オンラインカレンダーがなぜイマイチなのか

「オンラインカレンダーなんて要らない」「そもそも入れる予定がない」。Googleカレンダーをはじめ、各種のオンラインカレンダーが登場しているが、依然として紙の手帳を利用するユーザーも多い。なぜオンラインカレンダーは爆発的に普及しないのか。機能の問題か、それともiCalendar、マイクロフォーマットといった規格の問題か――。

» 2007年06月13日 22時23分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 「オンラインカレンダーなんて要らない」「そもそも入れる予定がない」。Googleカレンダーをはじめ、各種のオンラインカレンダーが登場しているが、実際に活用しているユーザーはどれくらいいるのだろうか。依然として紙の手帳を利用するユーザーも多いのだ。

入力すべき予定がない

 なぜ、オンラインカレンダーが爆発的に流行らないのか――。そもそも「入力すべき予定がない」と笑うのは、イベント特化型のソーシャルブックマークサービス「eventcast」を運営するイベントキャストの市場博昭社長。「屋内でPCに向かって作業する職種では、毎日の仕事が大体決まっているし、週イチ程度のミーティングならわざわざカレンダーに入力しなくても憶えていられる」

 確かに、事務作業が中心の職種であれば、それほど込み入った予定は入らなさそうだ。たとえば、毎日記事を書く記者もあまり仕事は変わらない。取材に行く場合だって、社内共有の予定表を前日にでもチェックすればいいだけだ。

 仕事で入力する予定が少ない、または全くないのであれば「テレビの番組表やヤフオクなどの締切日を入力してはどうだろう」(市場氏)。プライベートの備忘録としての可能性がオンラインカレンダーにはある、という考えだ。カレンダーをスケジュール管理に利用するのは堅苦しい。「情報閲覧ツールとして利用するのもいいのではないか」

イベント特化型のソーシャルブックマークサービス「eventcast

オンラインカレンダーも手帳も、選択肢の1つ

 だが、仕事の予定を入力しておくことが重要になるのは、おそらく数週間から数カ月の比較的長期間に及ぶプロジェクトを抱えていたり、複数の仕事を同時進行的にこなすときだろう(2006年11月の記事参照)。予定を忘れてしまったり、バッティングしたりするのを防ぐには、どうしても予定を管理する必要がある。

 入力する予定があるとしても、オンラインカレンダーには紙の手帳という強力なライバルがいる。スケジュール管理は紙と手帳で十分だ――という意見に「ごもっとも」と納得するのは「loglyカレンダー」を運営するログリーの吉永浩和社長。「万人が同じツールを選べるとは思えない。オンラインカレンダーも手帳もツールである以上、選択肢としていずれを選んでもいい」

 ただ、オンラインカレンダーには手帳にはない利点もある。「スケジュールを電子化するので、グループでの共有が得意だ」という。また、これまで弱点と指摘されていたオフラインでの利用も、Remember The MilkのようにGoogle Gearsと組み合わせれば実現できるようになっている(6月6日の記事参照)。

 なお、“ライフログ”的な位置付けを重視するloglyカレンダーでは入力されたデータの解析作業も進める。もともとログが重要だと感じていたため、サービス名にも「log」を入れた。この解析が進めば、「何時間寝ていると、仕事がはかどる」などとスケジュールとライフログの相関関係も見えてくるという。とはいえ、まずは「スケジュール管理ツールとしての機能が大事。プラスアルファで共有やログ解析などのインターネットならではの長所を育てたい」

 手帳とオンラインカレンダーとの関係に前向きな姿勢を見せるのは、カレンダーソフト「c2talk」を提供するインフォテリアの甲斐淳仁氏。「手帳は最大の競合だけど、同期できたら楽しい。手帳のスキャンデータがたとえ画像であっても便利なのではないか」

 これまでクライアントPCにインストールするタイプのカレンダーソフトとして普及を進めてきたc2talkだが、2007年夏には次期バージョン「c2talk 2.0」を投入する予定。詳細は不明だが、今後は「データの再利用性を向上させるプラットフォームを提供したい」と意気込んだ。

自動入力・データ連携がオンラインカレンダーの本領

 オンラインカレンダー「souseit」(ソユーズ)を運営する(2月7日の記事参照)テンポの吉岡直樹COOは、「手帳はアイデアをメモするノートになるのではないか。オンラインカレンダーとは役割が異なる」と説明する。

 吉岡氏によれば、自動入力の実現こそオンラインカレンダーの生きる道だという。手帳にしろオンラインカレンダーにしろ、入力する手間が面倒くさい。この手間を省くことが普及のポイントだというわけである。最初の段階では、あるイベントを入力するとそれに関連したイベントをリコメンドするような機能を考えている。

 国内オンラインカレンダーで最大のユーザーを抱えるYahoo!JAPANでも、オンラインカレンダーに課題を感じている。「Yahoo!カレンダー」を担当する堀下剛司氏は、「日付情報が付属しているデータは膨大にある。ただし、それらはバラバラの状態。編集・整理しなければ意味がない」という。

 日付情報が付属したデータ自体は、Yahoo!カレンダー以外にもブログやSNSなどYahoo!のサービス内に「圧倒的な量が存在する」という。「時間軸のデータベースを整理し、表示させることが最も重要だ」と考えている。たとえば、「父の日のプレゼント」の記事をブログに掲載するとする。すると、Yahoo!ショッピングの「父の日特集」が表示されたり、Yahoo!カレンダーの6月17日が自動的に強調されたりするよう、“時間”をキーワードに各種サービスをマッシュアップするわけだ。

 こうしてみるとオンラインカレンダーの将来は明るそうだ。だが、不安がないわけではない。現在、事実上の標準形式となっている「iCalendar形式」は規格自体がそれほど新しいわけではなく、「XML化してほしい」などの要望もある。一部で実装が進んでいる「マイクロフォーマット」もまだ普及段階にはない。各社では今後、Outlookなどのメールソフトとの連携も考慮しつつ、オンラインカレンダーの規格も含めて、サービスの向上をお互いに検討するという。

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