席にいなくたって仕事はできる!?――Biz.ID・斎藤健二編集長達人の仕事術(1/2 ページ)

「出社時刻はまちまち」「ミーティングばかりで席にいない」――Biz.IDの斎藤健二編集長は、一見“ダメ上司”のようだが、実態はいかに。

» 2007年02月23日 23時11分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 「斎藤健二」をご存知だろうか。「知っている」という方はITmediaの熱心な読者かもしれない。ITmediaがまだ「ZDNet Japan」と呼ばれていたころ、「ZDNet Mobile」を立ち上げ、携帯電話の動向を追う日本有数のニュースサイトに育て上げた。その後、記事の署名が「斎藤健二,ZDNet/JAPAN」から「斎藤健二,ITmedia」に変わり、2006年6月には国内初となる仕事術を中心としたLifeHack系情報サイトとして本誌「Biz.ID」を立ち上げた。

 今回で17回目の「達人の仕事術」では、ITmediaとともに成長してきた男・斎藤健二編集長にフォーカスを当てる。

Biz.IDの斎藤健二編集長

“データ持ち運び原理主義”ゆえのノートPC使い

 2006年6月27日にBiz.IDがオープンして以来(正確にはオープンする前から)、斎藤編集長が終日席に座って仕事をしていることはほとんどない。取材に同行したり、会議に追われる毎日だ。精力的に記事を書き続けたモバイル担当のころに比べて、現在は管理業務の比率が高くなりつつある。「出社時刻はまちまち」「ミーティングばかりで肝心な時に席にいない」――、一見“ダメ上司”だが、仕事術としてはどうなのだろうか。

 仕事の起点はノートPC「ThinkPad X40」。デスクトップPCではなく、ノートPCだけを使っている点がポイントだ。なぜノートPCなのか――。「あ、あのデータ置いてきちゃった、ということはありませんか。データが会社にあったり、自宅にあったりするのが嫌なんです」。データは常に持ち歩くもの。全部集約して持って歩きたい、というわけだ。

 これまでのノートPC遍歴は、PC-98シリーズのノートPCから始まり、日本オフィス・システムの“チャンドラ”こと「NP-10N」、次いでDynabook SS、Let'snote M1、ThinkPad S30、VAIO SRなどだ。特にチャンドラは開発者の知り合いからオリジナル版をもらったため、「修理するにも開発者に直接渡したりして大変だった」という。

 このようにいくつかのノートPCを渡り歩いてきたが、10年前のデータすらも現在のThinkPad X40の中にあるのは驚きだ。ある種“データ持ち運び原理主義”といえるかもしれない。

ノートPCを駆使。最近は、マルチディスプレイで効率アップを図る

なぜFirefoxなのか

 このデータ持ち運び主義、最近のネットワーク環境の充実で考えが変わってきた。より本質的に、「データへのアクセシビリティを確保できればいい」と考えるようになったのだ。なるほど、そうであれば斎藤編集長がBiz.IDで書いてきた記事もうなずける。例えばGmail(関連記事その1その2)や、オンラインオフィス(関連記事その1その2)など、場所やPCを選ばず利用できるオンラインサービスの活用法である。このほか、Google CalendarやFlickrなども愛用している。

 オンラインサービスを利用するのだから、仕事の中心は当然Webブラウザ。現在、愛用しているのはFirefoxである。実は、タブブラウザは「DonutP」から利用していた。Internet Explorer 7が出たことでタブブラウザが一般的になったが、当時のユーザーはそれほど多くなかったはずだ。利用のきっかけは何だったのだろう。

 実は、これもノートPCが関係してくる。デスクトップPCに比較して液晶ディスプレイが小さいノートPCを駆使するため、「できるだけ画面いっぱいにブラウザを開きたかった」という。とはいえ、斎藤編集長のデスクトップ領域には作業ファイルを置くため、ブラウザウィンドウを画面いっぱいに広げず左側を空けていた。IEでは新しいウィンドウを開こうとすると、左にずれて開いてしまい、せっかく空けておいたスペースが埋まってしまうのである。

