インタビュー
田口元の「ひとりで作るネットサービス」探訪:
「圧縮新聞」「訃報ドットコム」始めて半年で数々のサービスを生み出す、自称“ニート”──phaさん
「ニートだけど別荘を買った」というブログで知られるphaさんは、数々のWebサービスを生み出す開発者でもある。プログラミングを始めたのは2007年の2月。どのようにして学び、サービスを作り出していったのだろうか。

ひとりで作るネットサービス──第19回目はその日の最新ニュースをまとめて表示する「圧縮新聞」や、訃報情報を自動でまとめる「訃報ドットコム」など、多数のWebサービスをひとりで開発しているphaさん(28)にお話を伺った。プログラミングを始めたのは2007年2月からというphaさん。短期間でプログラミングを習得し、サービスを開発できるようになった背景にはどういった仕事術があったのだろうか。
憧れのプログラミング──2007年2月に思い立って始める
「プログラミングにはずっと憧れていました。ある日、よく見ているブログで『文系ブロガーはみんなPHPをやるべき』ということが書かれていて、それで思い立って始めてみたのです」。2007年2月のことだった。『独習PHP』(翔泳社)を買ってきて読み込み、なんとなく全体像をつかんだ。さて、何を作ろうか、と思ったときにちょうどいい題材があることに気が付いた。
「当時、気に入ったYouTubeのビデオをブログにまとめていました。でも、これってプログラムを使って自動で作れるんじゃないかな、と思いついたのです」。何をどうしたらいいか分からなかったphaさんは、とりあえずGoogleで検索をかけてみた。すると使えそうなサンプルコードがたくさん見つかった。そのコードをコピーして実行させると、すんなりとYouTubeのビデオが表示された。「意外と簡単だな」。phaさんはそう思った。
開発に使っている愛用のMacBookとイー・モバイル端末とともに悩んだら検索すればサンプルコードが見つかる──そう気づいたphaさんは次々とアイディアを形にしていった。昔から文章が好きだったというphaさん。自身のブログでも小説やエッセイ、詩などを書き綴っていた。「言葉遊びというか、言葉を組み替えてシュールなカオスになったり、うっかり偶然から良い文章が生まれたりするのが好きなのです」
そこでphaさんが作ってみたのが「村上春樹風に語るスレジェネレータ」。ある単語を入力すると、2chのスレっぽい文章が生成されるというサービスだ。ためしに「初音ミク」と入れてみる。「完璧な初音ミクなどといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」「初音ミクは盲のいるかみたいにそっとやってきた。」といった文章が自動で生成されていく。
無論、意味が通じないときもあるが、こうしたシュールな文章を眺めるのが好きだと話す。この「村上春樹風に語るスレジェネレータ」は、はてなブックマークでも好評だった。「爆笑したwww」「これはすごい」というコメントが寄せられた。自分の作ったものが評価されてうれしかった。もっとプログラムをやってみようと思った。
次にphaさんが作ったのは「訃報ドットコム」。ネット上の訃報情報を自動で収集し、まとめて見ることができるサイトだ。このサービスもネット上の文章を加工することで実現している。作ったきっかけは山田風太郎著の『人間臨終図巻』シリーズ。人の死に様をまとめている本だ。人の死についてまとめるという、その奇妙な企画に惹かれた。自分でもこうした情報を見る事ができるサービスを作ってみようと思った。
「死について興味があります。人は仕事をしたりしますが、死ぬときは動物と一緒だな、と思ったりもします。不謹慎な言い方かもしれませんが、人の死を知ることで『自分もがんばらなくちゃ』というやる気が出てきます」。訃報ドットコムでは死んだ人を死因別、年齢別、命日別、職業別で検索していくことができる。自分と同じ年齢で死んでしまった人について考える、といった使い方も可能だ。
Web上から文章を抽出し、文章や言葉を再構成して「言葉遊び」を楽しむ。そうした技術を身につけたphaさんが最近作ったのが「圧縮新聞」である。このサイトでは形態素解析とマルコフ連鎖というロジックを使い、長い文章を文法的には自然さを残しつつ、短くまとめていくことができる。ただ、文法的にはそれほどおかしくないが、文章として意味をなさないものになることが多い。
「文章はぐちゃぐちゃになりますが、たまに面白い文章ができあがることがあります。そのシュールさを楽しんでもらいたいのです」。開発のきっかけはいわゆるMADニュースというコンテンツ。ニュース音声を単語ごとに切り取り、再構成することにより、でたらめなニュースができ上がるというものだ。「警備会社に勤める女子中学生が、肉やたまごで男に切りつけられ、二カ月の怪我を負いました」といった笑えるニュースができ上がるため、ファンも多い。
「MADニュースが好きなのですが、聞いているうちに、プログラムを使えば同様のことを自動でできるんじゃないかな、と思ったのです」。phaさんは「圧縮新聞」を作ろうと思い立ったきっかけをそう話す。このサービスも、はてなブックマークなどで取り上げられ、雑誌からも取材の依頼が来た。「やっぱりみんなに評価してもらえるとうれしいですね。もっとがんばろう、とやる気が出てきます。」
「朝はゆっくりと起きて、天気が良かったら散歩」──続けられるだけ今の生活を続けたい
学生時代は寮に住んでいた。初めての共同生活だったが、思いのほか楽しかった。いつでも遊ぶ仲間がいた。暇になったらゲームやマージャンをして楽しい時間をすごした。「この寮生活が原点だと思うのですが、共同生活が好きですね。大学卒業後も、仲間と遊べる空間を持ちたい、と前々から思っていました」

