頼み事をうまく引き受けてもらうには?【解決編】シゴトハック研究所

周りの人たちに頼み事を聞いてもらうためのテクニック、「どっちトーク」と「キャッチトーク」をご紹介しましょう。

» 2007年08月24日 10時24分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 頼み事をうまく引き受けてもらうには?

 コツ:「どっちトーク」と「キャッチトーク」を上手に使い分ける


 チームで仕事をしていれば、何らかの「頼み事」や「お願い事」を聞いてほしい、という状況は少なからず発生するでしょう。しかし、周りにいるのは頼みやすい相手ばかりとは限りません。たとえ話の分かる人であっても、上司に何かを「お願いする」というのは難しく感じられるものです。

 このような「頼み事」にまつわる、ちょっとした煩わしさを解消するシゴトハックを2つご紹介します。

「どっちトーク」(ドア・イン・ザ・フェイス)

 1つめは「どっちトーク」です。心理学では「ドア・イン・ザ・フェイス」と呼ばれる手法ですが、次にご紹介する「フット・イン・ザ・ドア」と名前が似ており、混乱を避けるために、今回は「どっちトーク」と呼ぶことにします。

 「どっちトーク」では、拒絶されそうな要求をまず「頼み事」として呈示します。そして、それを断らせておいてから、本来の要求を出し、これをのんでもらう、というやり方です。

 営業やビジネスの現場でもよく活用される「どっちトーク」ですが、うまく使うにはコツがあります。それは、相手をよく見て使うということです。

 例えば、問題編でカホコさんがマサヨシ課長に頼み事があるような場合、マサヨシ課長が「丸一日有給」と聞いたとたんにキレてしまうような人であるなら、この方法を使うべきではないでしょう。

 また、「どっちトーク」は2つの頼み事を呈示できるだけの時間が必要なので、何か切り出そうとしたとたん、「忙しいから後で!」と時間を作ってくれない人にも使いにくいでしょう。

 さらに、「どっちトーク」は2つの頼み事を比較検討させた上で、頼み事の印象を改めてもらう方法ですから、頼み事をされても何も考えてくれないような人にも有効ではありません。「全休」と「半休」を比較した上で、「半休なら……」ときちんと認識してくれる人には有効ですが、「全休? ダメ!」「半休? ダメ!」という交渉の余地がない相手には効果がないのです。

 以上をまとめると「どっちトーク」は次の点に気をつけるべきだということになります。

  • 頼み事をしても問題のない相手に使う
  • ある程度、時間をかけて頼み事ができる状況で使う
  • 頼んだ仕事に対する認識を改めさせる

「キャッチトーク」(フット・イン・ザ・ドア)

 2つめは「キャッチトーク」。こちらも心理学で登場する概念です。「フット・イン・ザ・ドア」または、「段階的要請法」などといわれます。

 「どっちトーク」と「キャッチトーク」はある意味では、正反対のシゴトハックです。つまり、「どっちトーク」では要請された側に考えさせるのがポイントでしたが、「キャッチトーク」では、考えさせないことがポイントになります。

 「キャッチトーク」の典型例は「客引き」です。「ちょっとだけ、お時間ください」と街ゆく人を呼び止めて、「はい」「はい」「はい」……と要請を受け入れさせ続けます。相手の肯定的な返事をさせ続けることで、最後に本当の要請を引き受けてもらうのです。

 この場合、説得される側は最低でも2度以上、頼み事をのむことになります。「どっちトーク」と同様に、「キャッチトーク」にも使用上のコツはあります。

 まず、大手携帯電話会社のキャンペーンのように、多段階にわたって綿密な準備をしているのでない限り、「キャッチトーク」を使って重要なことは頼みにくいでしょう。

 次に、「キャッチトーク」は始まりの言葉が「ちょっときて」とか「ちょっといいですか?」といった、かなりカジュアルな調子で頼み事を始めることになりますので、ある程度気心の知れた人に対して使用した方が、成功する確率は高くなります。

 さらに、「キャッチトーク」では「どっちトーク」とは逆に、頼み事について深く考えさせないのがミソです。「ついつい」引き受けてしまったというような形に持っていくのが理想的なのです。

 従って、「キャッチトーク」のポイントをまとめると、次のようになります。

  • 気心の知れた相手に使う
  • あまり深刻な頼み事では使わない
  • 頼んだ仕事について考えさせない

 「キャッチトーク」も「どっちトーク」も、頼み事を引き受けてもらうために使う、説得的コミュニケーションといわれるシゴトハックです。これらを知っておくことは、確かに仕事や生活を営む上で便利ですが、頼み事を聞いてもらうという事実には変わりありません。ですから、誠意をもってお願いするということと、感謝の気持ちを示すことは、これら「頼み事」ハックを活用することとは別の次元のこととして、忘れないようにしたいものです。

筆者:大橋悦夫

1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