新たな市場で火花を散らす──ケータイ4キャリアの法人戦略、最前線(1/2 ページ)

携帯業界で次なるターゲットとして注目を集めるのが法人市場。法人部隊を率いる4キャリアのキーパーソンが一堂に会し、課題と今後の取り組みを説明した。

» 2007年09月12日 00時23分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo パネルディスカッションのモデレーターを務めたテレコミュニケーション誌の土谷宜弘編集長

 コンシューマー市場が飽和に向かう中、携帯業界が新たな市場として狙うのが法人市場だ。通信速度の高速化、端末の高機能化に加え、個人情報保護法の浸透でPCの持ち出しを制限する流れがあることから、モバイルの本格的な導入を検討する企業が増えている。

 携帯の法人利用はPCに比べて歴史が浅く、ニーズはキャリアが得意としてきたコンシューマー向けのものとは大きく異なる。本格的な普及期に入ろうとする今、各キャリアはどのような課題を抱え、どんな戦略で市場に攻め込もうとしているのか。

 MCPCモバイルソリューションフェア2007のパネルディスカッションに登場したNTTドコモ法人営業本部 第2法人営業部担当部長の武藤肇氏、KDDIモバイルソリューション事業統括本部 モバイルソリューション推進本部本部長の山本泰英氏、ソフトバンクモバイル法人事業統括部 副統括部長兼ビジネスマーケティング本部長の白石美成氏、ウィルコム ソリューション営業本部 副本部長の青木伸大氏の4人が、テレコミュニケーション誌の土谷宜弘編集長をモデレーターに、法人利用の普及に向けた課題と今後の取り組みについて説明した。

基幹業務にモバイルを取り入れる企業が増加

Photo NTTドコモ法人営業本部 第2法人営業部担当部長の武藤肇氏

 「ここ2年くらい、中でもこの半年から1年で、基幹業務にモバイルの仕組みを導入する企業が増えたことを実感している」──。こう話すのは、ドコモの武藤氏だ。企業は端末を出先に持ち出してPCと同じことができるようにするだけでなく、携帯ならではの技術を取り入れた形での導入を望んでいるという。

 法人市場の手応えを感じているのは、KDDIやソフトバンクモバイル、ウィルコムも同様だ。ソフトバンクモバイルの白石氏は「大企業の約9割、中堅企業の約6割が何らかの形で業務に携帯を導入している」という自社の調査結果を挙げ、KDDIの山本氏は、6400万人という数のサラリーマンを抱える法人市場は魅力的で、車載利用とともに注力分野だと説明。データや通話の定額をいち早く導入し、法人分野で強さを発揮しているウィルコムは、最近の傾向として導入時の意志決定が現場に近いところに移った点を挙げ、「どれだけ便利なのか、それでいくら儲かるのか、といった問いに答えられないと導入してもらえない」など、導入効果がシビアに問われるようになってきたと話す。

 「単なるトレンドではなく、必要性がないと入れない厳しい世界」(土谷氏)というのが、今の法人市場というわけだ。

法人利用で求められるのは管理、制限、多様なニーズへの対応

Photo KDDIモバイルソリューション事業統括本部 モバイルソリューション推進本部本部長の山本泰英氏

 企業が本格的にモバイルの導入を進める中、取り組むべき課題が具体的に見えてきたというのが、4キャリア各氏の一致した見方だ。

 法人利用ではモバイルを導入する目的がはっきりしており、そのニーズは多様で要求のレベルも高いとKDDIの山本氏は指摘。“ねばならない”“いっぺんにやる”の2つを満たすとともに、企業が固定網に求めていた品質の高さを、いかに移動網で提供するかが課題だと説明する。

 「企業が利用する場合、“この電話に出させなければならない”“このメールには今返事をしなければならない”という大きな利用シーンがある。また、100人、1000人という規模の企業で、携帯の業務アプリを“明日から動くようにするために、“今日の夕方5時までにいっぺんに変えなければならない”ということもある。端末の利用者だけでなく、情報システムの人にも気持ちよくなっていただくための、すべてを提供するのがとても重要」(山本氏)

 ドコモの武藤氏は、導入後のアフターサービスに加え、導入にあたってどこまでサポートできるかという“プレ”サポートの質も問われると話す。「導入を検討してもらう中で、“ドコモでここまでサポートする”というと、“auはサーバまで用意してくれて……”と言われるケースもある。顧客の要望がもっともな部分もあれば、過度にコストがかかってしまう部分もあり、ここを分析し、きちんと体系化して柔軟に対応できる体制を整えるのが課題」(武藤氏)

 プレのサポートは、「外箱には部署名と名前、携帯電話番号を入れ、端末内にはアプリや電話帳をセットして納品する」(山本氏)というものから、「導入先のExchangeのレベルやサーバのOSなどを聞き、間違いのないよう細心の注意を払ってIT環境調査票を作成する」(白石氏)という作業まで実にさまざまだ。もはやキャリアだけで対応できる範囲を超えており「パートナーと組んで、どんな形でプレとアフターに対応できるのかを考えるべき」(白石氏)「キャリアの独断ではなくパートナーと歩んで行くことが大きな課題の1つ」(山本氏)というのが4氏の一致した考えだ。

 「法人はどんな使い方をしたいかがはっきりしており、それを実現するためなら携帯でもPHSでも、モバイルでも固定でも何でもいい。それを実現しようとすると、だいたいセミオーダー的なカスタマイズが入る。運用や保守も含めて柔軟な対応が求められ、それにいかに対応できるかが重要になる」(武藤氏)

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