気になる次世代ブラウザ「Firefox 3」、Mozillaの悩みは?

Mozilla Japanとブロガーとの間でディスカッションした第5回ブログメディア研究会。Firefoxの現状や課題、気になる次世代ブラウザ「Firefox 3」の開発状況について、米国の開発者も交えながらBiz.ID読者ブロガーが議論した。

» 2007年06月29日 21時30分 公開
[田口元,ITmedia]

 第5回ブログメディア研究会では、Mozilla Japanとブロガーとの間でディスカッションした。Firefoxの現状や課題、気になる次世代ブラウザ「Firefox 3」の開発状況について話あった。

 Mozillaからは、米国でFirefox 3のブックマーク機能を中心に開発を担当しているダン・ミルズ氏、Mozilla Japanのマーケティングを担当している金井玄氏が参加。ブロガーは以下の4名を迎えて議論した。

米国でFirefox 3のブックマーク機能を中心に開発を担当しているダン・ミルズ氏
Mozilla Japanのマーケティングを担当している金井玄氏

参加したブロガー(順不同)
ブログ
1 汐留ではたらく学生のアメブロ
2 Latesttopics-outsiderreflex
3 頭ん中
4 静岡ベンチャークロスウェーブ社長日記

Firefoxの現状

 Firefoxのダウンロード数は2006年8月の時点で2億ダウンロードを超えた(関連記事)。Mozillaによれば、欧州でのブラウザシェアでは25%程度。米国では15〜17%、日本では約9%と低迷しているが、一部の国では40%を超えるシェアも見られるという。

 Internet Explorerと比較した場合、Firefoxの最大の特徴はオープンソースで開発されている点だ。外部の技術者を巻き込みながら世界中で開発が進んでいる。その結果、公開されている拡張機能は約2500以上に達し、開発者は約1000人以上にも及ぶ。

 全世界での開発しているため、多言語化にも積極的。主要な言語はほとんどカバーしており、最近では南アフリカの11言語にも対応した。

 ただ、オープンソースの体制ではどうしても意思決定のプロセスに時間がかかる。金井氏も「我々は製品のクオリティは約束している。時間がかかってしまうかもしれないがどうか理解してほしい」とコメントした。

Firefox 3の「Places」ってどんな機能?

 Firefox 3のブックマークと履歴機能は「Places」と呼ばれている。このPlacesを開発している技術者の1人がダン・ミルズさんだ。

 まだ開発中であるため、実際にどのような実装が行われるかは決定していないが、ブックマークの手間を省いたり、ブックマークからのアクセスをより便利にしたりするのがPlacesだという。たとえば、これまでFirefoxでWebサイトをブックマークするには、(1)[Ctrl]+[D]を押し、(2)名前とフォルダを指定、(3)[OK]ボタンを押す――の3アクションが必要だった。デフォルトの値でよければ(2)を省略できるが、それでも2アクションである。

 ミルズ氏によると、Firefox 3ではブックマークがワンクリックで登録できるようになる。具体的に説明すると、ブックマークボタンを押すと自動的に名前が決まり、テンポラリー的なフォルダに登録される。つまり、(2)と(3)が省略されることになるわけだ。

 登録したブックマークは、アドレスバーや検索バーでも活用。従来であれば、アドレスバーに直接URLを打ち込むと、ブラウザの履歴に応じてインクリメンタルにURLの候補が表示された。Firefox 3では、インクリメンタルに表示されるところまでは一緒だが、URL候補のうち、ブックマークされているものを「☆」付きで上位に表示する。これは検索バーでも同じで、Google Suggestのようにある程度検索ワードを入力して表示された検索ワード候補のうち、ブックマークしていたWebページにアクセスできるようなものが☆付きで上位に表示するようになる。

アドレスバーの場合
こちらは検索バーの場合。いずれも開発中のため、実際の画面とは異なる可能性がある

 このほか、ブックマークの管理という側面では、フォルダ管理だけでなくタグによるフラットな管理機能を導入している。

 Places以外の機能では、オンラインのコンテンツをどのアプリケーションやサービスで動かすかなどを管理できる「コンテンツマネジメント機能」も搭載する。たとえばiCal形式のイベント予定をクリックすると、そのデータをOutlookやGoogleカレンダーなどのうち、どのアプリ/サービスで表示させるかを選べるという。

 ダウンロードマネージャも新しくなる。大きな違いは「一時停止」「再開」機能。ダウンロードの途中で操作を一時停止することができるという。1度ダウンロードすると検索機能に登録され、「あのファイルをもう1回ダウンロードしたい」とときに検索できるようになる。

 最後にFirefox 3の大きな改善点であるオフライン機能。グループウェア「Zimbra」を例に、インターネットに接続しなくてもWebアプリケーションを操作できる様子をデモしてもらった。Googleの「Google Gears」チームとも連携して開発を進めているという。

コンテンツマネジメント機能のイメージ

Mozilla Japanも知りたい「Firefoxの勧め方」

 Firefoxの開発体制や開発のポリシーから、具体的な仕様にいたるまで、多くの質問があった。時間の都合上、すべての質問に答えてもらうことはできなかったが、いくつか議論された点について以下に紹介しておく。

 IEユーザーにFirefoxの長所を紹介したい、というのは熱心なFirefoxユーザーにとって切実な問題かもしれない。どう説明したらいいだろうか。

 「『すでに世界中で多くの人が使っている』ということは言えるのではないでしょうか」と答えたのは金井氏だ。「ただ、説明の仕方は我々も悩んでおり、どうしたら友達から友達にFirefoxを勧めてもらえるかを日々議論している」と伸び悩む国内シェアに苦心しているという。「いいアイデアがあれば教えてほしい」とのことなので、この記事のトラックバックやはてなブックマークを通じて伝えてみるといいことがあるかもしれない。もちろん、編集部に連絡してくれてもいいし、Mozillaに直接メールしてみるのもいいだろう。

 ちょっと難しい問題だが、開発者が必要だと思っていることと、ユーザーのニーズが反するケースもある。たとえば拡張機能の開発者にとっては必須の機能が、エンドユーザーにとっては不要だった場合、オープンソースで多くの開発者が参加するMozillaでは、どうやってバランスをとっていくつもりなのだろうか。

 ミルズ氏は「非常に難しい問題だ。シンプルなソリューションはないので、お互いに議論していくしかないと思っている」とコメント。「エンドユーザーにとって使いたいブラウザを作りたいという気持ちがある一方、ボランティアで拡張機能を作ってくれる開発者にも配慮していきたい」という。


 「Firefoxはオープンソース体制で開発している。いいアイデアがあればMozillaのサイトでは誰でもディスカッションに参加できる。興味がある人はぜひアクセスしてもらいたい」。Mozillaの公式サイトに設置されたWikiには世界中からさまざまなアイデアが今も寄せられている。Firefoxの次バージョンに貢献してみたい方はのぞいてみてはいかがだろう。

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