お風呂の中でアイデアを記録する――「ながら学」中級編樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

時間と空間の有効活用を目指す「ながら学」。今回は、体力系との組み合わせを考えた。室内自転車で語学学習、サウナでノートを取る方法、お風呂でアイデアを記録する方法――などである。

» 2007年06月28日 13時33分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 何かをしながら何かする――「ながら学」のコンセプトは、よりよい人生を過ごすために、時間と空間を最大限有効活用しようとするもの。一見セコいかもしれないが、有限の人生において大切な姿勢だ。トイレでの読書や通勤時間の携帯電話など、誰でも何かしら“ながら”をやっているものである。

体力系と語学系の組み合わせを学ぶ

 筆者は今まで、海外でも国内でも、ジムに通って水泳や室内自転車やサウナで時間を過ごすことが多かった。とりわけ室内自転車の乗りながら、外国語を勉強したものだ。駐在する場所に合わせて、ベトナム語、ネパール語と学んできた。体力系と語学系の組み合わせである。

 室内自転車は風景が変わらないから退屈だ。40分間だけでも漕ぐだけだとしんどいし、なんだか空しい気持ちに陥りかねない。語学を勉強しながら、さらに発音しながらだと、この辛さをごまかせる。語学ではなく好きな音楽を聞いても構わないが、その場合はさらに本を読むのもありだ。ベトナムに駐在していた時には、室内自転車のハンドルに木の読書テーブルを取付けた。室内自転車に乗りながら、ベトナム語を学んだり、本を読んだり、音楽を聴いていたのだ。

 “ながら”を懸命に考えたのはサウナである。サウナは入る前はすごく楽しみなのに、入った途端に「熱いなあ。早く出たい」と極めて自分勝手な気持ちになる。これを強制的に楽しい時間にするにはどうしたらいいだろう。湿気が高く、熱いため携帯電話やiPodのような精密機械は難しい。雑誌の切り抜き、破り抜きを持ち込もうとして注意された。本を持ち込めるところもあったが、紙がひどく傷んでしまうのが欠点だ。

 ゲームをすることも考えた。もちろん誰かと将棋やオセロゲームをするのもいいが、通常は1人でサウナに入る。なので、1人でできるゲームとして知恵の輪を導入した。しかし、簡単な知恵の輪は1回でも解くとお終いだし、難しいのは全然解けないからサウナの中で熱中症になる恐れもあった。三角形や正方形、平行四辺形といった7つのパネルをはめ込む「タングラム」も難易の差が大きすぎた。木製の15並べゲームは木がふやけて動かなくなった。

 考えに考えて、「サウナで考えたことを書くこと」に思い至ったのだ。そこで筆者が“発明”したのが「サウナ用ノート」。まず、文具店で売っている画板の角に小さな穴を開ける。そこにタコ糸を通して、湿気の中でもしっかり書けるようにとステッドラーの鉛筆(8B)をぶら下げた。

 サウナに持ち込み、片面10個、両面で20個の思いつきを書きとめることで、自分がサウナから出てもよいと“自主規制”を定めた。サウナは熱い。脳はご都合主義のところがあって、熱くてどうしようもないと、さっさと考えようとしてくれる。汗がたくさん出るに連れ、アイデアもたくさん出て来て、これほど面白いものはない。その後のビールも旨かった。

筆者が“発明”したのが「サウナ用ノート」

 風呂も色々なことを考える場としては最適だ。シャワーを浴びていると気分転換になる。気分転換は発想が出やすい。以前は、子供を呼んで思い付いたことをメモに書かせたが、いつまでもそんな“贅沢”はできない。

 小型のICレコーダを、2枚重ねたジップロック(完全密閉式、冷蔵庫食料保存プラスチックシールバッグ)に入れ、風呂に浮かせてアイデアを録音した。ジップロック中でも立派に音を拾うので風呂時間が生き返った。

こちらは2枚重ねのジップロックにICレコーダを入れたところ

 失敗した“ながら”もある。海外に単身赴任中、寝ながら語学の勉強をしようと小さなスピーカーを枕下に仕込んで何日も流し続けたが、異国の言葉が妄想を膨らませたのか、あまりに怖い夢を見るのでこれは中断した。

 原稿執筆中に体力を付けようとして、小さなペダルマシンを導入したこともある。速度を変えることで負荷を調整できるし、なかなか調子がいい。ただ、執筆中に寝てしまったことがあった。寝た後もそのまま足だけがペダルを漕いで、目を覚ましたら足がだるいほどに疲れていた。居眠りしながら自転車を運転する夢も見るくらいだったが、これもやはり自然ではないなあ。

 記事の終わりに応募スペースを設けた。皆さんも面白い“ながら”があったら、ぜひ教えて欲しい。

“ながら”ケーススタディ
組み合わせ1 組み合わせ2
室内自転車 語学学習
読書
音楽鑑賞
サウナ サウナ用ノート
適度に難しい「知恵の輪」「タングラム」
お風呂 2枚重ねのジップロックにICレコーダを入れて、アイデアを録音する

今回の教訓

眠り“ながら”は難関――。道は深い。


何をしながら、何をする?――面白い“ながら”を教えてください

 連載・樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」では、皆さまからの面白い“ながら”アイデアを募集します。ご応募いただいたアイデアで、優れているものは記事中でご紹介するほか、樋口氏の著作などをプレゼントさせていただきます。奮ってご応募ください。

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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら

 7月6日、宮崎県都城市でアイデアマラソンの講習会(費用2000円)を開催します。詳細は主催の都城まちづくり株式会社(電話:0986-26-7770)まで。


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