第1回 思った通り、願った通りの「成功の時期」「成功の時期」と「成長の時期」

人生には、目標を持って集中して取り組んでうまくいく「成功の時期」と、願った通りにはいかないけれど内省を深められる「成長の時期」がある。この周期を自分である程度把握できれば、突っ走り過ぎたり、落ち込み過ぎたりすることを防ぎ、自分のライフスタイルを見極める手がかりになる。

» 2007年07月17日 12時14分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 世の中に出回っている、願望実現や夢達成、目標達成など、いわゆる自己啓発的な本には、大きく2タイプあります。そして、それぞれ正反対のことを言っているんです。正反対だったら、いったいどちらが正しいんだ、と思われるかもしれませんが、私は、この2タイプのどちらが正しいとか正しくないとかいうことはなくて、自分にぴったりくる「時期」があるのではないか、と考えています。つまり、人には「成功の時期」と「成長の時期」があるのです。

 願望実現の方法の1つが、五感や感情を伴ってありありと将来をイメージして、それに向けての具体的なアクションプランを立て、それを踏んでいくと実現するというものです。例えば、「3年後に会社を上場する」と決めたとしましょう。そうしたら、役員たちと上場の鐘を鳴らしている場面をありありと想像します。そのときの喜びを思い描いて社員全員とイメージを共有し、3年後の上場に向けて1年目はこれ、2年目はこれ、3年目はこれと目標を決めて、上場のためにみんなで励ましあって行動しましょう、というようなものです。

 このときよく言われるのが、「目標が大事」「イメージが大事」「行動計画と実行が大事」ということです。どんなことがあっても屈せず、曲げずにがんばりましょうという考え方ですね。途中で状況が悪くなっても、やっぱり上場はやめよう、みたいな話はせずに、何があっても決意を貫き、困難を排して立ち向かおう、と勧められます。そして「成功の時期」にいる人は、これがそのまま実現することが多いです。

成功の時期は目標を立てて、それにフォーカスする

 成功の時期には、1つのことに絞って、それに100%コミットします。例えば、プロジェクトの成功を目指すと、何カ月後にどうなっていたいかをありありとイメージして、それに向けての行動計画を立てて突き進みます。成功する以外の可能性を排除し、そこに意識を向けます。

 裏を返すと、ほかのことはちょっと犠牲にしなくてはいけなくなります。例えば、家庭、家族、食生活といったものが犠牲にされます。そういうとき、妻に対して「オレはこの半年間は仕事に力を入れたいから、ちょっとごめんね」と言ったり、子供に「お父さん、これからはちょっと大変な時期だけど、一段落ついたらまた一緒に遊ぼうね」みたいな感じで、身内や関係者に伝えておくといいんですが、そうできずにズルズルはまってしまう場合もあります。

 また、例えば食生活はカップラーメンが続くかもしれない。この時期だけだ、と自分で決めてやればいいかもしれません。あるいは会社で寝泊りしちゃったりすることもあるでしょう。20代から30代のうちは、何回かはそれくらい没頭して仕事をした方がいいときもあるでしょうね。それがずっと続くと身体を壊すことになるかもしれませんが、自分の限界に挑戦する必要もありますよね。

 中には中学・高校時代に部活でそういう経験をした人もいるかもしれません。もう無理だ、と思ったけれど甲子園のためにがんばったとか、全国大会のためにがんばった、など。自分だけではここまで来られなかったけれど、周囲のみんなのおかげでこんなに能力を発揮できた、というようなことがあったでしょう。あのような体験をビジネスの世界でやる必要もある。全社員がそうしてしまうと、会社はゴムを引っ張りすぎたようになって切れてしまう恐れがあるけれど、ある層だけだったら、そういう時期があってもいいと思いますね。

 ある会社は、社員は入社して10年後には辞めて独立する、というのを最初から想定していて、上司は「お前、独立するんだろ。だったらお客を10人取ってこい。10人取ってこなかったら独立なんて無理だ!」という言い方をする。でも、言われた方も「分かりました!」といって取ってくるらしいです。彼らは「確かにそうだな。今日10人取れないのに、独立なんかしたら1人も客を取れないかもしれない」と思ってがんばる。独立して落ち着いたら、もう少しゆったりした生活にするかもしれないけれど、今はやる時期だと思ってがんばるのですね。こういう時期があってもいい。

 成功の時期には、自分が自分の人生のマスターとして、出来事をコントロールしようとします。ライバルの何かが出現したとしても、そのライバルに対して自分の強みをどうやって発揮して優位に立つかを考え、コントロールしようとします。

 そして、成功の時期には、思った通り、願った通りになります。季節でいうと夏みたいな意識です。いけいけどんどんの時期です。この時期はメッセージを自分で作り出します。「私が」何をしたいのか、「私が」何を手にしたいのか、「私が」どんなプロジェクトにしたいのか、「私が」どんな会社にしたいのか、「ウチは」こんなチームなんだ、というような感じで、自分の内側からメッセージを作り出します。なんのために自分は仕事をしていて、これこれを実現するためにやっているんだ、というのを、すべて自分から発信します。勇ましい、勇士の時期ですね。

 しかし、誰もが常に「成功の時期」にいるわけではありません。次回は「成長の時期」についてお話します。

ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」(こちらからオリジナルCDをプレゼント中)。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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