 「当時は複数のウインドウを開くのもタブブラウザが早いと感じていました。スタートアップページにたくさん登録していたんです」と懐かしそうに笑う。その後、DonutPからFirefoxに乗り換えた。エクステンションが使いたかったのだ。「こんなにカスタマイズできるなんて、すごくいいブラウザだ」と思った。勢い、数百のエクステンションを試したという。

おすすめのエクステンションBEST3
名前 内容
DrugDropUpload ドラッグ&ドロップでファイルの入力フォームに登録できる
XUL/Migemo ローマ字による日本語インクリメンタルサーチ
Pearl Crescent Page Saver Webページ全体を1枚の画像としてキャプチャ

1時間の単純作業と2時間のマクロ作成ならマクロを取る

 メールソフトも以前はAL-Mail、Becky!、電信八号、秀丸メール(当時鶴亀メール)と使ってきた。会社のメールシステムがIMAP形式になったため、未対応の秀丸メールからThunderbirdに乗り換えた。「Thunderbirdは検索動作が軽くていいですね」。ThunderbirdやFirefoxはWindows以外にもMac OSやUNIXなどにデータの移行ができるのも気に入っている。

 ブラウザもそうだが、できるだけカスタマイズするのが斎藤編集長の仕事術。車やPCなど、ハードのカスタマイズは「すること自体が楽しみ」。一方、ソフトウェアのカスタマイズは「やればやるほど、仕事の効率が向上するのが楽しい」という。例えば、手打ちだったら1時間で完了するかもしれない単純作業があるとして、2時間かけてマクロを組む人は何人ぐらいいるだろうか。斎藤流仕事術は、ここで2時間かけてマクロを組むことだ。

 「単純作業は面白くないですよね。少なくとも同じことを2度はできません。だったら、最初の1回に時間がかかってもマクロを組んでしまって、同じ作業はしないほうを選びます」。せっかくPCという機械を使って仕事するのだから、繰り返す単純な仕事は機械にやらせるべきなのだ。

ソフトバンク入社のきっかけはMac Userだった

 「単純作業はコンピュータにやらせてしまえ」という。コンピュータとの出会いは大学生のころだった。心理学を学んでいた大学の研究室にあったUNIX端末でWebサイト作りにハマった。研究室にあったMacintoshでは、論文作成や統計分析に精を出した。

 当時よく読んでいた雑誌が月刊「Mac User」(ソフトバンク刊)。Mac Userの編集に携わりたくてソフトバンクに入社したが、配属先は「DOS/V magazine」だった。PCゲームやCD-ROMの担当を経て、転機はPentium4が世の中に現れた2001年に訪れた。当時、ソフトバンク社内でオンラインメディアである「ZDNet Japan」(現ITmedia)への社内公募が始まったのだ。この公募にいち早く応募する。

 PC系のオンラインメディアはほかカテゴリのメディアに比べて立ち上がりが早く、1990年代後半には出現していた。「オンラインメディアが伸びる感じがすごく分かりました」。例えば、取材に行っても、速報は全部オンラインメディアに掲載されてしまう。1週間後や1カ月後に情報を掲載する紙の媒体は速報メディアとしての価値を完全に失っていたのだ。

 2000年末にZDNet Japanに移った直後の2001年1月、ケータイを専門に扱うニュースチャンネル「ZDNet Moblile」(現ITmedia Mobile)を立ち上げた。「PCは、OSだとWindows 2000、CPUだとPentium4以降、特に“買い換えたい”と強く思わなくなりました。その点、新機種が出るたびに買い換えたいと思えたのはケータイだったのです」

 2001年といえばケータイ業界にはエポックメイキングな出来事があった。NTTドコモから「503i」シリーズが登場したのだ。このシリーズで初めてJavaを搭載した。「ケータイがPCになった瞬間でした。その後、ケータイはカメラを積んだり、CPUが早くなったりと、PCの後を追うように進化してきたと思います」。ケータイのターニングポイントとZDNet Mobileの立ち上げは絶妙にシンクロ。その後、国内最大級のケータイ専門チャンネルに成長していくのである。

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