人の頼みをうまく断るには?【解決編】シゴトハック研究所

押しの強い人に頼まれて、ついつい仕事を引き受けてしまったことはありませんか? 角を立てずに頼みを断る方法を考えてみましょう。

» 2007年09月07日 10時59分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 人の頼みをうまく断るには?

 コツ:いつでも使える「断る理由」を3つ用意しておく


 前回は、こちらからの頼み事をいかに引き受けてもらうかについて書きましたが、今回は、立場を入れ替えて、引き受けられそうもない頼み事にいかに対処するかという、「お願いされる側のハック」を考えてみます。

 押しの強い人に頼まれると、ついつい仕事を引き受けてしまう人がいます。角が立つのをあまりに恐れるためか、あるいはどうしても気が引けてしまうせいか、理由はどうあれ、結果として自分の仕事を増やしてしまうことになります。本来すべき仕事に差し支えてはいけませんから、何とかうまく断るやり方も身につけておきたいものです。

あらかじめ、何があろうと断ることに決めておく

 人間の記憶力というのは時として非常に弱々しいものであり、「この人の話は断ろう」と思っていても、それを繰り返し頭に刻み込んでおかなければ、ちょっとした心のスキを突かれて、気がついたら引き受けてしまっていた、ということになりかねません。それゆえ、あらかじめ「断る」ことに決めておくという強い意志が必要になるのです。

 そもそも「人の頼みを断る」のが苦手だという人もいるでしょう。でも、苦手であることは「苦手だから仕方がない」という、断れない自分を正当化する言い訳の温床になりがちですから、「何があろうと断ることに決めておく」という「決めごと」にしておくようにすることで、言い訳の発生を抑えるわけです。

 とはいえ、「断る」と決めておくにしても、ただやみくもに「いいえ、いいえ、いいえ」では角が立ちます。そこで、比較的角の立ちにくい「お断りハック」を3つご紹介します。

いつでも使える「断る方法」を3つ用意しておく

 1つめは、「長話」への対応方法。なかなか終わらない長電話などもこれに入ります。

 本題はとっくに終わっているのに、その後にえんえんと雑談が続く場合です。「えぇ、えぇ……」などと相づちを打ちながらつき合っていると、その時間は仕事にならないことに加え、雑談中に相手がふと別の用件を思い出し、やっかいな仕事を押しつけられることもあるでしょう。いくら相手が気持ちよさそうに話していたとしても、こういった「やぶ蛇」のリスクがある限りは、早々に切り上げたいところです。

 そこで、まず覚えておきたいのは、安易に肯定的な相づちを打たないことです。「出火」しても早い段階であれば消し止めるのは難しくありません。

 「ねえ、ねえ、ちょっとちょっと」などと気やすく呼びかけられても、とりあえず「聞こえないふり」をしてみましょう。人は反応のない相手にしゃべり続けるためには、相当のパワーが必要ですから、「聞こえないふり」をするだけでも意外と相手の意欲をくじく上で効き目があるものです。一時的に気を悪くされるかもしれませんが、それは後ほどフォローしておきましょう。

 とはいえ、それが容易にできない、あるいはすでに問いかけのキャッチボールに“参戦”してしまっているのであれば、「あとでこちらから」という方法が役に立ちます。

  • 今ちょっと速攻で返さないといけないメールがあるんで……
  • あ〜でもちょっと気になるなぁ……
  • これが終わったら声かけますんで、そこで続きを聞かせてください!

 などと言いながら、仕事を始めてしまうのです。後回しにしたことにはなりますが、断っているわけではないため、それほど角は立たないでしょう。しかも、そもそも雑談ですから時間をおくことによって相手の「話したい」という意欲も減衰するはずです。それゆえ、手が空いたからといって律義に話の続きを聞きに行かなくてもいいでしょう。その話を本当に聞きたいという場合以外は。

 長電話の対処法も同様です。「今ちょっと急な用事が入ってしまったので、のちほどお掛け直しします」といって電話をいったん切ります。電話の場合は、もしかしたら本当に「のちほど」かけ直す必要があるかもしれませんが、自分でかけた電話であれば、比較的切りやすいはずです。

 2つ目は、「キャッチトーク」(8月24日の記事参照)のように、比較的軽いノリで何かを頼まれたときの対処法です。

 軽いノリで頼んでくる程度の、どちらかというと深刻ではない仕事に対しても、「長話」と同じように対処しましょう。つまり「今とても忙しくて、でも、あとで時間ができましたら……」などとお茶を濁すのです。あとはその仕事に関しては、あくまでも「先延ばし」をし続けます。決して「やらない」わけではないので、角も立ちにくいですし、「断る」わけでもないので気も楽でしょう。

 この場合、頼んだ相手から「そろそろ大丈夫?」などと追及されることもあるかもしれません。これに対して、上司から緊急の仕事を頼まれて手が着けられなかった、といった「もっともらしい理由」を考えておくようにします。顧客から執拗なクレームの電話があった、などのやむを得ない理由でもいいでしょう。

 3つ目は、比較的難しい用事を頼まれた場合。「どっちトーク」(8月24日の記事参照)で何かを頼まれた場合などが、これにあたります。

 このような場合には、「ルアー法」という方法が有効です。いったん引き受けておいて、そこで言い訳を考え、手遅れにならないうちに改めて断るのです。

 たとえば、上司から「今週の日曜日、休日出勤してくれるかな?」などと頼まれたら、とりあえず引き受けます。それから、手帳にダミーの予定を書き込んで、「すみません! ちょっとその日は難しくなりました……。実はその日、病院に行かなければならなくなりまして……」などと言うわけです。

 基本的に人は、よほどの事情がない限り、一度引き受けた頼み事を改めて断るということをしないものですから、この方法を使うことで「よほどの事情があるのだ」と認識してくれるのです。

 以上ご紹介した3つの「お断りハックス」には共通点があります。それは、次の2つです。

  • 「断る理由」を必ず付ける
  • 最終的には頼みを引き受けないのだが、とりあえず同意だけはしておく

 結局のところ人は言い訳に過ぎなくても「理由」には弱いものです。いったん「同意」されたと感じれば、その後に断られたとしても波風は立ちにくいのです。とはいえ、あまりに多用すれば「どうせ後で断ってくるんだろう」という印象を相手に植え付けかねませんから、ここぞという時以外は、控えるようにしましょう。

筆者:大橋悦夫

1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。


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