「できるだけシンプルに」ガ島通信・藤代裕之さん達人の仕事術

ブログ「ガ島通信」の藤代さんに仕事のコツを伺った。最近はネット以外にも活動の幅を広げる藤代さんの仕事術を紹介しよう。

» 2006年06月27日 00時00分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 ブログ「ガ島通信」を運営する藤代裕之さん(株式会社マイネット・ジャパンのアドバイザー)は、徳島新聞社で記者歴をもつブロガーだ。記者歴を活かした著作業だけでなく、最近では情報ネットワーク法学会の「デジタルジャーナリズム研究会」でリーダーシップを発揮するなど、インターネットとマスコミを繋ぐキーパーソンでもある。

RSSリーダーは崩壊寸前!?

「ガ島通信」の藤代さん

 藤代さんの好奇心は旺盛で新しいサービスはひと通り試す。だが、結局はシンプルな方法に落ち着くという。「Googleデスクトップは使っていますが、Internet Explorerにはツールバーも入れません」。そのGoogleデスクトップもインストール当初はデスクトップ右側に表示させていたが、いまはタスクバーに収納している。「機能を知っておけば気になったときに利用できます。でも、できるだけシンプルに使うほうですよ」

 情報収集にはRSSリーダーも使っているが「崩壊寸前」だ。登録のし過ぎで「フィードのゲップがでる」ほどだという。「自分でRSSリーダーを使うよりも、『はてブニュース』を見てるほうが楽。これまでのインターネットは拡散する方向でしたが、これからは編集感が大事になってくるのではないでしょうか」。例えば有名ブログを“目利き”として利用する。こうした目利きを何人かブックマークして、「自分の情報アンテナをブーストすればいい」というのが“藤代流”情報収集術だ。

 「これからは目利きの時代。いわば有名ブロガーを情報収集のための秘書として使うんです。社長じゃなくても秘書を雇えるようになった。まさに、ドラッカーのいう知識労働者の時代が来たのではないでしょうか。また、ブロガーの情報にただ頷くだけではなく、紹介された書籍を実際に読んだり、ほかのブログと比較してみたりするともっといい」

 検索サイトは目的に応じて使い分ける。「旅行先の観光協会や自治体などの公式なサイトを探す時はYahoo! JAPANを使います。辞書で言葉の意味を調べるときははgoo。ブログの世界の話やちょっとした検索はGoogleを利用していますね」。各検索サイトの特徴に応じて利用するというわけだ。

アウトプットはエレベータトークを目指せ!

 そうして得た情報はアウトプットすることが肝心だ。記者としての職業病から抜け出せないためか、メモの量は多い。すべてのメモを書き込むとすぐに手帳(ほぼ日手帳)を使い切ってしまうため、手帳とは別にメモ帳(ポールスミス・フォー・ロディア)を用意している。

持ち物を見せてもらった。ほぼ日手帳やロディア、携帯電話(N702iD)など、機能だけでなくデザインも重視する

 とはいえ、人に伝えるには大量のメモのままではノイズが多すぎる。藤代さんが理想とするアウトプットは「エレベータトーク」。エレベータに乗っている時間(30秒〜1分程度)で要旨を述べ、相手に理解してもらう――。そのためには、短い時間で必要な情報を確実に伝えなければならない。「生真面目な日本人は情報の取捨選択が苦手で、すべてを伝えようとしてしまいます。優先度が低い情報はバッサリ切ることも重要でしょう。もちろん、取捨選択には幅広い情報収集が不可欠ですが」

 ブログもアウトプットの重要な手段だ。読書好きな藤代さんはガ島通信にしばしば書評を掲載する。書評を書くことでその本を読んだ時点の気持ちが残せる。「本は読んだ時によって得るものが異なります。ブログに掲載するとデジタル化できるから、検索も簡単です」。

