第5回 バックアップの取り方を考える“PCで仕事”を速くする

ビジネスパーソンがPCを活用していく中で、欠かせないのがデータのバックアップ。今回はアプリケーションの設定ファイルについてもバックアップする方法を考える。

» 2007年04月03日 16時58分 公開
[斎藤健二,ITmedia]
“PCで仕事”を速くする
  連載タイトル
1 キーボードショートカットを活用するホームポジション
2 キーボードだけでWebブラウジング
3 待ち時間をなくすための軽快アプリケーション
4 カスタマイズなしのPC利用法
5 バックアップの取り方を考える

 PCで仕事を速くする不定期連載の第3回。今回は安心して仕事をするために、どうバックアップを取っていけばいいのかを考える。

 朝起きて、PCを立ち上げたらHDDから異音が……。起動もせず入っていたデータはパァ。こうした筆者のような経験を持つ人がどのくらいいるか分からない。しかし「HDDが壊れて原稿がなくなってしまった」と締め切りを守れなかった理由を説明されることはしばしばあることを考えると(本当にPCが壊れたのが5回に1回だとしても)、しょっちゅうHDDというのは壊れるものなのだろう。

 さて、HDDが壊れるという出来事は、実際に体験した人なら背筋が凍る思い出だろう。少なくとも同じように仕事ができる環境に戻すには、丸一日が必要だ。さらに失ったデータを考えると、取り返しがつかない場合も多い。

 こんなふうに、バックアップの重要性はしばしば語られるのだが、じゃあ、どのファイルをどうやってバックアップしたらいいのか? ということになると、途端に「環境によって違うので──」みたいな話になることが多い。

 筆者も数度、HDDが壊れる経験を経て、データの確実なバックアップ方法を模索してきた。その後も、何度かHDDがクラッシュしているのだが、今では涼しい顔をしてPCにバックアップデータを書き戻して仕事に復帰できるようになっている。その場合に気をつけていることを書いてみよう。

バックアップはHDDに取るのが、今や基本

バッファローのUSB HDD「HD-W500IU2/R1」。500Gバイトモデルで定価3万6000円

 データのバックアップといえば、一昔前はCD-RやDVD-Rを焼くことが多かった。しかし昨今のバックアップデータは、DVD1枚には収まらないほど巨大になってきている。一方で外付けHDDの価格は低下し、例えば500GバイトのUSB接続の製品でも定価3万6000円だ。Gバイト単価で実に70円程度まで下がっている。

 そんなわけで、頻繁に、かつ手軽にバックアップを取ることを考えると、外付けHDDが今や基本だ。

データは一カ所に

 データのバックアップには、専用のソフトを使うのがいい。筆者がお勧めするのは「RealSync」というWindows用のオンラインソフトだ。RealSyncは、更新元と更新先を指定して実行すれば、2つの内容が同じになるようにコピー(同期)してくれる。

 すべてをコピーするのとは違い、変更のあったファイルだけをコピーするため速度もなかなか速い。自動更新も可能で、例えば「5分間隔で自動更新」に設定しておけば、ファイルが新しくなったらすぐにバックアップを取る──なんてこともできる。自動更新中もPCが重くならないように、「優先度」が設定できるのもうれしい。

筆者はネットワークにつないだ別のPCのHDDに定期的にバックアップを取るようにしている

 こうしたソフトでバックアップを取るなら、バックアップしたいファイルは1つのフォルダ内にまとめておくのが基本だ。普通のWindowsユーザーなら「マイ ドキュメント」内に作成したファイルを置いているはず。このフォルダの実体は、Cドライブの「Documents and Settings\ユーザー名\My Documents」にある。このフォルダを丸ごとバックアップすればいいわけだ。

実はこんなところにもデータが

 マイドキュメントをしっかりバックアップしていても、意外なところに保存すべきデータが残っているものだ。

「%appdata%」(カコミ参照)内にあるフォルダ。各社のアプリケーションの設定が眠る宝庫だ

 まずデスクトップ。これは「Documents and Settings\ユーザー名\デスクトップ」にある。デスクトップにファイルを置くクセのある人は注意。

 続いてInternet Explorerのお気に入り。こちらは「Documents and Settings\ユーザー名\お気に入り」にある。

 よく忘れるのがIMEの辞書。よく学習させた辞書はしっかりバックアップして引き継ぎたいもの。ATOKの場合は「Documents and Settings\ユーザー名\Application Data\Justsystem\ATOK※」にある「ATOK※U※.dic」が辞書ファイルだ。MS-IMEの場合は「Documents and Settings\ユーザー名\Application Data\Microsoft\IMJP」以下にある「imjp※u.dic」が辞書になっている。

