表す言葉である。だから、意見を述べるとき「ワタシ的には〜ということです」などというと、「〜と考えているのが、私の今の状態です」となる。意見を述べているのではなく、自分の状態を説明しているにすぎない。意見の表明ではないから反対意見もでにくく、議論にもなりにくい。何よりも、意見が客観化されてしまうために、本人が真剣に身を入れて取り組んでいる姿勢が伝わらない。真剣に取り組んでいる人たちから一歩引いて、高みの見物を決め込んでいる印象も与えるので、エラそうでもある。ビジネスの場では口にしない方がよい。


イエローカード6 「……していただいていいですか」

 奇妙な言い回しである。「ここにサインしていただいていいですか?」などのように、問い掛けの形はとっているももの、相手の行動をうながす場合に使われることが多い。たいていの場合はいいも悪いもなく、そうしなければならないのである。このように、相手が拒否できない要求をしておきながら、形だけ相手の許可を得るというのは、失礼といわざるを得ない。同じ問い掛けなら、「サインしていただけませんか」と、すっきりいうべきだ。「サインをお願いします」なら、もっとストレートで分かりやすい。相手がすべきことを要求するのだから、許可を得るのではなく、お願いする気持ちを込めよう。


マナーの原点は自分の気持ちにある

 ここまで、さまざまなケースをご紹介してきた。中には自分のコミュニケーションとマナーの認識のレベルに愕然とした人もいるかもしれない。しかし、何もマナーを恐れすぎることはない。それはマナーの原点が、相手と友好的に付き合いたい、自分の意思を相手に伝えたい……といった気持ちにあるからだ。そんな自分の思いや誠意を表すツールとしてマナーを捉え直してみると、自然に使いこなせるようになるはずだ。

『月刊総務』2003年4月号 特集「社会人のルールとマナー」より


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