『すごい会議』を皆さんはお読みだろうか。その実践編にあたる本書では、“すごい会議”を導入することで実際にどんな成果が上がるかを語る。
大橋禅太郎・雨宮幸弘『秘伝すごい会議』(大和書房刊)
「5秒で出した答えと30分考えて出した答えでは、何%ぐらいが同じ答えだと思いますか?
チェスには名手を育てる、ある方法があります。どのように育てるかというと、5秒で答えを出す早指しの訓練をします。面白いことに、5秒で出した答えと30分で出した答えは、86%同じでした。
今日は、私は皆さんに短い時間で【何分でお願いします】という形でリクエストしていきます。皆さんは5秒で答えを出すことにチャレンジしてみてください」(p.50)
前作『すごい会議』が理論編なら、本書はその実践編に当たる。しかも、実際に「すごい会議」を導入し、成果を上げたという雨宮幸弘氏が、具体的にどのように変わったかを当事者の視点で語っている。
まず、大橋禅太郎氏による「すごい会議」の手順解説パートがあり、次に雨宮幸弘氏による実況パートが続くというサンドイッチ構成になっている。この実況パートを読むことで、直前で解説された手順がどのように“実践”されるのかを具体的に知ることができる。
また、特徴的なのは「体験」を先にさせた上で、その「意味」を解説するというやり方。これは、本書の中でも次のように説明されている。
本書には、随所に書き込みワークがあるのだが、最初のワークには次のようなヒントが添えられている。
「書く時は、5秒で答えを出して、55秒で書く。30分考えて出した答えと、86%は同じ答えが出ます」(p.17)
おそらく「なぜ86%なのか? 根拠はあるのか?」という疑問が浮かぶだろう。でも、見たところそれについての解説は見つからないので、仕方なくこれに従うことになる。その後しばらく読み進めていくと、その根拠に出くわす。それが冒頭に引用した一節だ。
根拠に出くわすまでの間にきちんとワークをしてきた人であれば、すなわち体験した人であれば、「だから86%なのか!」と腹に落ちるだろう。本を読んでいるところからすでに「すごい会議」の導入が始まっているわけだ。
「すごい会議」の何が「すごい」のかを端的にいえば次の2つに集約できるだろう。
たとえば、「すごい会議」で許されないことは次の通り。
一方、許されることは以下。
それぞれの理由や根拠については本書に譲るが、これらを徹底するからこそ、普通では得られない成果ににじり寄ることができる。
なお、「すごい会議」の根幹は、質問である。課題や問題をすべて「どのようにすれば〜だろうか?」に変換することで、「できない」と決めつけている心を揺さぶるのだ。これは、何も会議の場でなくとも、一人仕事でも有効なテクニックだ。
BOOK DATA | |
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タイトル: | 秘伝すごい会議 |
著者: | 大橋禅太郎・雨宮幸弘 著 |
出版元: | 大和書房刊 |
価格: | 1470円 |
読書環境: | ×書斎でじっくり △カフェでまったり ◎通勤でさらっと |
こんな人にお勧め: | どのようにすれば日々の仕事を改善できるかを考え続けている人。 |
たとえば、「どのようにすれば、午前中の生産性を20%引き上げて、余裕を持って定時退社できるだろうか?」という質問をつくり、自問自答を繰り返すことで、「到底無理だ」と思っていたことであっても、「こういうふうにするのはどうか?」というアイデアが浮かんでくることが少なくない。
実は筆者自身も「どのようにすれば〜」という自問自答を日々繰り返している。不思議なことに、この形で質問をされると(あるいは、この形で書かれた質問文を目にすると)、自然とその答えを探り始める。答えは自分の中にあるのだ。
答えには2つの種類がある。1つは「到底無理だ」に代表されるような「すでに見えている答え」。もう1つは「まだ見えていない答え」。普通の会議が「すでに見えている答え」を確認する場だとすれば、「すごい会議」は「まだ見えていない答え」をお互いに引き出し合う場だといえるだろう。
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