現在phaさんは“ニート中”。就職はしたが、なんとなく仕事があわなくて今は各地のゲストハウスを転々としている。ゲストハウスも共同生活なので肌に合っていて楽しいが、友達と自由に使える空間が欲しくて熱海に別荘を買った。100万円という破格の値段だった(購入時には90万円にまけてもらった)。ニート中だったが、友人と3名で思い切って購入することにした。
購入にいたるきっかけ、どうやって買ったのかについては自身のブログにまとめた。「ニートだけど別荘を買った」という記事ははてなブックマークでも400を越えた。「まぁ、ネタなのですが、こうした空間で開発合宿もいいかな、と思っています」
今は仕事をしていたときに貯めた貯金を切り崩して生活しているというphaさん。今の生活がすごく気に入っている。「朝はゆっくりと起きて、天気が良かったら散歩に出かけます。すごく幸せだなぁ、って思います」。元々それほどお金を使わない性質なので、続けられるだけ今の生活を続ける予定だという。

「飽きっぽい性格ですがプログラミングは続けていこうと思っています」、と言うphaさん。作業を進めるために最近工夫しているのは「もくもく会」。一人で開発作業をしているとどうしても飽きてしまうもの。そこでみんなで集まり、それぞれ黙々と作業をしませんか、とTwitterで呼びかけた。すると同じように思っている人も多かったらしく、ちらほらと人が集まり、すでに数回「もくもく会」を開催しているという。
「生活できなくなったら仕事を探さないと……」。phaさんはそう話す。ただ、広告や課金まわりの環境が整い、Webサービスの開発だけで生活できるような世の中になればいいな、とも考えている。「ニートがコツコツとサイトを作って生活できるようになればいいですよね」。phaさんは苦笑しながらインターネットの可能性について希望をそう教えてくれた。
バックナンバー
- ひとりで作るネットサービス 一覧
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- 「Twitterなら続けられる」を試験勉強に――tsuduketerのTetsuさん
- デザインできなくても作れる――デザイナーを経て「NENPYO」を作り上げたdaiskipさん
- 斬新とは省略すること――「AR三兄弟」川田さん
- アイデアを判断することと生み出すことは違う――「超店舗検索」鈴木さん
- 元高校教師がいかにしてネットサービスを開発したか――「割り勘電卓」増永さん
- 「○○と言えばここ!」のポジションを目指して――「クイズ研」岩崎さん
- iPhoneアプリはポスト・イットで作る!? 「QuadCamera」「ToyCamera」深津さん
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- サイバーショット携帯がきっかけ!? 「携帯百景」kimzoさん
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- 【番外編】元任天堂のメンバーが作ったフィギュアコミュニティー「fg」
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[田口元,ITmedia]
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