 さらに忘れがちなのがWordの校正データ。文書校正時に登録した単語もせっかくだから引き継ぎたい。これは「Documents and Settings\ユーザー名\Application Data\Microsoft\UProof」内にある。このファイル自体をバックアップしてもいいが、ファイルをマイドキュメント内にコピーしてしまって、Word側のオプションから「文書校正」−「ユーザー辞書」と進み、参照するファイルをマイドキュメント内のものに変更してしまうのがお勧めだ。

 最近のアプリケーションの多くは、「Documents and Settings\ユーザー名\Application Data\企業名」内に設定ファイルを置いておくことが多いので覚えておきたい。実は、ここを簡単に開く方法がある。スタートメニューから「ファイル名を指定して実行」を選び、「%appdata%」と入力してOKを押すだけだ。


 またFTPソフトやテキストエディタなど、設定に工夫を凝らしたソフトウェアもバックアップしておきたい。ここでのお勧めの方法は、インストール先自体をマイドキュメントにしておくというもの。そして、マイドキュメント内の実行ファイルを直接起動するようにするのだ。

 設定項目をレジストリに保存しているソフトウェアの場合はダメだが、実行ファイルと同じディレクトリに設定ファイルを持っているソフトウェアも多いからだ。ただし、インストールが必要な市販のアプリケーションの場合はうまくいかないこともある。小粒なソフトウェア向けだろう。

 ちなみにアドビのPhotoshopなどの設定データは、「Documents and Settings\ユーザー名\Application Data\Adobe」以下にある。これを丸ごとコピーして、再インストール後に同じフォルダに書き戻そう。

 メールソフトのデータも忘れがちだ。これは各自がチェックしてほしい。筆者はThunderbirdを使っているので、次項で解説する。

FirefoxとThunderbirdの魅力

 筆者は、この1年間にブラウザとメールソフトを乗り換えた。ブラウザはIE系のタブブラウザからFirefoxへ。メールソフトは「秀丸メール」から「Thunderbird」へだ。理由は諸々あるのだが、FirefoxとThunderbirdには気に入っている点もある。バックアップに絡めて紹介したい。

 最もありがたかったのは、両アプリケーションとも設定ファイルが一カ所にまとまっていて、それをコピーするだけでバックアップが完了することだ。HDDに何かあったり、新しいマシンに移行したりというときも、Firefox/Thunderbirdをインストールして、バックアップしておいたフォルダをコピーすれば、元の環境が瞬時に復活する。

 Firefoxの場合、ブックマークや各種設定だけでなく、拡張機能や暗号化して保存されているサイトパスワードもまとめてバックアップされる。Thunderbirdではアカウント設定や拡張機能はもちろん登録されたRSSなども引き継がれる。

 マルチプラットフォームアプリケーションなので、Windowsで使っているFirefoxやThunderbirdの環境も、このフォルダをコピーするだけでMac OSで利用できる。

 そのフォルダとは、Firefoxの場合、「Documents and Settings\ユーザー名\Application Data\Mozilla\Firefox\Profiles」の下にある「※.default」だ。FirefoxのHelpによると、キャッシュをクリアすることでバックアップ容量を減らしたり、フォルダの場所を変更したりする方法も載っている。またフォルダの場所はOSによって異なるので、これもHelpを参照してほしい。

 Thunderbirdのほうは、「Documents and Settings\ユーザー名\Application Data\Thunderbird\Profiles」の下に「※.default」というフォルダがある。またThunderbird側で、「アカウント設定」にある「メッセージの保存先」を変更している場合は、こちらも忘れずにバックアップするようにしよう。

 FirefoxやThunderbirdには、「MozBackup」のように専用のバックアップツールも用意されているので、細かくフォルダをたどりたくない人はこれを利用するのもいい。ただし、複数のバックアップソフトを使わず、1つのソフトで一括して管理するのも使い勝手はいい。

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