第2次ブラウザ大戦、始まるWeb2.0時代のブラウザ論(1/3 ページ)

Firefox 2.0、IE 7と立て続けにリリースされた。国内でもLunascapeやSleipnirなどのWebブラウザがバージョンアップを競っている。インターネットそのもの進化に比べ、停滞していたWebブラウザ。しかしタブブラウザ化やRSS対応などが急激に進む中、「Web2.0のプラットフォーム」としてのブラウザに迫る。

» 2006年11月28日 19時02分 公開
[近藤秀和,ITmedia]

 「Internet ExplorerはWebブラウザである」──。当たり前に思えるこの言葉の定義は、もう過去のものかもしれない」

 ご存知のとおり、インターネットの登場により、我々が手に入れられる情報は飛躍的に増加した。検索可能なWebページはいまや数百億以上、1億以上のWebサイトがネットに存在するといわれている。10年程前には数千万といわれていたので、あっという間に千倍以上に膨れ上がった計算だ。本当に途方もないスピードである。

 そしてそのWebの世界においてここ最近非常に流行している言葉の1つが、ご存知「Web2.0」である。ティム・オライリーが2年ほど前に提唱したこの言葉は、世界中のWebビジネスを大きく震撼させている。昔からWebをよく知っている人は「いまさら何を言っているんだ──」と、単なるマーケティング用語の1つと捉らえる向きも多いが、Webやインターネットの分かりにくかった概念を整理し、ネットオタクでなくても理解できるようにしたという意味で、非常に大きな役割を果たした言葉だと思う。当然Web2.0に関する記事も非常に多い。しかし、Web2.0時代のサービスについては語られることはあっても、Web2.0時代のブラウザに関しては、あまり語られることがない。

 そこでこの連載はで、Web2.0時代のブラウザがどのような方向に進むのかを考察していく。

タブ、RSS――現在に至るブラウザの流れ

 未来を知るためには、過去を知ることが重要である。まずは歴史をひも解いてみる。

 1969年、軍事的攻撃を受けても維持できる通信網の研究から、中央集権的なサーバを持たない通信網「ARPANET」が米国で開発された。インターネットの始まりである。その後、ARPANETを元に1986年に学術研究用ネットワーク基盤「NSFNet」が作られ、1990年〜1991年にかけて、ティム・バーナーズ=リーが「WorldWideWeb」(世界初のブラウザ。後に「Nexus」と呼称)を開発。世界初のWebサイトを作成し、Webが始まった。

 1993年に天才マーク・アンドリーセン(Netscape Communicationsの創立メンバー)が、初めて画像を扱えるブラウザ「Mosaic」を開発した。Mosaicは、それまでテキストしか扱えなかったWebの世界に、初めて画像という表現を持ち込んだ。

 私が初めて利用したブラウザもこの「Mosaic」であった。10年ほど前、まだ日本の大学同士を結んでインターネットだといっていた頃で、当時はWebといっても学術的な情報しか載っていないような世界であった。Webサイトを整理する方法は、ブックマークとリンク集のみだった。

アンドリーセンが開発した「Mozaic」。Biz.IDにアクセスしたところ

 次に、同じくアンドリーセンが中心となって開発したNetscape Navigatorが登場。そしてWindows 95の登場とともに、Webブラウザは急速に普及していった。広告モデルによって無料でインターネットに接続できるISPが登場したこともあり、誰もが手軽に自宅からインターネットにアクセスできるようになった。またブラウザはマルチメディアと融合し始め、画像だけでなく、音声もインターネットを通じて聞けるようになった。ホワイトハウスのページにアクセスして、クリントン大統領(当時)の飼い猫の鳴き声を聞いた覚えがある人も多いだろう。

 ブラウザの普及とともに、Webも拡大を続けた。インターネット上の情報は爆発的に増加し、Web上の情報を把握することは日に日に困難になっていった。そこで「サーファー」と呼ばれる情報整理スタッフを大勢雇い、人力による力ずくでWebの情報を整理したYahoo!が、まずWebの覇権を握った。ディレクトリ型検索エンジンの登場である。当時ロボット型の検索エンジンもすでに登場していたが、当時はその検索精度の低さから、Yahoo!の地位が揺らぐことはなかった。

 Yahoo!によって情報の整理が進むと、ブラウザは情報整理よりも表現力をひたすら磨く方向性に進化していった。Netscape NavigatorとInternet Explorerは激しい戦いを繰り広げ、画像だけではなく、動画もサポートするようになった。JavaScriptなど、今のWeb2.0の基礎となっている技術もその当時にすべて作られた。しかし、それらが花咲く前に、Netscape陣営の敗戦によって“ブラウザ戦争”の幕は閉じられた。それとともに、ブラウザの進化も止まってしまったのだ。

 その間、インターネット上の情報はとどまることを知らずに増大を続けた。ついにはYahoo!のディレクトリ型検索サービスでは不十分な量まで拡大してしまった時、登場したのがGoogleだ。Googleは、話にならないと思われていたロボット型検索エンジンの精度問題を「PageRank」という手法で一気に解決した。PageRankはハイパーリンクをそのページへの投票とみなし、リンクされたページの総数でランキング付けする手法である。当時100億あるといわれたWebページすべてに、分かりやすいランキングをつけたのだ。

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