『秘伝すごい会議』──「普通のチーム」を「すごいチーム」に変える4日間5分で読むビジネス書

『すごい会議』を皆さんはお読みだろうか。その実践編にあたる本書では、“すごい会議”を導入することで実際にどんな成果が上がるかを語る。

» 2007年11月13日 18時52分 公開
[大橋悦夫ITmedia]
表紙

大橋禅太郎・雨宮幸弘『秘伝すごい会議』(大和書房刊)

 「5秒で出した答えと30分考えて出した答えでは、何%ぐらいが同じ答えだと思いますか?

 チェスには名手を育てる、ある方法があります。どのように育てるかというと、5秒で答えを出す早指しの訓練をします。面白いことに、5秒で出した答えと30分で出した答えは、86%同じでした。

 今日は、私は皆さんに短い時間で【何分でお願いします】という形でリクエストしていきます。皆さんは5秒で答えを出すことにチャレンジしてみてください」(p.50)


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 前作『すごい会議』が理論編なら、本書はその実践編に当たる。しかも、実際に「すごい会議」を導入し、成果を上げたという雨宮幸弘氏が、具体的にどのように変わったかを当事者の視点で語っている。

 まず、大橋禅太郎氏による「すごい会議」の手順解説パートがあり、次に雨宮幸弘氏による実況パートが続くというサンドイッチ構成になっている。この実況パートを読むことで、直前で解説された手順がどのように“実践”されるのかを具体的に知ることができる。

 また、特徴的なのは「体験」を先にさせた上で、その「意味」を解説するというやり方。これは、本書の中でも次のように説明されている。

「その意味を説明してから、体験してもらうやり方」(たとえば、紙に書くメリットについて説明してから、紙に書いてもらう)は、普通、どこでも行われています。「すごい会議」では、「体験してから、その意味を質問するやり方」をとります。そのほうが、腹に一発で落ちやすいからです。(p.52)

 本書には、随所に書き込みワークがあるのだが、最初のワークには次のようなヒントが添えられている。

 「書く時は、5秒で答えを出して、55秒で書く。30分考えて出した答えと、86%は同じ答えが出ます」(p.17)

 おそらく「なぜ86%なのか? 根拠はあるのか?」という疑問が浮かぶだろう。でも、見たところそれについての解説は見つからないので、仕方なくこれに従うことになる。その後しばらく読み進めていくと、その根拠に出くわす。それが冒頭に引用した一節だ。

 根拠に出くわすまでの間にきちんとワークをしてきた人であれば、すなわち体験した人であれば、「だから86%なのか!」と腹に落ちるだろう。本を読んでいるところからすでに「すごい会議」の導入が始まっているわけだ。

 「すごい会議」の何が「すごい」のかを端的にいえば次の2つに集約できるだろう。

  1. 普段許していることを許さない
  2. 普段許されていないことを許す

 たとえば、「すごい会議」で許されないことは次の通り。

  • 質問に対して「わかりません」を許さない
  • 時間に遅れてくることを許さない
  • 何の提案もないコメント、批判を許さない
  • 期日が決められない行動、計画を許さない
  • 「検討します」「検証します」「分析します」は許さない(「何のための検討か」をはっきりさせ、それがうまくいったかどうかがわかるメジャーメント(効果測定)を入れる

 一方、許されることは以下。

  • 上司から「これやって」と言われたら、交渉したり、断ることができる
  • 言ってはいけない問題をテーブルに載せることができる
  • 一見、無茶なアイディアでも発表できる
  • 参加者の前で泣きたい時は泣いてもいい
  • やりたくない時は、「やりません」と言える

 それぞれの理由や根拠については本書に譲るが、これらを徹底するからこそ、普通では得られない成果ににじり寄ることができる。

 なお、「すごい会議」の根幹は、質問である。課題や問題をすべて「どのようにすれば〜だろうか?」に変換することで、「できない」と決めつけている心を揺さぶるのだ。これは、何も会議の場でなくとも、一人仕事でも有効なテクニックだ。

BOOK DATA
タイトル: 秘伝すごい会議
著者: 大橋禅太郎・雨宮幸弘 著
出版元: 大和書房刊
価格: 1470円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: どのようにすれば日々の仕事を改善できるかを考え続けている人。

 たとえば、「どのようにすれば、午前中の生産性を20%引き上げて、余裕を持って定時退社できるだろうか?」という質問をつくり、自問自答を繰り返すことで、「到底無理だ」と思っていたことであっても、「こういうふうにするのはどうか?」というアイデアが浮かんでくることが少なくない。

 実は筆者自身も「どのようにすれば〜」という自問自答を日々繰り返している。不思議なことに、この形で質問をされると(あるいは、この形で書かれた質問文を目にすると)、自然とその答えを探り始める。答えは自分の中にあるのだ。

 答えには2つの種類がある。1つは「到底無理だ」に代表されるような「すでに見えている答え」。もう1つは「まだ見えていない答え」。普通の会議が「すでに見えている答え」を確認する場だとすれば、「すごい会議」は「まだ見えていない答え」をお互いに引き出し合う場だといえるだろう。

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