第1回 会議の何が問題なのか?議事録ドリブンで会議の効率アップ

ほとんどの人が会議が嫌いではないでしょうか。何のための会議か分からない、決まったことが実行されない、そもそも会議時間が長い……。そんな非効率な会議の原因を明らかにするとともに、解決法を探っていきましょう。

» 2006年10月25日 20時31分 公開
[鈴木健,ITmedia]

 長い会議に嫌気がさしたことはないでしょうか。

 問題は会議が長いことだけではなかったはずです。明らかに非効率な会議が、不条理に長く続いていることにイライラしたのではないでしょうか。

 そもそも「何のためにメンバーが集まったのか」が共有されていないまま会議が始まる。いざ議論が始まると、そもそも何についての議論しているのか誰も分からなくなってしまう。それでも会議が続けられ、予定時間を大幅に過ぎたところで結論があいまいなまま会議が打ち切られる。会議中に決まったToDo(やるべきこと)もいつの間にか忘れられ、次の会議でまた同じToDoが発行される。最終的には、会議がなぜうまくいかないのかを話し合う会議すら開かれるようになり、会議ばかりでプロジェクトが一向に進まない……。

 程度の差こそあれ、このような悲惨な会議が、実際に多くの組織で繰り返されているのが現状です。

 しかし、本連載で紹介する方法によって会議を効率化すれば、いままで3時間かかっていた会議が1時間で終わることさえ可能です。「会議は時間の無駄」と参加者に思わせない、テキパキとした効率的な会議がどのようにすればできるのか、その方法は、この連載を読んだあとにきっと分かることでしょう。

社員100名の会社で、会議のコストは年間2億円!

 オフィスワーカーの業務時間の20%〜30%は会議に費やされているといわれていますが*1、これがマネージャクラスになると、60%〜80%に跳ね上がります。マネージャ(中間管理職)の仕事とは、部下との会議、上司との会議、同クラスとの会議、取引先との会議と、会議から会議へと渡り歩いていく生活にほかなりません。

*1 山崎将志『会議の教科書 強い企業の基本の「型」を盗む!』ソフトバンク・クリエイティブ,2006より

 平均賃金700万円程度の社員が100人ほどいる組織では、会議に使われているコストは、会議室代などを含めると年間2億円にも達します。このように、会議に費やされる時間とカネの量はかなりのものです。こうした会議のコストを正確に把握し、コストに見合った付加価値を生み出していくことは、企業にとってまさに死活問題であるといっても過言ではないでしょう。

 それにも関わらず、多くの企業では「会議のゴールを明確にする」というような、ごく基本的なことすらも実践されていないのが実状です。会議の生産性を上げるための基本的なプラクティスを実践しなければ、時間ばかりが過ぎて何も決まらない悲惨な会議が開かれることになるのです。

会議の一般的な問題点

 なぜこのような生産性の低い会議が繰り返されてしまうのでしょうか。実際に多くの会議に見られる一般的な問題を整理してみましょう。

  • 会議が迷走する

 議論をしているうちに、そもそも議題が何であるのかが分からなくなり、やがて関係のない議題が絡まって、自分の話したいことを勝手に話し始めてしまいます。

  • 会議が決まらない

 結論があいまいで参加者の間でコンセンサスができていないために、次回の会議でまた同じ議題が取り上げられたり、認識の齟齬をめぐるトラブルが生じたりします。

  • 会議で決まったことが実行されない

 誰が誰にどのようなToDoを振ったのか、その期限がいつなのか、ということが明確にされないために、ToDoが実行されないままになり、次回の会議で同じようなToDoが再び発行されることになります。

  • 会議が長い

 会議が迷走したり、結論がなかなか出なかったりで、会議は予定時間を大幅に超えてしまいます。集中力がなくなるので、ますます会議の生産性が落ちてしまいます。

 実際の会議では、これら4つの特徴がスパイラル的に悪循環をなし、悪い会議を生み出してしまいます。

 この連載では、悪循環を断ち切り、会議を生産的にしていくプラクティス(実践的な方法)を15個紹介していきます。この15個のプラクティスのうち、一番重要なのが、「会議の議事録ドリブン」というプラクティスです。

 議事録ドリブンでは、会議中に議事録を書いてしまい、会議終了時点では参加者全員の合意がとれた議事録が完成しているという状態を作ってしまいます。次回では、この議事録ドリブンを詳しく説明しましょう。

筆者:鈴木健

国際大学GLOCOM主任研究員、サルガッソー社長。サルガッソーでは、究極の会議を実現するためのツール「Sargasso XM」を開発している。「伝播投資貨幣」という概念の通貨「PICSY」の研究・実装に取り組み、2002年にIPAの未踏ソフトウェア創造事業に採択、同年度の天才プログラマー/スーパークリエータに認定される。共著書に「NAM生成」「進化経済学のフロンティア」


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