30代が読んでみる『16歳の教科書』──勉強する本当の理由とは5分で読むビジネス書

なぜ、学ぶのか──。先日完結したばかりの受験マンガ『ドラゴン桜』の“副読本”『16歳の教科書』が突きつける哲学的な問い。30代が読む『16歳の教科書』で、勉強する本当の理由が分かるのか。

» 2007年07月24日 05時00分 公開
[鷹木創,ITmedia]
表紙

7人の特別講義プロジェクト(著)モーニング編集部(編集)

ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書〜なぜ学び、なにを学ぶのか〜』(講談社刊)

 なぜ、国語を学ぶのか。数学なんか勉強して、なんの役に立つのか。英語なんか翻訳機があればいいじゃないか。物理を知って、なにが変わるというんだ。社会のことなんて、どうでもいいじゃないか。そんな思いはこの特別講義の終了後、すべて吹き飛んでしまうだろう。(p.6)


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 本書は、2007年7月に完結したマンガ『ドラゴン桜』の“副読本”として発売されたものである。マンガ『ドラゴン桜」については、すでにご存知の読者も少なくないだろう。舞台は、平均偏差値36の“落ちこぼれ”が集まる私立龍山高等学校。元暴走族の弁護士である桜木建二が大学進学率2%の龍山高校の建て直しを図るというあらすじだ。興味ある読者はぜひマンガをご覧いただきたいが、桜木をはじめとした教師陣の指導によって、当初は自分が合格するとは思ってもいなかった生徒たちが徐々に勉強に打ち込むようになり、ついには東大合格も現実のものになった──というある種の“サクセスストーリー”でもある。

 今回の書評はあくまで“副読本”に関することなので、マンガについては多くを語らないが、本編のマンガについては基礎的かつ実践的な内容が中心だった。一方の副読本では、国語(金田一秀穂氏)や数学(鍵本聡氏、高濱正信氏)、英語(大西泰斗氏)、理科(竹内薫氏)、社会(藤原和博氏)など各界の著名人らが学習についてのビジョンや心構えを語るといった内容になっている。本編を補完するという意味では、副読本の役割は果たしている──といえる。

BOOK DATA
タイトル: ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書〜なぜ学び、なにを学ぶのか〜
著者: 7人の特別講義プロジェクト(著)/モーニング編集部(編集)
出版元: 講談社
価格: 819円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: 勉強したいのだけど何から手をつけていいか分からない人。これまでの学習に行き詰まりを感じている人。

 実は筆者も高校時代は落ちこぼれだった。学年360人中350番ぐらいをウロウロしていた時期もある。もちろん、期末試験の再テストや補習授業の常連だったことはいうまでもない。そんな筆者だったが、高校3年生のころ、ちょうどそれまでかかりきりだったバレーボール部を引退したころからだろうか、ほかにやることもないので勉強に集中した時期もある。

 それまでの学習癖が皆無だったからか、腰を落ち着かせて受験勉強し出すと、それなりに模試の点数も上がった。点数が上がるとやる気も出てくる。根が単純なこともあり、いわゆる受験勉強が“好き”になっていった。マンガの本編でも紹介されていることだが、実は受験勉強は訓練することによってテストの点数は相当上げられる。だが、本当に大事なことはどうやって点数をあげるかではなく、なぜ勉強するのか──なのではないか。

 もちろん、技術的な受験テクニックは存在する。しかし、実際のところ、受験テクだけで合格したとしても後が続かない。なぜ学ぶのか──を意識したほうが体系的な知識の習得に対して、(大学進学以降も)モチベーションが長続きする。受験には成功したもののモチベーションが長続きせず、大学で遊びまわった筆者が言うのもなんだが。

 日本は「格差社会」になりつつあると言われている。格差社会の是非はおいて置くにせよ、「社会人になったら(なっても/なのに)勉強しない人」「社会人になっても勉強する人」の2種類は必ず存在する。本書はそうした“勉強しない人”にお勧めだ。というのも、“社会人なのに勉強しない”筆者(ちなみに30代)にとっても、本書はモチベーションをあげるためのいいきっかけになったからだ。なかでも7人の講師の1人で、数学を担当する高濱氏による「『できなかったこと』を復習するノート術」はよかった。

 なぜ、勉強するのか──この問いの本質的な答えは「知らなかったことを知るようになる」もしくは「できなかったことができるようになる」なのだが、本書を読んだ筆者もう1つ付け加えたい。面倒くさがらず、「知りたい」「できるようになりたい」の欲求に素直になること。これが勉強することの大きなモチベーションであろう。

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