シゴトツールの効用を最大化するには?【解決編】シゴトハック研究所

シゴトツールの導入で成功するには、速効で効果が出るツールを選ぶよりも、“習熟ツール”を選ぶことが大切です。一見遠回りなこの方法の利点は何でしょう。

» 2007年12月26日 20時31分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 シゴトツールの効用を最大化するには?

 コツ:仕事の“ティッピング・ポイント”を知っておく


 シゴトハック研究所では、仕事の効率アップとクオリティアップを支援するためのツールや具体的な方法論であるシゴトハックを紹介しています。特にツールについては、使えばすぐに効果が出る“速効ツール”よりも、ある程度使い慣れることでその真価を発揮する“習熟ツール”に注力しています。

 この「使い慣れる」には次の2つの側面があります。

  1. 時間をかけてトレーニングを積む
  2. 勘どころを押さえて効率よく使う

 「使い慣れる」と聞くと、どうしても1のような「時間がかかる」あるいは「手間がかかる」といったイメージを抱いてしまうかもしれません。仕事は常にスピードが求められますから、導入したその日からすぐに効果を発揮してほしい、という要求があるのは当然といえるでしょう。それゆえ、どうしても“速効ツール”に目を奪われがちなのです。

 でも、長い目で見た時に決定的に差がつくのは、“習熟ツール”によってもたらされる持続性の高いパフォーマンスでしょう。「人馬一体」という言葉がありますが、いかに駿馬といえど騎手にその馬を乗りこなす技量がなければその俊足が発揮されることはないのです。

 逆に、ツールを手足のように操ることができれば、ツールと人の両方のポテンシャルが最大限に発揮されるはずです。そのために必要なのが2の「勘どころを押さえる」という視点です。

仕事の“ティッピング・ポイント”を知っておく

 仕事に限らず、人がツールを使うのは人手によるパフォーマンスを増幅させるためでしょう。例えば、畑を耕す際にトラクターを使うのは、人が手で土を掘り返すよりも効率がいいからです。一見するとトラクターは人手を代行しているように見えますが、トラクターはあくまでも人手のパフォーマンスを増幅させているだけです。

 つまり、ツールは人の能力にレバレッジをかける役割を担っているわけです。そう考えると、ツールを使う前に“素手”による試行をしておくことは、ツールに期待する役割を浮き彫りにする上で役に立つはずです。

 言い換えれば、ツールで増幅しようとしているのが、人手によるどのような作業なのかを突き止めることです。さもなければ、ツールに操られてしまうことになりかねません。

 例えば、Femoというツール(11月9日の記事参照)は、人手による次のような作業を増幅するものです。

  • メモに日付ごとのラベルを付けて仕分ける
  • 本日の日付ラベルがついたメモだけを取り出す
  • 特定のラベルがついたメモだけ取り出す
  • すぐに使わないメモはしまっておく

 いずれも人手では時間と手間のかかる作業ですから、ツールを使うことでこの部分を効率化しているわけです。これは、ツールの効用が最大化するティッピング・ポイントを突いているといえるでしょう。そのためには、まず面倒でも手動でその作業をやってみて、ツールによる増幅の余地を探る必要があります。

ツールを習慣に組み込む

 日々使うスケジュール管理ソフトやタスク管理ツール、あるいはWebブラウザなど、それを使っていることをことさらに意識させないツール、それが“習熟ツール”なのですが、先ほど「ツールを手足のように操ることができれば、ツールと人の両方のポテンシャルが最大限に発揮される」と書いたとおり、ツールを使う人の側にも文字通り習熟が求められます。

 習熟とは、意識しなくても再現できるようになることです。適当にやって10回に3回くらいの頻度でうまくいくというのではなく、10回やったら10回とも想定通りの結果が出るというくらいでなければ、そのツールを使い続ける気が失せてしまうでしょう。

 これを実現するには、人が自らの習慣の中にツールを組み込むことです。例えば、毎朝欠かさずニュースチェックをしているなら、ニュースチェックの際に気になった記事をクリップするためのツールを使うようにする、あるいは、日々のタスクを紙にリストアップしているなら、並び替えや検索ができるタスク管理ツールを導入する、などです。

 ツールを、すでにある習慣の“ベルトコンベア”に組み込むことで、無理なくその習熟を図ることができるでしょう。

 今後も続々と新しいツールが登場するでしょう。その際には、次の2つの視点でそのツールを使うかどうかをチェックしてみてください。

  1. そのツールはあなたの仕事のどの部分を増幅するか
  2. そのツールの組み込み先となる習慣はすでにあるか

 いずれの問いにもYesと答えられれば、そのツールによってあなたの仕事のパフォーマンスは向上するでしょう。1だけがYesの場合は、そのツールにまつわる新たな習慣構築が必要になりますから、習熟までに時間を要することになります。2だけがYesの場合は、そのツールの導入は見送る方が無難でしょう。

筆者:大橋悦夫

1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。


関連キーワード

習慣 | シゴトハック | タスク管理


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