対人関係で損をしていませんか?──『チャンスがやってくる15の習慣』5分で読むビジネス書

仕事において、欠くことのできないコミュニケーションスキル──。これを伸ばすにはどうしたらいいだろうか。「相手を立てる」という姿勢を貫くことを、本書は説く。

» 2007年08月20日 16時46分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

レス・ギブリン『チャンスがやってくる15の習慣』(ダイヤモンド社刊)

 相手のことを話題にしている間は、相手のちょうど痒いところをかいてあげているようなものです。人間の本性をうまくついて仕事をしているのです。

 でも、相手のことではなくあなた自身のことを話し始めたら、それは、人間の本性に逆らって仕事を進めようとしていることになります。痒くもないところをかかれてもいい気持ちにはならないでしょう。(p.29)


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 仕事において、欠くことのできないスキルはコミュニケーション能力、あるいは対人関係に関わるスキルである。なぜなら、このスキルの不足は全体のパフォーマンスに影響を与えるからである。例えば、優れたアイデアを持っていても、それを適切な相手に、適切な方法で、適切なタイミングをとらえて伝えられなければ、そのアイデアが日の目を見ることは難しくなるだろう。

 また、資格試験や検定試験などによって明確に数値化できるスキルと異なり、コミュニケーション能力はその実態が捉えにくいため、向上させるための具体的な方法が確立しておらず、従って多くの人が試行錯誤を続けているという現状もあるだろう。

 そんな中、本書からはこのスキルを向上させるためのヒントが得られるはずだ。冒頭に引用した部分は、その要諦に触れる一節である。一言でいえば、「相手を立てる」という姿勢を貫くこと。本書のタイトルには「習慣」という言葉が入っているが、本書流にいうなら、結果として「相手を立てる」ことにならない習慣はすべて自己満足に過ぎない、ということになる。

 とはいえ「相手を立てる」というだけでは漠然とし過ぎていて、具体的にどうしたらよいかが分かりにくい。そこで、本書ではこれを15のプチ習慣に分けて、具体例を交えながら解説している。そして、すべてのプチ習慣が寄り集まったとき、そこに「相手を立てる」という目指すべき習慣が完成する。そういう意味では、本書はコミュニケーション能力というものをベンチマークするための指標を提示していることになる。

 例えば、次のようなプチ習慣がある。

  • 聞き役に徹する
  • 会った瞬間に笑顔を向ける
  • 「ありがとう」と、声に出す

 お勧めしたいのは、毎日その日に実践したいプチ習慣を1つ決めて、その日1日はそのプチ習慣のことしか考えないようにすること。例えば、「会った瞬間に笑顔を向ける」を選んだのなら、「会った瞬間に笑顔を向けているか?」という質問文に変換した上で、この質問を繰り返し自分に問いかけながら1日を過ごす。15個すべてを同時に意識し、実践するのは困難だが、1つだけならさほど難しくはないはずだ。

BOOK DATA
タイトル: チャンスがやってくる15の習慣
著者: レス・ギブリン著
出版元: ダイヤモンド社刊
価格: 1260円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: 仕事に限らず、対人関係全般において課題を抱えている人。

 本書の「訳者の前書き」には次のような一節がある。

 「人間は、何を考えているかではなく、どう行動したかでしか判断してもらえないのです。あなたの印象は、最終的には、あなた自身が決めるのではなく、相手が決めるということを忘れてはいけません」

 意識するプチ習慣を1つに絞ることによって、それが行動に現れやすくなるというメリットが得られるわけだ。

 なお、著者は「人間が口にする言葉の中でも最強のパワーを発揮する言葉」としてある言葉を紹介している。この言葉には、是非本書の文脈の中に身を浸した上で出会って欲しい。

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