「マイ締め切り」で間際のバタバタをなくす【解決編】シゴトハック研究所

誰しもが経験のある、締め切り間際になって追われるように取り組んでいる仕事。この“追われるモード”から脱却し、仕事を“追いかけるモード”にシフトする方法を解説します。

» 2006年10月13日 12時01分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題:余裕を持って大きなタスクに取り組めるようになる


コツ:「マイ締め切り」を設定する

 【問題編】では、締め切り間際になって追われるように取り組んでいる仕事を何とかする──という課題が浮かび上がりました。現状を分析すると、以下のようになります。

  • 締め切り間際まで忘れている
  • 一気に終わらせる必要があるため「気合い」がいる
  • まとまった時間がいる
  • まとまった時間が取れないと窮地に立たされる
  •  → 余裕をもって取り組めるようになりたい

 まず、現状で注目すべきは「一気に終わらせる必要がある」ことです。5分や10分で終えられるような比較的小さなタスクであればさほどプレッシャーにはなりませんが、おおむね30分以上かかる大きなタスクになってくるとプレッシャーが生まれ、「よし、やるか!」という気合いでこれをはねのける必要が出てきます。

 大きなタスクには、プレッシャーに加えて手順の複雑さという要因も絡んできます。小さなタスクであれば特に手順を考えなくても、手を動かせばできてしまうことが多いため、あまり意識されませんが、タスクが大きくなってくると手順が複雑になる──すなわち作業の内容に応じて最適な順序で取り組むための「段取り」が求められるようになるのです。

 このような状況では以下の2つの反応が考えられます。

  1. とにかく勢いで片付ける
  2. 1つ1つ順番に片付ける

 いうまでもなく、1つ1つ順番に片付けるほうがいいといえます。なぜなら、「勢い」で片付けてしまうと再現性が低くなってしまうからです。「よく分からないが、とにかくがんばったら終えることができた」ということでは次回に同じような仕事に取り組む際に再び「勢い」に頼らなければならなくなります。

 一方、順番に片付ける方法では、最終的なゴールに行き着くまでの工程を分割し、小さなタスクの集まりにするという準備をすることになります。分割した小さなタスクには、それぞれ終了条件としてのゴールがあり、これら小さなゴールを1つ1つクリアしていくことで、確実に仕事を進めることができるわけです。

「マイ締め切り」を設定する

 このように、一気に終わらせるには手に余るようなタスクは、小さなゴールに分割することで、作業のプレッシャーを軽減する効果が得られるとともに、どこまで終わったかの進捗が把握できるようになります。

 最終的な締め切りに対して、これら小さなゴールを「マイ締め切り」と呼ぶことにします。最終的なゴールは常に意識しておくべきことではありますが、それがあまりにも遠いと、なかなかピンとこないものです。これは「あぁ、今週中に資料を作らないと……」と思いつつ、気づいたら金曜日になっている、という状況を招く原因の1つとなります。

 マイ締め切りを設定しておけば、「今日すべきことは何か?」という近いゴールを意識できるようになるため、これを毎日確実にクリアしていくことで、最終的な締め切りの前日になっても慌てることがなくなります。

 マイ締め切りには2つの効用があります。1つは「注意の最適化」、もう1つは「追われるモードの打破」です。

注意の最適化

 例えば、「提案資料作成」というタスクがあった場合は、「提案資料を作らなくては……」と思っているだけでは具体的に何をすればいいかが不明確なため、結局何も進まずに時間だけが過ぎていくことになりがちです。

 小さなゴールに分割して、それぞれごとにマイ締め切りを設定することで、例えば「今日は参考資料を読み込むところまで」というようにアクションが明確になります。いい換えれば、そのことにさえ注意していればよくなるわけです。

 「提案資料を作らなくては……」と思っているだけの時は、そこから派生するさまざまな作業が思い浮かぶために注意が分散してしまい、結局どれもこれも手が付けられない、という状況を生んでしまうのです。

追われるモードの打破

 最終的な締め切りは「与えられる」ことが多いものです。必然的に「追われるモード」で仕事をすることになります。そこで、自分で設定したマイ締め切りを日々守っていくようにすれば、自分で自分に締め切りを「与える」ことになり、仕事を「追いかけるモード」にシフトさせることができます。

 さらに、日々のマイ締め切りで区切られたタスクは全体の一部に過ぎないため、「今日はここまでやればいい」という、いってみれば「完了させなくてもいい仕事」になります。

 最終的な締め切りに追われている状況では、仕事は常に「完了させなければならない仕事」であるため、プレッシャーが強くなるものですが、これを防ぐことができるわけです。

 勢いまかせに短時間で筋力トレーニングに取り組んでもあまり効果が得られないのと同じように、仕事も勢いではなく、きちんとインターバルを挟みながらじっくりと取り組むようにすることで、結果として効率をアップさせることにつながるはずです。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。


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