6000兆倍の自由を手に入れる靴下整理術文具王の「B-Hacks!」

シャツ「超」整理法の回では、「パンツ・靴下は、それぞれ引き出しを用意し、そこに放り込んで終了」と、1行で簡単に書いたが問題は靴下だった――。

» 2008年02月15日 11時22分 公開
[高畑正幸,ITmedia]

 少し前にものぐさなシャツの整理法を書いてみたら賛否両論、さまざまなご意見を戴いているようだ。しかし、思い切って規格を統一することは、最も効果的な整理整頓の鉄則である。そこで、反論承知で懲りずにもうひとつ。

問題は靴下

 シャツ「超」整理法の回では、「パンツ・靴下は、それぞれ引き出しを用意し、そこに放り込んで終了」と、1行で簡単に書いたが、実は、ここにも筆者なりの割り切りがある。最近は乾燥機付き全自動洗濯機(衣類が傷むとか言う人がいるのは分かってて言うが、それと比較して有り余る時間という価値を生み出してくれるマシンだ。これの購入自体がハックと言っても過言ではない)のおかげで、パンツや靴下なんて干しもしない。パンツは、洗濯機から引き出しにダイレクトに放り込んでほんとに終了。しわくちゃだろうが何だろうが履いちゃえば一緒だし、誰に見られるわけでもない。

 問題は靴下だ。靴下はつがいを見つけて洗濯ばさみで留める(2つを一緒にして片方の口をくるっと裏返して束ねるやり方は、口の部分が伸びるのでやらない)という作業があった。このささいな作業が筆者はもう面倒で面倒でしかたがなかったのだ。この“靴下神経衰弱”。どういう訳だか知らないが、洗濯機から出して並べてみると、伴侶を失った哀れな靴下が多数……。彼ら片方だけの靴下は、1つのカゴに放り込まれ、何カ月も相手の帰りを待っている。こんな狭い家の中でどうして君たちははぐれてしまうのか! と言ってみたところで空しいばかりだ。それこそ神経というか、やる気が衰弱していくのである。

 そんなことを悶々と不満に思ったあげく、昨年、全体的に伸びた靴下が気になりだしたので、思い切って全く同じ靴下をまとめ買いしてみた。これなら相手はどれでもいいわけだから、簡単に組み合わせができるはず――というのが筆者の考えだ。購入したのは無印良品の靴下3足組5束、計15足。相手が1から、一気に29に増えた計算だ。古いものは徐々に減っているから、今はほとんどすべてが同じ靴下。もはやほとんど迷うことはない(とはいえ履けるの靴下を捨てるのももったいない。実はこの方式、計画してから駄目になった靴下を減らして入れ替えるのに1年近くかかっている)。

 乾燥が終わって洗濯機から取り出した靴下は、何も考えずに引き出しに放り込んで終了! 取り出すときも適当に手を突っ込んで2つつかめばそれが今日のペアだ。ああ、なんてステキなものぐさライフ。やってみると分かる人には分かる、この清々しい開放感! この気分の良さはなんだろう! 今までどうしてあんな面倒くさいことを毎回繰り返していたんだろうと思う。

 15足は多いと思われるかもしれないが筆者の場合、いろいろと事情があって必ず毎週末に洗濯が可能とは限らない。15足というのは2週間分という意味だ。これだけあればまず何とかなる。当然追加の時には同じものを足さねばならない。この靴下は無印のド定番商品ぽいから、たぶんしばらくは大丈夫だろうと踏んではいるが、安定供給が最大の心配事だ。

6190兆通りの組み合わせを自由に選べる喜び

 ついでにもう1つメリット。ほつれたりすり切れたり、傷んだ場合にも、ペアのことを全く気にすることなく、片方だけでもポイしちゃえばいいのだ。相手が決まっていると片方がなくなればもう片方も捨てなくてはならないが、全部同じなら全く気にすることはない、もう1つ駄目になればまた偶数に戻る。どの靴下が駄目になろうが、被害も最小限だ。

 もちろんこの方法は、毎日違う靴下でオシャレを演出している人には残念ながら対応していない。フォーマルとカジュアルで使い分けてるぐらいなら例えば2種類に統一するとか、無印が嫌ならもっと高級な靴下で統一するとか方法はいろいろあると思うが、筆者の場合、無印の1種類で全く困っていないのだ。まあ、石田純一みたいに靴下を履かずにオシャレを主張するのがある意味究極かもしれないが、さすがにあそこまでの割り切りをスタイルとして通す自信はない。

 この方式の話をすると、アインシュタインが実行していたという方式と混同されることがある(アインシュタインは、服装で悩むのがもったいないということで同じスーツ、同じシャツばかりを何着も持っていたという話がある)。確かに考えなくても良いという点においては近いが、これとも微妙に違う。筆者が主張したいのは、2つでひと組の製品の組み合わせによる問題をなくすことなのだ。

 仮に15足の靴下があったとして、すべて異なる柄の場合、すべてがきちんと組み合わさる方法は当然だがただ1通りしかない。しかし、これがすべて同じ柄で左右の区別もないとすると、15足計30本の中から無作為に2本を取り出す組み合わせは435通り、30本すべてを無作為に2本組にして15足にする場合の組み合わせとなると――高校時代の確率統計の知識をフル活用すると――たぶん下記のように計算できる(はず)。

 (30×29/2×1)×(28×27/2×1)×(26×25/2×1)×(24×23/2×1)×(22×21/2×1)×(20×19/2×1)×(18×17/2×1)×(16×15/2×1)×(14×13/2×1)×(12×11/2×1)×(10×9/2×1)×(8×7/2×1)×(6×5/2×1)×(4×3/2×1)×(2×1/2×1)/(15×14×13×12×11×10×9×8×7×6×5×4×3×2×1)=6,190,283,353,629,370。6190兆通りという、天文学的な組み合わせから選べるのだ! ある意味選択の自由!! 

 屁理屈をこねたいわけではなく、つまりは靴下のペアが決まっているということは、これほどの組み合わせの可能性の中からただ1つに絞り込むということをいつも行っているのだ。ある意味それもすごいことだが、靴下のペアをそろえることで、その作業から解放されるのである。

 こんな事ができるのも、靴下は日常ほとんど見えない部分だからではあるが……。さすがに毎日同じシャツでは、同僚に変な目で見られてもしかたがないと思うが、今のところ、靴下の色が毎日同じだということに気付かれた様子はない(少なくとも同僚などに聞いた範囲では、皆、筆者の靴下などには全く興味がないとの回答で、その色など覚えてすらいなかった)。

 筆者は常々、ハックというのは努力や心がけではなく、システムで解決するものだと思っている。できることならなんにも考えなくてもほとんど自動的に目的を達することができればそれに越したことはない。目的はいつも清潔感のあるきちんとした服装をしていることであって、そこに達するためのシャツの整理や靴下のペアリングなんて、どうだっていいことだ。シャツや靴下のこの整理の方法は(正確には整理を放棄しているが!)、そういう筆者の考え方を端的に表している事例だと思う。さて、皆さんはどう思われるだろうか?

著者紹介 高畑正幸(たかばたけ・まさゆき)

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 1974年、香川県生まれ。図画工作と理科が得意な小学生を20年続けて今に至る。TVチャンピオン「全国文房具通選手権」で3連覇中の文具王。現在は文具メーカーに勤務、文房具の企画開発を行っている。2006年「究極の文房具カタログ」上梓。文具サイト「TOWER-STATIONERY」を主催。


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