今年の一押し──斎藤健二Biz.ID執筆陣が贈る

『複雑な世界、単純な法則』「ユーティリティキー」「Thunderbirdのメール管理」──。

» 2006年12月27日 00時19分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 Biz.ID執筆陣に「今年読んだ本のベスト」「買ったもののベスト」「実践したLifeHackのベスト」を聞く、今回の年末企画。Biz.ID編集部から斎藤がお送りします。皆さんのベストは何だったでしょうか? ぜひメールやトラックバックでお知らせください。

Q1:今年読んだ本の中でベストだったものを挙げ、どんな方にお勧めか教えてください

『複雑な世界、単純な法則』  『デザインの輪郭』 

 今年流行った言葉の1つが「ロングテール」。ネットマーケティングの必須用語のように語られてきましたが、実はけっこう奥が深いんです。

 ロングテールといっしょに考えたいのが、「スモールワールド」と「スケールフリー」という言葉。スモールワールドというのは、“友達を6人たどっていくと世界中の誰にでもたどり着く”とよく説明されるアレです。SNSと絡めてよく登場します。規則正しい構造のネットワークに、ランダムリンクをいくつか足して上げたら、あら不思議。一挙にネットワーク内の距離(ある点からある点にたどり着くのに必要なステップ数)は短くなります。インターネットのサーバも、電力会社の電力ネットワークも、そしてWebサイトのリンク構造も、スモールワールドだといわれています。

 「これから数年のうちにWebの規模は1000%増大すると予想されているが、それでもWebの直径(任意の2サイト間をつなぐ平均クリック数)は19から21に変化するに過ぎない」

 スケールフリーというのは、“べき乗則分布”ともいわれます。例えばWebサイトでいうと、「ヤフー」はものすごい数のサイトとリンクで結ばれていますが、もう少し小さいサイトになると一挙にリンク数が減っていきます。個人サイトとなると、リンクはほんのわずかになります。例えば同書にはインターネットのノードについて、「リンクの数が2倍になるごとに、その数のリンクを持つノード数はほぼ5分の1に減少していった」と記述しています。そしてスケールフリーネットワークの多くはスモールワールドだったりするわけです。

 さらに、この“べき乗則”というのは、まさにロングテールを示すグラフそのものだったりします。

 こんなに身近なインターネットが、どのような構造を持っていて、どんな特徴を持つのか。「ネットワーク科学の最前線」とうたうように科学書ではありますが、数式などは一切登場しません。高見に立ってネットを考えてみたい人にお勧めします。

 ちなみに、スモールワールド研究の祖であるストロガッツの『SYNC』も良書ですので、併せて。

 もう1冊、こちらはデザイン領域から『デザインの輪郭』です。auのケータイデザインや、±0のデザインで有名な深澤直人氏の著書。プロダクトにしてもWebサイトにしても、今やデザインなしには語れないわけですが、「じゃあデザインって何?」と聞かれて、明確な答えを持っている人も少ないのではないでしょうか。

 「デザインとは生き残るのが目的ではない。他を生かして自ら朽ちることをよしとすることも、デザイン上の配慮である」

 「えー、と思わせるような強さをなくすことの方がすごいと思う。わっと驚かせることよりもはるかに強い。それが難しい。だって、みんなふつうを期待していないわけだから」

 軽いエッセイタッチながら、デザインとは何なのか、考えられる1冊です。

 (おまけ こんな記事もありました:『評伝シャア・アズナブル』

Q2:今年買ったものの中で、ベストだったものを挙げて、どんな方にお勧めか教えてください

ユーティリティキー 

 今年はあまりアタリの買い物をしなかったのですが、この「ユーティリティキー(UTILI-KEY)」は佳作です。どこからどう見ても、ただの鍵。キーホルダーにもぶら下げられます。ところが実はドライバーのほかナイフ、栓抜きなど6機能を搭載したアーミーナイフ(?)なのです。

 災害対策の1つとしても、何かあったときに役に立つものの1つがちょっとしたナイフ。シャレで持つのもよろしいかと。アマゾンでは売り切れですが、いろいろなネットショップで扱っています。

Q3:今年実践したLifeHackの中で、ベストだったものを挙げて、どんな方にお勧めか教えてください

Thunderbirdのメール管理 

 今年、実はメールの管理法を大きく変えました。これまで受信したメールをプロジェクトごとのフォルダに分けるという、極めてフツーの方法で整理していたのですが、思い立って、一切フォルダ分けを止めたのです。

8300通のメールから、タイトルや送信者に「原稿」が含まれるメールだけ抜き出して表示した。瞬時にフィルタが完了する

 Thunderbirdには「ラベル」機能があって、フォルダ分けではなくメールに「仕事」「プライベート」「重要」といったラベルを付けられます。このラベルを手動/自動で付けておき1つのフォルダにしまっておく。そして、ラベルをキーにした“検索フォルダ”で、一見フォルダ分けされているような構造、を作ったのです。

 なぜこんなことをしたかというと、Thunderbirdの検索機能を存分に生かすためです。Thunderbirdは、右上にある検索ボックスに単語を打ち込むと、タイトルや送信者名、送信者メールアドレスにその単語が含まれるメールを一覧表示してくれます。しかもこれがものすごい高速動作なのです。8300通のフォルダ内からこうやって検索をかけても、瞬時で絞り込みが終わります。この早さは異次元の感覚です。

 ところがこの検索ボックスは、1つのフォルダ内だけが対象。下手にメールを振り分けるよりも、実体は1つのフォルダに置いておくべきだということに気づいたのです。検索をベースに利用するあたり、使用感はGmailに近いといえるでしょう。しかし間違いなく検索の早さはThunderbirdのほうが上。ディレクトリ構造での管理ではなく、今風な「mSpace」的なメール管理法を考えるなら、お試しの価値ありだと思います。

 ちなみにThunderbird 1.5xではラベルを5つしか使えないのに加え、1つのメールに複数のラベルを割り当てることもできません。Thunderbird 2.0では“タグ”が使えるようになるので(12月14日の記事参照)、そちらも期待です。


 さて、今年6月のオープンからBiz.IDもちょうど6カ月が経ちました。「ライフハック」を中心とした、ビジネスパーソンのための仕事術サイトとして展開してきたわけですが、予想以上にこのジャンルの盛り上がりを感じています。さらに仕事を生活を、ライフハックできるよう──来年もよろしくお願いいたします!

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