第10回 「それから……それから……」――いつまで続くの?つい口に出る「微妙」な日本語

ある事柄に別の事柄を付加する接続詞「それから」。会議や商談の場でも、とりとめもなく永遠に付加し続けそうな勢いで「それから」連発する人もいるから困ってしまいます。

» 2008年04月03日 12時02分 公開
[濱田秀彦,ITmedia]

 「……経費削減運動について言えばまず、仕入れ値は同業他社より平均%高い。それから、残業時間の抑制についても、部門により取り組みにバラつきがあります。それから、電気のつけっぱなしも多いです。それからコピー用紙の無駄が多い。それから、電話代も高い。それから……」



   出現度……★★★★
   不快度……★★★★

 「それから」がどこまで続くか分かりません。

 スピーチでよくあるパターンですが、聞いているほうは、ゴールが分からないマラソンを走っているようなものですから、集中力を維持できません。

 「それから」でダラダラとつなぐのではなく「ポイントは4つある」というように、聞いてほしいことをあらかじめ列挙するようにしましょう。そうすれば、ゴールが分かりますから、聴く側も集中してくれます。

 列挙するポイントは4つ以内。できれば3つまでにしましょう。

 心理学者ミラーによれば、成人の記憶範囲の限界は7プラスマイナス二(5から9)だそうですから、それよりさらに少なく見積もって3か4というわけです。人前で話すことを仕事にしている私の経験でも、5つになると聴衆の集中度は落ちます。

 どうしても、5つ説明しなくてはならないなら、分けて「ポイントは3つです」として説明し、「2点補足事項があります」とやったほうが、よく聞いてくれます。

 日々の会話にも、終わりの見えない「それから」は、出てきます。

 「課長、報告があります。始めに朝礼の当番のことですが、火曜は朝イチでお客さまのところへ行くことになりまして……、それから、今月のタクシー代ですが、メーカーさんと同行したときに……それからマル秀スーパーさんの納品についてですが……それから」

 「ちょっと待て。もう出かけなきゃならないから、次で終わりにしてくれ」

 「はい、それから今月で退職したいのですが」

 「それを先に言え」

 先に、「報告事項は4つあります」と言ったほうがいいのはスピーチと同様です。相手にも予定がありますからね。それに、報告は、大切なことから言うのが基本です。お互いに、限られた時間を有効に使うために。

肝に銘じよ!

「それから」で 回る話は から回り


筆者:濱田秀彦(はまだ ひでひこ)

ヒューマンテック代表取締役。1960年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て大手人材開発会社に転職。トップ営業マンとして活躍する一方で社員教育のノウハウを習得する。1999年に独立。現在はコミュニケーション研修講師として、プレゼンテーション、話し方、マネジメントなどの分野で年間100回以上の講演を行っている。また、Webサイトのプロデュース、システム開発も手がける。著書には『ビジネス快話力』(主婦と生活社)、『みんなのパワーポイント企画・構成・話し方』(エクスナレッジ)などがある。


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