紙を使った発想法平本メソッド アイデアを生み出すための26の方法(2/2 ページ)

» 2006年08月04日 13時36分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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──ペンと紙を使って──

1 紙に書き出す

 GMOインターネット株式会社の熊谷正寿さんにしても、手帳はデジタルではなくて、手書きのものを使ってらっしゃるそうです。一般的に、手で書くときに使われる脳と、キーボードを打つときに使われる脳は違うといわれています。ですから、普段キーボードを打っている人こそ、紙に書くと発想が出やすい、という発見があるかもしれません。

 コピー用紙の裏でもいいので、単純に紙に書き出してみましょう。例えば、自分の好きなものを、今から10秒以内にできるだけたくさん書き出してください。食べ物でも温泉でも旅行でも、なんでもいいです。10秒間で、できるだけたくさん書き出す。詳しく書く必要はありません。

 どうでしょうか? 手で書くと字が大きくなったり小さくなったり、新鮮味があって面白くありませんか? 

 また「付箋」も便利に使えます。1分くらいで同様に、好きなものを1枚に1つずつ書いてみてください。付箋のいいところは、書き出した後、似たようなものを集めてグループ分けできることです。食べ物系/自分に関して/他人に関して、など、大きくグループ分けをしてみてください。そうしたら、グループ同士で関係があるとか全然ないとか、これがベースだったら、それは上だとか、こっちが先にこないとダメだ、というように動かしてほしいのです。付箋を使うと、書き出した項目を動かして関連性を見つけることができます。

 ビジネスで難易度の高い案件だと、「好きなもの」のようにアイデアが次々と出てきにくいかもしれませんが、楽しくポジティブな気持ちになってもらうために、簡単なものでリハーサルをするといいでしょう。みんなで会議の最初の5〜10分ほど、冗談を交えながら書き出して、配置して、ああだこうだと話し合ってウォーミングアップをする。そのあと、「じゃあ、本題の○○のマーケティングに関してアイデアを出しましょう」などと進むと、楽しい気分、ポジティブな気分で取り組むことができます。普段やらないことを試している状態なので、すでに視点が変わり、視野も広がっているはずです。

2 図で表す

 図で表現する方法として、「マインドマップ」という方法があります。マインドマップは、トニー・ブザンが提唱した方法で、表現したい概念の中心となるキーワードやイメージを中央に置き、そこから放射状にキーワードやイメージを繋げていくことで表します。この方法によって、複雑な概念もコンパクトにまとめることができます。また、脳の記憶の構造によく適合しているので、理解や記憶がしやすいともいわれています。

 マインドマップ以外では、自分が属している業界のポジショニングを表す、ということに図を利用することもできます。例えば、自分が液晶テレビを作っている立場だとしましょう。今、家電業界で、プラズマと液晶では、どちらが優勢かを図に表してみる。一進一退という状態で、丸い形で表すと同じ大きさだけど、プラズマの勢いがいいので、やや上に伸びている、などと表現できるかもしれません。抜きつ抜かれつという状態を、クルマで表してもいいですね。ブラウン管テレビはだいぶ離された、あるいは、まだだいぶ後ろで小さくしか見えないけれど、すごく速くなりそうなテレビがある、など。

 こんな風に、図にすると話しやすくなります。ただ、これをプレゼン用の資料だと考えてはいけません。これは、自分の中で位置づけを確認するためのものです。そして、「今、ウチはコレとコレよりは上だ」「まず、コレを超えるように考えよう」「いや、一気にこっちに行こう」というように、考える手助けになります。

3 絵を描く

 位置づけを描く、というような論理的に描く方法とは別に、頭をリラックスさせるのを目的に、非論理的に絵を描く方法もあります。100円ショップにある画用紙とクレヨンを用意して、落書きしましょう。

 ここで大事なのは、うまく描こうとしないこと。また、誰かに見せる目的で描かないこと。自分の気分が楽しくポジティブになって、視点が変わって視野が広がればいいのです。

 描くものが分からない人は、まず1色、クレヨンを選んで、画用紙のどこかにクレヨンを当ててください。そして、それを前後左右に動かしてください。あとは続きをやってください(笑)。違う色にしたかったら時々変えて、あとは楽しく塗っているだけでいいのです。きれいな色を塗ってもいいし、面白い形にしてもいい。見せるためのものではありませんから、正しく描こうとしない。没頭できればいいです。

 色を塗っているときは、何も考えませんよね。つまり、左脳は使わず、右脳しか使っていない。「これ、描いてどうなるの?」といわれても、どうもなりません。しかし右脳は活性化されます。

 「いいアイデアが出ないなあ」と思ったら、クレヨンを取って、5分か10分、塗ってみてください。絶対、アイデアが浮かぶとはいえませんが、脳を活性化させる方法のひとつです。

勝手気ままに絵を描くことで、右脳が活性化される。

 また、絶対に絵にできないはずの抽象語を言い合って、それを10秒以内に絵にする、という方法もあります。ゲーム感覚で楽しみながらやってみましょう。

 “考える”“感覚”“クリエイティブ”“成長”“広がり”“痛み”……などの言葉を言われたら、クレヨン1色を選んで、自分なりにその言葉を形にします。10秒毎にどんどん言葉を言い合って、必ず何かを描いてください。時間をかけて真剣に考えていると、追いつけなくなりますよ。描くのは紙のどこでもいいです。人によって、左から右に順番通りに描く人もいれば、バラバラに描く人もいます。

 言われる言葉はすべて抽象語なので、何時間考えても正しい形なんてありません。言われたら、ぱっと描く。論理的には考えられないはずですから。右脳以外では発想できません。筋道を立てて考えることからはずれて、思考を変えてみましょう。

 ちなみに、言葉によっては、他人と似たような色と形になっている場合があります。マーケティング的に、そういう色や形は汎用性がある、ということになります。

4 ジオグラフィ

 「2、図で表す」と似ていますが、ジオグラフィ(地理)は心理的/物理的位置を表す方法です。

 例えば、自分が今いる職場の人間関係を図で表してみましょう。「ウチは部長が一番上にいて、課長がすぐ下で、私はココで、部下A、B、C、Dがいる。でも、ココに亀裂が入っていて、Y係長と部下Eが結束していて……」というように、心理的な距離も描けます。

 このように環境を絵にすることで、「ココとココがマズイから、もう少しなんとかしたいな」とか、「この課長に、もうちょっとしっかりしてもらわなきゃ」とか、「この遅れているC君をアップしなきゃ」など、心理的/物理的な位置がわかります。

 次回は、“言葉”を口に出すことで発想していく方法をお話しします。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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