SECURITY SHOW 2008で目についたのは、各社のメガピクセル監視カメラ。だが肉眼では「きれいなだけ」。メガピクセルカメラが生きる道とはどこに?
東京ビッグサイトで開催中の「SECURITY SHOW 2008」。目についたのは、監視カメラの新製品だ。特にパナソニックやソニー、三洋電機では、メガピクセルをアピールしていた。
これまでデジタル監視カメラというと、30万画素程度の画素数でVGA(640×480ピクセル)、もしくはQVGA(320×240ピクセル)程度のいわゆるSD画質だった。ところが最近、監視モニターの巨大化などとあいまって、100万画素以上のメガピクセルカメラを搭載したHD画質の監視カメラが増えてきている。
三洋が参考出展していたのは、最大1920×1200ピクセルで撮影できるフルHDカメラ。パナソニックとソニーは最大1280×960のHDで撮影できるのが最大の特徴だ。いずれもHD画質での撮影が可能だが、監視カメラに必要な性能なのだろうか。
そもそも監視カメラは不審者などを発見するためのもの。不審者の動きが分かればいいのであればSD画質でも十分だし、ある意味HD画質はオーバースペックともいえる。会場でも肉眼で確認したが、これまでのSD画質に比べたらきれいだが、それ以外の“発見”はなかった。
監視用の液晶モニターも大型化が進んでおり、SD画質であれば確かに荒い映像になってしまう。とはいえHD画質であっても人の目で見る分には、各社ブースのスタッフともに「画像がきれいに映るぐらい」と口をそろえる。
一方、人ではなくシステムで利用する場合はどうか。人数を数えたり、不審者を検出したりする解析系システムでHD画質の映像ソースを利用することは大きな意味がある。従来のSD画質ではVGAやQVGA程度。これがHD画質であれば画面面積比で4倍〜9倍になるわけだ。情報量が多くなるわけだから、当然解析精度も高まる。
例えば、人の顔を検出するシステムを展示していたオムロンでは、20×20ピクセルの範囲に顔を納めて切り出せれば人の顔を検出できる。さらに48×48ピクセルを確保できれば実年齢前後5歳の年齢も推定できるという。少なくも画面の面積が広がれば、そこに存在する人の顔をより多く切り出せるようになるわけだ。かばんや財布などの置き忘れを防ぐ検知システムを展示していたキヤノンブースのスタッフも「HD画質であれば、これまでの数倍の検出精度を実現できるかもしれない」とコメントする。
だがシステムで利用する場合にも障壁がある。実は、先ほどのキヤノンはメガピクセルの監視カメラを発表していない。フルHDの監視カメラを展示していたパナソニックにしても、三洋にしても、その高精細さを駆使した解析系システムは開発中だという。
HDの監視カメラを展示していたソニーも同じだ。動いている物体を検出し、アラームしてくれる機能「DEPA」自体はHDカメラに対応している。だが、処理できるのはHDカメラで撮影したSD画質の映像だけで、HD画質の映像ソース自体はまだ利用できないのだ。
動いている物体を検出するビデオレコーダ「VisualCast VBOX-S/500」を展示していた沖電気もまだHDソースの映像を解析するシステムは開発中。沖電気のスタッフが答えてくれた。「高解像度の画像は、処理の負荷が高い。現状のシステムでは対応が難しい」
HD画質の監視カメラはこれからどんどん増えていく。確かに画像自体はきれいだが、監視カメラとしては周辺のシステムが追い付いていないのが現状。これからが正念場――と言えそうだ。
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