その3「不安を煽って」やる気をくじくやる気をくじく、8つの方法

やる気をくじく方法、3つ目はこうです。「お前、ここでがんばらないと降格だよ」「お前、20%アップしないと、こうだぞ」──。やる気をくじく方法をマスターして、コントロールしましょう。

» 2007年11月13日 22時05分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 「やる気」は自然に生み出てくるもの。やる気がでないのは「くじかれている」から。「高すぎる目標」「低い自己評価」に続き、3つ目のやる気をくじく方法をチェックしましょう。

3──「不安を煽る」と、やる気がくじかれる

 やる気をくじく方法の3つ目は、不安を煽ることです。安全・安心のためにやることは悪いことではないし、リスクマネジメントはもちろん大事です。しかし、煽ることはよくありません。「お前、ここでがんばらないと降格だよ」とか「お前のポジションなくなるよ」とかですね。

 もちろん、ニュートラルな条件で言ってあげるとか、あまりにものんびりしている人にハッパをかけてあげるほうがいいときもあります。だから、不安を持ってもらうのは大事なんですが、煽りすぎるとやる気がなくなってしまいます。「お前、20%アップしないと、こうだぞ」「次も20%アップしないと、こうだぞ」というように、しないと○○だぞ、と言われ続けていると、言われた方は「ああ、もう、なんかどうでもいいや」みたいな感じになってきます。

 リスクをリスクとしてちゃんと認知することは非常に大事ですが、それを煽るだけでは何の解決にもならないし、やる気にも結びつきません。そうではなくて、逆に、それができたとしたら、どんな楽しくていいことがあるか、やりがいや充実があるか、を引き出してあげることです。

 例えば、来週に資格試験があるという場合、試験があるということばかりに意識を向けてしまうと、自分で自分の不安を煽ってしまい、結局勉強が手に付かないということがあります。そういうときは、試験が終わった後のことを考えてほしいのです。少なくとも終わった後は1週間くらいのんびりできるとか、仕事のペースを落とせるとか、受かったらこんないいことがある、というように、不安なことに意識を向けるのではなくて、それの終わった後のことを考えましょう。会社の状態が危ないと思ったら、会社がヤバイ、ヤバイと煽る代わりに、みんなでがんばって会社をよくして、安定してきたときのことを考えて、じゃあ、そうなるようにがんばろう、という方がいいですね。

「じゃあ、どのようになったらいいですか?」

 私がコーチングした例で、こんな話もあります。ある会社のマネージャーAさんの事例です。部下に、ナンバー2とナンバー3の位置にいる、非常に仲が悪い2人がいるらしく、その対応で悩んでいます。2人はいつも喧嘩をしていて、お互いに対抗して悪口を言い合っているらしい。しかもそれぞれに部下がゾロゾロとついています。

 Aさんは、自分はマネージャーなんだけど、全体をまとめきれていない、と悩んでいます。そして、お客さんからクレームがあったとしたら、またあの2人が揉めて騒ぎになるんじゃないかとか、本社から通達があっても、またあの2人で問題をやっかいにするんじゃないかとか、お客さんに対応するときに、お互いに違うことを言ってしまうんじゃないかとか、こうなったらどうしよう、ああなったらどうしようと、不安なこと、まずいことばかりを、Aさんは話します。もうその時点で、Aさんにはみんなをまとめる気(やる気)がなくなっていました。

 では、どうしたかというと、じゃあ、どうなったらいいと思いますか? と聞いてみます。するとAさんは、「あの2人がプライベートで仲良くならなくてもいいから、仕事の部分だけでは目標を共有して協力してほしい」と言いました。そうなったら、どうですか? と聞くと、「いいです」と答えます。

 具体的にどんな場面で2人が協力したとしたらいいですか? と聞くと、「お客様からクレームが来たとしたら、あの2人がそれぞれ持っている違うアイデアを出し合って、より良い答えを出すとか、お客さんが○○の件で来たとしたら、2人でこうやって対応するとか、スタッフを教育するときも、2人のいい考え方を合わせていい教育をするとか」と言ってくれました。そこで、そういうふうに考えていったらどうですか? と聞くと、「あ、こんなふうに考えていったら、何かちょっとやってみようかな、という気になりました」となったんです。


 こんなふうにダメ、あんなふうにダメ、と考え続けると、自分でどんどん不安を煽ってしまいます。けれど、良くなったとしたら、どんな良いことがあるかを考え続けると、前向きな気持ちになります。事例のAさんには20個くらい考えてもらいました。もちろん全部はできませんが、ちょっとやってみようかな、という気になりました。

 不安を煽ると、解決に向けて起こす具体的な行動が見えてこないのです。例えば、会社がヤバイといわれても、じゃあどうする、ということが出てこない。でも、ヤバイのは事実なんだけど、どうなればいいか考えようというと、もうちょっと組織がフラットになって、もっとみんなが意見を言い合えて、下の意見もくみ上げられて、しかも世の中の動きに対応して、異業種とも交流して……といろいろ出てきますね。そうしたら、あれとあれはさすがに大きすぎて俺にはできないけれど、異業種と交流するくらいだったら、ちょっとアイデアがあるから話を持ちかけてみようかな、みたいな気持ちになるのです。

 次回は折り返し地点。やる気をくじく方法の4つ目に入ります。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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