「小さな政府」は企業に自由競争への門戸を開くと同時に、「なにかあったら自ら責任をとりなさい」と法整備した。だから企業はいつなんどき責任追及の矢面に立たされるか分からない。これが今の自由競争社会だ。
自由競争社会は“ポーカー”社会ともいえる。「1人の敗者を出すにとどめ、結果を平等にしようとする“ババ抜き”社会から、チャンスは平等だが、1人だけを勝たせる“ポーカー”社会になった」(旧通産省関係者)からだ。
1.「小さな政府」化が進み、民間企業にチャンスが拡大
2.国に守られた社会から、ガラス張りの自己責任社会へ
3.企業責任を重くみる法律が次々整備
4.足をすくわれないよう、常にリスク管理しなければならない
「常にリスク管理が必要なんですよ!」。そういわれても、なにをポイントにどうリスクと向き合えばいいのか。例えばあなたは今、ある県内のA地点にいて、隣りの県のB地点まで行きたいと考えているとしよう。次のどちらに乗っていくだろう。
a.時速50キロでブレーキの効くトラック
b.時速200キロでブレーキの効かないスポーツカー
言うまでもなくスポーツカーの方がB地点に早く着くから、スポーツカー。そう回答を出した人がいるかもしれない。しかしスポーツカーにはブレーキが効かないことを思い出した人は、命を落としたくないから迷いなくトラックを選んだだろう。
時速200キロだからと言ってブレーキが効かないのは、リスク管理とは言えない。もし仮に、目的地までなんの障害物もなく、一直線に突っ走れる道だと判明したとしても、突然横から別の車が突っ込んでこないとは言い切れない。
つまり「リスクを完全に取り除くことはできない」からだ。しかし、向かおうとする目標地点までにどんなリスクが待ち受けているか、予測できるものをすべて調査・分析し、あらかじめ対処しておけば、可能な限りのリスクは減らしておける。
例えば調査した結果、あなたの会社が今いるC地点から目的地のD地点を結ぶ直線上に、直径500メートルの巨大な穴があったとしよう。でもD地点に行きたい。さてどうするか。
穴を塞ぐ。穴の周りに柵を作り、迂回する。ヘリコプターで行く。穴に階段を作り、下って上る……などさまざまな対処を考えられるだろう。財力があるほど対処できる選択肢は広がる。
逆に財力が小さければ、注意喚起する看板を立てておくのが精一杯で、最悪B地点に行くのをあきらめる選択をするかもしれない。だが「あきらめるのもリスク管理のうち」である。
個人、会社に関係なく、行きたい目的地は、常に未来に広がっている。やっかいなことにリスクもまた、未来に待ち受ける。しかし、よくよく考えてみると――目的地さえしっかり見えていたら、そこに至るまでのリスクも予測できる。
考えられる限りのリスクをすべて予測したら、それを管理すれば目的達成の道が大きく開ける。だから正体さえ分かれば、リスクは決して怖くないのだ。
目的地が明確なら、リスクは達成までの道しるべにもなる。そしてこれこそが、あるべきリスク管理の姿なのだ。ポイントをまとめてみよう。
1.目的地を設定するのが大前提
2.目的地まで道を常に調査・分析しておく
3.調査に基づき対処しながら進む
またリスクは、近代以前の命がけで航海をしていた時代、「絶壁の間を船で行く」という意味の語源を持つという。リスクの定義は次のようになっている。
「損失の機会(chance of loss)」
「損失の機会(chance of loss)」−「損失(loss)」=「機会(chance)」
つまりリスクから損失を除けばチャンスが残る。
命を落としかねない「リスク」も、正確にとらえて対処すれば、命を救う「クスリ」に変わる。
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