 ブログが前述のエレベータトークに役立つこともある。「自分のブログの読者がどのような情報を必要としているかを常に考えていると、伝えたいことが明確になります」。パッシブに情報を受け取るのではなく、もっと積極的に「ウチの読者に伝えたい」――を伝える。読者を上司と言い換えれば、確かにエレベータトークにも役立ちそうだ。

名刺はあいさつメールでデータベース化

 名刺はどのように整理しているのか。いただいた名刺自体は、業種別にざっくりとわけて保管するという。「名刺ケースは使いません。業種別に箱に入れておきます。分別に神経質にはなりませんね」。

 ただし、連絡を取る際には「名刺はほとんど使わないですねぇ」。名刺を交わした相手にあいさつメールを送ることでデータベース化し、メールをGoogleデスクトップで検索して連絡先を探すのだ。後で検索しやすくするためにも、あいさつメール文頭には必ず「○○会社 (役職) ○○さま」というように社名と肩書きを書き添えることを忘れない。あいさつすることで相手に対する礼儀も果たす。メールによるデータベース化は一石二鳥の手法だ。

 メールは「お付き合いのデータベース」という重要な役割を担っているが、コミュニケーションツールとしては「重要度が下がっている」という。1日につき多い日で600件程度のメールに目を通す藤代さんは、「日々のメールが多すぎて大事なメールを見落とすこともないわけではないです」と語る。実際、今回の取材もソーシャルネットワークサービス「mixi」でアポイントを取り付けた。「コミュニケーションツールとしてのメールは、mixiや携帯メールのようなプライベートに近いところしか残らない気もしますよね」。

もっとロジカルに、もっと説得力を

中田英寿やイチローを尊敬するという

 「人は組織に囚われている」というのが藤代さんの考え。「上司にイライラしたり、この会社は歩みが遅いとか思っている人は少なくないと思いますが、実は狭い世界での話ですよね。トヨタだって6万人です。どんな大きな会社だって数万人しかいません。ところが日本という国を考えれば1億人以上いますし、世界中ということであれば60億人もいますから」。

 中田英寿やイチローを尊敬する。「日本の1億人どころか世界中を相手にしている」からだ。「ヒデにしてみても学ぶべきところは多い。公認会計士の勉強をしていたり、自己研鑽に努めている。これまでは組織に適応した社会だったが、これからは1億人がライバル。英語を喋れれば世界中がライバルになる。課長、部長だけが相手じゃなくなる。僕自身も思考を変えなければいけないでしょう」。

 ちょっと意外だったのが、藤代さんに足りない部分は「論理的な思考力」だという。「結構、感情的なんですよ。直感的というか、説明が下手なんですよね。気持ちが焦っちゃって、『藤代が言ってることはなんなんだ』となりがちなんです。社会は応用が多いから、基礎的でロジカルな学問を大事にして多くの人を説得できるようになりたい。若い人の目標になるカッコいいおじさんになりたいですね」と笑った。

プロフィール
名前 藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
経歴 1973年2月1日徳島県生まれ。血液型B型。徳島新聞社記者、徳島大学附属病院医療情報部助手を経て、NTTレゾナントに勤務。株式会社マイネット・ジャパンのアドバイザーも兼務している。
愛用のPC 富士通FMV-BIBLO LOOX
携帯電話 NTTドコモN702iD
デジタルカメラ パナソニックLUMIX-FX9
ブラウザ Internet Explorer 6
収集ツール(RSSリーダーなど) はてな、Googleパーソナライズドホーム
メールソフト Outlook
IM Google Talk
ファイル整理ツール Googleデスクトップ
バックアップツール 特になし
検索サイト Google、Yahoo!、goo
Webメール Gmail、Yahoo!メール
ブログ はてな、TypePad
SNS mixi、GREE
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク
影響を受けた人/本/サイト 深夜特急(沢木耕太郎)、巨魁伝(佐野真一)
座右の銘 半歩前に
手帳/ノート ほぼにち手帳、ポールスミス・フォー・ロディア
ペン 特に気にしていない
その他小物(ICレコーダなど) ソニーのICレコーダー「ICD-S7」

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